⑥行く先にあるもの
半日も経たずして、フェルラントの言った事は現実となった。
洞窟から次々と物資や貨幣が詰まった箱が運び出され、広場はさながら物資を含めた財宝の山となっていた。一方で荷物と共に運ばれた怪我人や既に事切れた騎士達を村人や待機していた騎士達が傷病者用の家屋と往復していく。
初めこそ少数で戦いゲンテの街を奪還できた興奮があったが、物言わぬ躯や悲惨な姿で戻って来た仲間を見るや、すぐにその熱は冷めていった。
フォースィは治療や回復魔法を集落の医者や僧侶達に委ね、最後の戦死者が倉庫から運ばれてから中へと入り、地下の洞窟へと向かう。
「それでは、よろしくお願いします」
洞窟では既に松明を持っていたフェルラントと帯同する二名の騎士が馬車とともに待っていた。
「彼の性格を考えれば、反対される事を考えて一人で出発する可能性が高いわ」
「確かに………」
そうなればデルが既に出発している可能性が高くなる。
フォースィは何も積まれていない馬車の荷台に旅支度を済ませた背嚢を放り込み、足をかけて荷台に乗り込む。そして松明代わりに魔導杖の先端に明かりを灯した。
「ま、追いかけるだけ追いかけてみるわ」
お互いに困った人間を知り合いにもったと、彼女が冗談交じりに話すと、フェルラントも『全くです』と笑って答えた。
御者役をかってでた騎士が、手綱を弾く。
いくら広い洞窟といえど足場は平坦ではない。時折車輪が石に当たって上下する馬車の乗り心地は最悪だが、何時間も歩く事を考えれば我慢できる。フォースィは魔力を少しでも回復させる為にも、さっさと寝てしまうことを決めて目を瞑った。
道を進む度に、目的が増えていく。
魔王にさせられた青年。
その魔王に殺された可能性のある母の事。
別れた弟子の事。
そして―――




