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Lost19 紅と蒼  作者: JHST
第七章 蛮族急襲
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⑬大魔法

「天光よ!」

 フォースィが魔導杖を高く掲げた。

 彼女の叫びに合わせるように、大地から生まれた朝日のような閃光が杖の先端から放たれる。光は広場を一瞬にして包み込むと、全員の視界を失わせる程に輝きを強めていった。

「死者に永久(とわ)の安らぎを与えん!」

 続いて赤を伴った白い波が同心円状に放たれる。波が不死者達に触れると同時に、彼らは衣服や鎧だけを残して一斉に塵と化し、地面へと落ち、そして消えていく。百を超える不死者は例外なく一体も残さず浄化され、地面を染めた色ですら綺麗に消え去っていった。


「すげぇ………」

 冒険者達が構えていた武器を降ろし、目の前で起きた事を茫然と見つめていた。気が付けば彼らの傷も全て塞がっており、疲労もいつの間にか感じなくなっている。


「くっ!」

 現象が終わると、フォースィは呼吸が止まり、地面に膝をついた。口を開けるも空気が肺に送られず、全身から冷や汗が止まらない。胸を押さえなければ心臓が体から突き破りそうな鼓動と痛みを交互に生み出していた。

「だ、大丈夫ですか!」

 どう見ても普通ではない苦悶な表情に、僧侶の女性が彼女の肩に手を置く。そして手を置いた僧侶は、フォースィの変化に気付き、手を咄嗟に離した。

「どうした?」

 他の冒険者が僧侶の女性に声をかける。

「気のせいか………体が、縮んでいるような」

 そんな馬鹿なと周囲はざわついたが、彼女の服のしわやたるみは違和感となる程に増えており、体を絞めていたベルトが何本か地面へと落ちていた。


「………私は、大丈夫よ」

 ようやく呼吸が再開できたフォースィは、何度も深呼吸を繰り返して心臓の鼓動を静める。これまでにない反動だったが、彼女は震える足でゆっくりと立ち上がった。

 そして魔導杖を斜めに構え、風の塊を放つ。

 冒険者達が一斉に振り向くと、背後に迫っていたビフロンスが空高く吹き飛ばされていた。そして光の膜と化した天井に接触し、激しく全身を感電させる。

「うぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 空から聞こえ落ちる悪魔の断末魔。ビフロンスは全身から焦げ臭い匂いを放ちながら、腐った果実のように地面へと落下した。


「四分耐えて見せたわよ………消えたのはあなた達の方だけどね」

 魔導杖を地面について体を預けるフォースィが、大きく息を吐いて苦痛のまま笑ってみせる。


「こ………これだけの浄化魔法を扱える人間がいるなんて………聞いてないよ」

 悪魔が燻ぶった煙を纏いながら這いずる。

 広範囲に張られた光の結界、そして広範囲の浄化魔法を同時に放つ大魔法。結界内では闇魔法や闇の眷属の力は激しく抑制され、逆に加護、回復魔法や光に関する魔法は増幅される。どちらも最上級の神官ですら扱える人間がいるか分からない程の魔法であった。

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