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Lost19 紅と蒼  作者: JHST
第四章 二つの依頼
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⑧森の中にて

「で、リーバオはどうするの?」

 地図を押さえている弓兵の少女がリーダーに結論を求める。


「このまま東の道を目指そうと思っている」

 即答だった。

「いいのか? 森の中だと蛮族やら追剥ぎが出る可能性も出てくるんじゃねぇか?」

 盗賊の男が念の為と確認を取る。

 リーバオも、それは分かっていると彼の言葉を否定しなかった。

「早く目的地に着くのに越した事はない。それに、森もずっと続いている訳じゃない。あくまで次の街までの間だけだ。抜けてしまえばこちらのものさ」

 蛮族の可能性を理解した上での選択だった。

 フォースィもイリーナも、彼らの会話に一切口を挟まなかった。


「まぁ、どちらが駄目だという理由もないしな。分かった、それで行こう」

 盗賊の男が両手を軽く広げると、二人の少女も異論はないと頷いた。


「フォースィさん、そういう訳で俺達は東に向かいます」

 全員の理解を得られたリーバオは、何も反応を見せないフォースィに報告する。

「特に私から言う事はないわ。一応聞いておくけれど………あなた達は蛮族との戦闘経験はあるのよね?」

「ああ、あるぜ。この依頼を受ける前が、ちょうどゴブリン達の討伐依頼だったからな」

 すぐに盗賊の男が反応し、音を立てて自分の腕に手を乗せた。どうやら圧勝だったらしく、二人の少女もその言葉に強く頷いていた。


「………そう、ならいいわ」

 フォースィは素っ気なく会話を打ち切る。そして荷馬車の幌に背中を預け、鞄の中の古書を開いて自分の時間を過ごし始めた。


 馬車は二本の分かれ道をそのまま直進し、遠くに見える森を目指して車輪を回し続けた。

 そして馬車を進めること数時間。

 フォースィ達はついに森に挟まれた街道の中に入り、やや暗くなった道を進み続ける。


「おいおい、何だよこれは」

 馬車の運転を交代した盗賊の男は、手綱をゆっくりと引いて速度を落とし始めた。

「どうした?」

 馬車の中にいたリーバオが幌から顔を出し、すぐ横にいた盗賊の男に声をかける。

「倒木だ、それに………」

 盗賊の男が倒れた木下に指を向けた。

「あれは………馬車だな」

「あれはもろに上から倒れてきた感じだ。運がないとはいえ、酷いな」

 下敷きになっていた馬車は、幌の上から潰されたらしく、布は切れ、車輪も軸が折れて馬車から外れていた。馬車を引いていた馬は、運よく留め具が外れて逃げたのか、声も姿も見えない。


 リーバオは一旦幌の中に戻り、仲間に事情を説明する。

「もしかしたら馬車の中に誰か巻き込まれているかもしれない。悪いが手伝ってくれ」

「分かったわ」「ええ」

 弓兵と僧侶の少女が表情を切り替えて立ち上がる。

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