⑤新たな依頼
「実はお金になる話があるのですが」
「本当に彼の部下なの? 銀龍騎士団って随分と回りくどいのね」
相手を自分の手の平に乗せるのは好きだが、その逆は御免被る。フォースィはあからさまなフェルラントの言葉にやや不快感を示しつつも、その話を断れない自分に複雑な感情に挟まれる。
フェルラントは『失礼』と再び発し、本題を話し始める。
「冒険者のあなたに、銀龍騎士団から改めて依頼を出したい」
引き受けてくれれば、これまでの協力と今回の依頼の前金をまとめて支払うと持ち出した。
冒険者への依頼としてのお金ならば、何の問題もない。フォースィにその話を断る理由はなかった。
断る言葉も表情もしない彼女を見て、フェルラントが話を続ける。
「あなたにはデル団長の護衛をお願いしたい」
「今更………? あぁ、何か進展があったようね」
知っている事を話しなさいとフォースィが足を組む。
フェルラントはつい先程、洞窟から早馬に乗った騎士が到着し、ゲンテの街を奪還したとの報告があった事を伝えた。そして街に残された物資や資金、戦いで怪我をした騎士達が随時送られてくるのだという。
「デルはゲンテの街を拠点として使うつもりはないようね」
賢明な判断だとフォースィは頷く。
「ええ。少ない人数では街を守り切れないと聞いています」
持ちきれない物資等は全て燃やし、魔王軍に使わせないと動いている。フェルラントは現状を伝えた。
「ならもう安心じゃない。デルもそのうち帰って来るわよ」
だがその言葉に、フェルラントの視線がやや横にずれる。
「実は今からお話しするのは、バルデックからの未確定の情報なのですが………団長は、もしかしたらそのまま王国騎士団の本隊に向かい、自ら事実を知らせに行くのではないかというそうです」
「………行くわよ。あの人は、馬鹿が付くほど真面目なのよ? そんな大事な話、他人に任せる訳ないでしょう」
「やはりそう思いますか」
意見が一致した。
二人はそれぞれの思いで溜め息を吐き、首を下に折る。
つまり、依頼の内容とは騎士団本隊に向かうデルを追いかけ、その護衛をして欲しいという事になる。
「洞窟には既にゲンテから来た馬を用意しています。戦いは無理でも、何とか動ける騎士を数名帯同させますので、まずはゲンテの街に向かってください」
「………分かったわ。その依頼を引き受けましょう」
お金も手に入り、騎士団に貸しが作れ、さらには魔王軍との接点を維持できる。降って湧いた話としては悪くない相談だった。
「よろしくお願いします」
用意周到なフェルラントは前金を含めた報酬だと、腰から貨幣の入った麻袋をテーブルに置く。




