表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost19 紅と蒼  作者: JHST
とある僧侶の記憶
72/109

孤独の一撃

「隊長! 今、回復を」

「………やめろ」

 震える隊長の腕が、フォースィの魔導杖を掲げようとした腕を掴んだ。

「昨日の戦いで蛮族からかけられた呪いを忘れたのか? そんな状態で魔法を使えば魔力の消費は倍以上だ」

 既に王都から出て何度魔法を使ってきたのかと隊長は彼女の姿を指さした。二十代半ばで出発したフォースィは途中で二度も服を買い直し、今では十代半ばまで体を小さくしている。

 加えて不覚にも先日の戦いで、瀕死の呪術師のゴブリンから呪いの血を浴びた事で、『魔法封じ』をかけられていた。普通の魔法使いならば魔法すら使えないが、彼女の異能により魔法は発動するものの、威力が激減し、かつ魔力消費も増加している。


「………本を頼む」

 隊長はフォースィを突き飛ばした。同時にトロールが隊長の男の胴を握ると再び壁に叩き付け、巨体と壁で挟み込む。

 だがトロールはそのまま動かず、隊長の男よりも先に地面に横たわった。

「へっ、ざまぁみろ………だ」

 隊長の手には予備の剣が抜かれ、剣の柄を壁に当てていた。トロールは自分の突撃が仇となり、彼が構えていた剣に自ら突き刺さりに行ったのである。

 地面に落下した隊長が僅かにフォースィを見ると、そのまま動かなくなった。


 残るは二人のみ。

「このぉ、放っ………せぇ!」

 フォースィは女性の声を聞き、すぐにその方向を向く。

 軽戦士の女性はトロールに頭を掴まれ、それを振りほどこうと緑色の腕を何度も叩いていた。

 だが彼女はそのまま地面に振り下ろされると、とどめとトロールの巨大な足が彼女の顔を踏み潰す。トロールの足からはみ出ていた手足が何度か小刻みに痙攣していたが、やがてそれも動かなくなった。


 残りは一人。

 左目を失ったトロールが息を切らせながらフォースィに近付いてくる。


「………ここで終わる訳にはいかないのよ」

 十代の体では、いや二十代の体であっても、トロール相手に接近戦を挑む訳にはいかない。フォースィは魔導杖の先端をトロールに合わせた。

 呪いが駆けられているかどうかはもはや関係がない。ここで使わなければ待っている未来は確実な『死』である。

 フォースィは呪いの苦痛に耐えながら周囲のクレーテルを集めると、覚悟を決めた一撃を放った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ