①王都ウィンフォス
王都ウィンフォス。
国と同じ名前を持つ街は、巨大な白い城壁に囲まれ、中はアリアスの街の大通りよりも倍の幅はある石畳の道を大勢の人間が行き交っていた。
「お師匠様! 大きい門でしたね!」
「王都名物、西の大正門ね。いつ見ても無駄に大きいのよ」
街に入る為に並ばされる事、三十分。手続きはたったの五分。ようやくフォースィ達は、大正門を見上げながら歩いて通り過ぎる事ができた。これで馬車を持っていたら馬停料も取られ、さらに荷下ろしをする手間が待っていた。
フォースィは王都の直前の街に立ち寄り、馬車を馬ごと売り払っていた。積み荷は必要な物だけイリーナが背負う大きな背嚢に詰め込み、残りは馬車と共に売り払っている。詳細を聞かない代わりを条件にして売り払ったため、街の商人に大分安く買い叩かれたが、それでも王都行きの運賃としては十分に余りが出た。
フォースィ達は王都行きの馬車に乗り、今に至る。
門を抜けた先の広場では、衛兵を務める騎士達によって馬車で来た商人達が、専用の馬停に誘導されていく。また、商人や旅人達のうち初めて訪れた者は地図を頼りに道を探し、既に慣れている者は行きつけの宿を探して、東西を結ぶ大通りを進んでいった。
「お師匠様、これからどうしますか?」
イリーナは人混みに巻き込まれないようにフォースィの赤い裾を掴む。
王国に来た目的はこの街でも名店の一つである『アルトの森と湖』に寄り、二百年前の情報について情報を集める事である。
「予定通り、例の宿に行くわ。もしまだ部屋が空いているのならば、今日はそこに泊まりましょう」
「やったぁぁ!」
イリーナが口を縦に開きながら両手を上げて喜ぶ。
―――アルトの森と湖。
王都の中心、東西南北の大通りが交わる一角にその店はある。
石と赤レンガで組まれた一階は、開けた酒場に隣の冒険者ギルドと部屋が続いている。木造の二階に上がると、初心者でも良心的な値段の宿屋を経営している巨大な建物となっている。
フォースィが扉のないギルド側の入口から足を踏み入れる。
王都の冒険者ギルド、その中は様々な職業の冒険者で溢れかえっていた。依頼が貼られている壁の掲示板を眺め、今日の稼ぎを考えているがたいの良い戦士。これから初めて仕事に向かうのか、若い男女のパーティが机の上で荷物の点検を何度も行っている。




