⑤少女は顔に出やすい
フォースィが廊下で待つ家族に、三人の怪我が治った事を伝えると、彼女らはは手を上げて喜び、何度も感謝された。怪我をした男の妻だろうか、彼女は我慢していた涙を流し、それに気付いた子ども達も母親の裾を掴みながら泣き始めた。
「本当にありがとうございます」
待っていた神父も、フォースィに頭を下げる。
「いえ、これも『務め』ですから」
騒がしくなった場所にフォースィはやや居心地が悪くなり、神父達に胸の前で祈りを捧げるとそのまま踵を返して廊下を進んでいく。
そして礼拝堂に戻り、誰もいなくなった所で大きく深呼吸する。
「あ、お師匠様。もう『お務め』は終わったのですか?」
小さな荷物を抱えたイリーナが、師匠の姿を見つけて長椅子から飛び降りて近付いてきた。
「ええ、終わったわ」
「では、次は情報を集めに街へ! ですね」
準備が良いと彼女を褒めても良かったが、フォースィは敢えて口にしなかった。
その理由が余りにも、見え透いていたからである。
「そうね。では先にここで夕飯をとってから向かうとしましょう」
「えっ………」
分かりやすくイリーナの表情が凍る。まるで餌を取り上げられた猫のようだ。
フォースィは小さく微笑むと、彼女の青い兜を掴むように撫でて冗談だと言い直した。
「お師匠様!」
うって変わって太陽のようにイリーナの顔が明るくなる。
実に分かりやすい。
「でも、そこまで考えていたからには、良い場所を聞いているのでしょう?」
「勿論です! 先ほど部屋を案内してくれたお婆さんに教わりました!」
フォースィは自信満々に答えたイリーナの言葉に、今度は別の意味を込めて何も答えなかった。




