④点と点
「それにしても、よくこの集落に入れる事を許したわね」
この集落は王族のみが知る秘匿の地。どのような理由であれ、無闇にこの集落に外部の者を入れてはならない。
フォースィは人の事を言える立場にないと彼女の決断を否定せず、誤魔化しながら、神官服の弛みをベルトで締めた。
「あなたと同じですよ。フォースィ」
プラウが優しく微笑みかける。
「私と同じ?」
「ええ。騎士団の中にデル様がいらっしゃったのです」
プラウが部屋を出ていくと、フォースィは部屋の窓から広場を見落とし、焦げ茶色の頭をした騎士を確認した。
「………確かに」
さらにゲンテの街で別れたバルデックがデルに近付き、何かを報告していた。疲労の表情を見せていた彼らは、家から出てきた彼女から例の薬湯を受け取り、何かを話ながら一息を入れ始める。
騎士達の疲労、そしてデルがこの集落への駐留を決めた事から、フォースィは彼らの目的地である東の集落で何かが起きた事程度は予想できた。加えてバルデックが合流している事から、ゲンテの街の状況が伝わっているだろう。フォースィは窓から離れ、手元の薬湯を全て飲み終えた。
デルはどこまで知っているのか。フォースィの中で魔王軍に関する情報が気にかかっていた。
今まで本の中だけの存在だった魔王軍が現実に存在している。過去の魔王軍とどの程度繋がりのある存在かは知る由もないが、情報を得るに越した事はない。
「話をする必要があるわね」
フォースィはデルと話せる機会を窺う事にした。
―――その夜。
フォースィは、プラウに頼んでデルの部屋に案内してもらった。
「フォースィさん………無事だったのですね!」
彼の部屋に向かう途中、彼女はバルデックと偶然出会う。彼はゲンテの街での助力に感謝の言葉を砂に並べ、さらにデル達先発隊の銀龍騎士団で起きた事も、簡単に説明してくれた。
デル達もまた、魔王軍と名乗る蛮族達の攻撃を受け、壊滅的な被害を被っていた。そして敗走中の所をゲンテの街を脱出してきた騎士達と合流し、今に至るのだという。
やはり、とフォースィは心の中で頷き、平静を装って彼に慰労の言葉を送る。そして再び歩き出し、デルの部屋の前で一旦立ち止まった。




