③紙芝居
男が語っていた物語は、この窪みが魔王と勇者との戦いで作られたという創作だった。
思わずフォースィの目が細くなる。
その物語は、魔王と勇者が人知を越えた力と魔法で戦う所から始まる。勇者一行は魔王やその配下達のとの戦いで一人、また一人と倒れていく。そして魔王は、空から星を振らせる大魔法を解き放ち、勇者達に止めを刺そうとした。
イリーナも子ども達も、この先どうなるのかと目を輝かせている。
語り部の男が子ども達の表情に満足しながら、興奮気味に語尾を強め、紙をめくる。
勇者は魔王と戦う事よりも生き残った街の人々を助ける事を選び、星が落ちる前に街から避難させる事に成功する。勇者は戦いよりも人々を守る事に使命があると気付かされた。
終わり、と男が紙の束を机に寝かせる。
街は滅んだが、勇者は最後まで負けなかったという語り部の優しさを感じる内容だった。戦う事だけが全てではないというのも、子どもにとって良い影響となるだろう。フォースィは、目を輝かせているイリーナが伸ばしてきた手を見下ろした。
フォースィが顔を上げると、語り部の男の前にはお金を入れる木箱が置かれており、子ども達は銅貨を一枚、また一枚と入れている。
中には銀貨を一枚渡して、本を買っている子どもすらいた。
「お師匠様!」
右手が再び伸ばされる。
イリーナの差し出した手の意味は理解しているが、フォースィは真面目に男の話に興味があった。一般人から見れば、単なる創作話で日銭を稼いでいる類の人間に見えるが、古書と同じく隕石の窪みを魔王の仕業としている辺りに、偶然性で片付けたくない思いが彼女に芽生えていた。
フォースィはイリーナに銅貨を一枚渡すと、自分もまた男のいる所へと足を動かす。そしてイリーナが銅貨を木箱に入れると、男は近付いてくる保護者の姿に気が付いた。




