NOと言えない女子校生勇気を出す
満員電車でよろめくフリをして私に正面からおじさんが抱きついてきた。
おじさんは息荒くお尻を揉んでくる。
お腹に硬いものが当たる。
「……いいだろぉ?いいだろぉ?」
「ひぃっ!」
どうして私はいつも『嫌』の一言が言えないのだろう?
「え……?硬いのが当たってる……何これぇ」
「いいでしょ?好きでしょ?欲しいでしょ?」
「……やめて」
ズブッ。
ズブブ。
ズブブブ。ヌポポポ。
「入ってる。入ってるよぉ」
「……はぁ。はぁ」
「やめ……て」
勇気を出せ!勇気を出すんだ私!
「嫌」
私は初めてNOと言えた。
持ってきた包丁の刃は全ておじさんの体内に収まった。
おじさんの重さを感じる。
死んだ人間ってこんなに重いんだ。
あんなに気持ち悪いと思っていたおじさんを愛おしく感じた。
私はおじさんを抱きしめた。
次の駅まであと一分。