②義務を果たさぬ者の末路
食事を終えたフォースィは、部屋に戻って荷物をまとめ始める。特に神父からの追加の依頼もなかった為、午前中で情報を集めた後、次の街へ向かう事を決めた。
「お世話になりました」
教会の出口まで見送りをしてくれた神父に、フォースィ達は小さく頭を下げる。
「いえ、こちらこそ本当に助かりました」
神父もまた謙虚な姿のまま一礼すると、先程街長の使いが来たと、フォースィに伝えた。
「先日の話を聞いた街長が、是非、フォースィ殿にお礼を言いたいとの事です。もしかしたらフォースィ殿が調べている事で、何かしらの糸口が見えるかもしれません」
それは助かりますと、フォースィは胸の前で印を切る。
「ありがとうございます。後で必ず寄らせて頂きます」
最後に改めて深く頭を下げ、フォースィは感謝の意を伝えた。イリーナもそれにならって頭を下げる。
フォースィ達が教会を出ると日差しは強いが、まだ空気は冷えたままだった。大通りの商店はまだ殆ど空いておらず、店主やその妻らしき女性が、店前を箒で掃いている。
その前を小さな子ども達が大通りの坂を走っていく。子ども達はすれ違う大人達の挨拶を一つずつ大きな声で返していった。
そしてフォースィの前で子ども達が曲がると、そのまま学校へと吸い込まれるように向かっていく。
「まずは学校に行ってみましょう」
情報が集まる酒場はまだ開いておらず、ギルドの情報も朝戻りの冒険者が入り始めた頃で、昨夜からそれ程情報は更新されていない。フォースィはこの街で一番古いと言われている学校を調べておこうと、足を進めた。
「おはようございます」
二人を追い抜きながら子ども達が挨拶を投げかけてくる。
「イリーナ、挨拶を返してあげなさい」
「えっ」
思わずイリーナは自分を指差した。
今の挨拶は誰が見ても、フォースィに向けられたものだった。
「あなた、まだ『お務め』を済ませていないでしょう?」「ふぁっ!」
全ては筒抜けだった。
境界を利用しておきながら、義務を果たせていないイリーナは師の言葉に反論出来ず、自分達を通り過ぎていく子ども達の挨拶に、手を大きく振って答え続ける。
「お師匠様ぁ、鎧を着たままでは手が疲れます!」
「大丈夫よ。じゃぁ、次は校庭で子ども達と遊んであげなさい」
これも『お務め』だと、フォースィは淡々と言葉を並べながら、校舎の中に入っていく。
「ひぃーん」
フォースィの後ろで取り残され、いつの間にか校庭の中心で子ども達に四方を囲まれたイリーナの声が上空へと昇っていった。




