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「見たわよー」


 自分の部屋に向かっていると女子寮の廊下で待ち伏せをしていたナタリーがニヤニヤしながらッていた。

 また噂話にされるのかとため息をつきながら私はナタリーに手を振る。


「お疲れ様。大変だったのよ」


 ここ数日の出来事を思い出しただけで頭が痛くなってくる。

 ぐったりしている私の背中をナタリーは叩いた。


「元気出しなさいよ聖女様。聞いたわよ、聖女認定されたんですって?」


「何かの間違いだと思うわ」


 そう思いたいと私が心の中で呟きながら言うとナタリーは笑みを浮かべたまま首を振った。


「アンタは間違いなく聖女よ。みんな見たもの、光が輝いてユリウス様の命を救ったのをね」


「本当に私が光ったの?」


 再度確認をするが、ナタリーは頷く。


「凄かったわ。聖女様っているのね。それがまさかミレイユなんて驚きよね」


「私が一番驚いているわよ」


 ため息をついているとナタリーは私の部屋のドアを開けてくれる。


「まーまー。疲れているでしょう?私がとっておきのお茶とお菓子を用意してあげるから、ゆっくりしなさいよ。珍しいお菓子が手に入ったのよ」


「ありがとう」


 ナタリーはたまにこうしてお茶とお菓子を振舞ってくれるのだ。

 親戚が異国に居るということで珍しいお菓子を分けてくれることも多い。

 

 久しぶりに自分の部屋へと戻りソファーに座ってホッと息をつく。

 あまりにいろいろとありすぎた。


「お疲れねぇ」


 ソファーでくつろいでいる私の前のテーブルにナタリーはお茶とお菓子を置いてくれる。

 紅茶のいい香りがして私はカップを手に取った。

 

「さっきまでマリアンヌ姫様とお話していたの。一応お茶が出たんだけれど一口も飲めなかったから喉がカラカラよ」


 カラカラの喉を癒すように熱い紅茶を一気に飲み干した。

 ナタリーは私の横に座ると呆れたように見つめてくる。


「熱いでしょうに……。火傷していない?」


「熱いけれど喉の渇きに負けたわ」


 熱い紅茶で少しだけ火傷をした舌を出しながら私は眉をひそめた。

 ナタリーは微かに笑って私の背中に手をまわしてくる。


「ミレイユの事はすごく好きよ」


「どうしたの突然?」


 いつものナタリーと様子が違う話し方に私は首を傾げた。


「ミレイユは仕事もとても頑張っていて、性格も会うし大好きよ。これだけは伝えておきたかったの。でも私も仕事でね、これは止められないのよ」


「だから何を言っているの?」


 ナタリーの言っていることの意味が解らず私は眉を顰める。

 しかし、疲労の為か突然疲労と眠気に襲われて大きなあくびが出た。


「眠いのね。ゆっくりお休みなさい。ミレイユの事は本当に好きなの。ごめんなさいね」



 眠気に勝てず、うとうとし始めた私の耳にナタリーの声が聞こえた。


「本当にごめんね、ミレイユ。でも貴方が聖女だからいけないのよ……」







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