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かっこいいお姉ちゃんでいたいのに!

作者: 橘スミレ
掲載日:2024/05/17

「お姉ちゃん。約束は守らないとね」


 妹はイタズラが成功した時のような嬉しそうな笑顔で私に近寄ってくる。

 詰め寄ってくる理由はイタズラなんて言えるほど可愛くないけれど。


「私はお姉ちゃんだよ。わかってる? そういうのは彼氏にでもやって貰いなさい」

「彼氏はいないよ。というか要らないよ。私が欲しいのはお姉ちゃんだけだもん」


 ああ。どうしてトランプなんかに自分の姉としての尊厳を賭けてしまったのだろう。


 事の発端は妹の健康診断の結果が返ってきたことだった。


「お姉ちゃん。私、Domだったよ!」


 この世界には男女の他に支配する性のDomと支配される性のSubがある。

 Subは必ず本能的にDomの命令に従ってしまう。

 ついでに言えばDomも本能的にSubへ命令し、従わせたいと思うらしい。

 これは食欲と同程度の本能なので、拒否のしようがない。

 この命令という行為がなければDomもSubも体調を崩す。


 今までは特に気にしていなかった。

 私はSubなので病院で適当なDomに命令を受けて、本能を満たして、それでおしまいだった。

 だが妹がDomとなれば話は変わる。

 うちの家はお世辞にも裕福とは言えないので姉妹で本能を満たせるとなれば親はそれを望だろう。

 何よりも妹がずっと前から私を狙っているのである。


 朝から晩まで私につけて隙があれば抱きついてくる。

 下手すりゃ押し倒そうとしてくる。


 そんな妹がDomだって?

 もし妹に命令されるとなれば姉としての尊厳は崩れ去ってしまう。

 それだけはなんとしてでも防ぎたい。


「ねえ、命令させてよ」


 妹は私の尊厳なんてどうでも良いらしく、今にも命令を下そうとしてくる。


「やだ。なんであんたなんかに命令されなくちゃいけないの? 病院行くから退いてよ」

「良いじゃん。ここにちょうど良いDomがいるのになんで使わないの? お金もったいないよ?」

「妹のあんたにはわかんないよ」


 姉としてのプライドなど、妹にわかるはずもない。


「なるほど。聞きたかったら言わせてみろってことね!」

「全然違う!」


 こういうポジティブ解釈もうっとうしい。

 普段は私より賢いのでわざとだろう。

 ただでさえ、頭の良さで姉らしさを失っているのだ。

 ここはなんとしてでも妹から逃げ切らなければならない。


「お姉ちゃん。ちょっと勝負しない?」

「しない」

「悪い条件じゃないよ。もしお姉ちゃんが勝ったら、私はさっさと適当なクラスメイトを引っ掛けてお姉ちゃんに必要以上からまない。命令もしないし、ねだらない。どう?」


 なかなかおいしい条件だ。

 だがこういう取引はハイリスクハイリターンてやつだ。

 リスクもでかい。

 それを聞かずに乗るのは馬鹿だ。

 過去の勝負で学んだ。


「もしあんたが勝ったら?」

「お姉ちゃん勝てないの?」

「あんたが何を取り逃したか知るためよ」


 危ない危ない。

 前までの私ならここで挑発に乗っていた。

 でもこっちは進化したんだ。

 なめないでもらいたい。


「私が勝ったら、お姉ちゃんは私とパートナーになる。どう?」


 パートナー。それはDomとSubの間で結べる契約のようなものだ。

 Subは契約を結ぶと他のDomからの影響を受けなくなる。

 代わりにDomに捨てられたらかなりボロボロになってしまう。最悪死ぬ。


「乗るわけないでしょ!」

「じゃあ今ここで命令してお姉ちゃんをドロドロにする。その写真を撮ってお姉ちゃんの学校中にばら撒くよ」

「卑怯者!」

「目的のためなら手段を選んでられないよ」


 結局こうだ。

 妹がふっかけてきた勝負から逃げられた試しはない。


 そして、その勝負で勝てた事もない。


「ロイヤルストレートフラッシュ」

「んな訳あるかぁ! イカサマしてるでしょ」

「してないし、証拠もないのに人を疑うのは良くないよ」


 いつも通りボロ負けした。


「さて。お姉ちゃん。約束は守らないとね」


 妹は私に歩み寄ってくる。

 もう私は姉でいられない。

 妹の前ではかっこよくいたかったのにな。


「お姉ちゃん。"Sit"」


 命令が下された。

 私の足からスッと力が抜け落ちて、地面に座り込む。

 そこまではいつもと同じだった。


 だが決定的に違うところがある。

 心が満たされるような快感。

 命令を受けた後に、いつもはない快楽があった。


「ご褒美をあげていないのに、もう気持ちよさそうだね。これが愛し合っている者同士の命令の結果だよ。もう戻れないね? お姉ちゃん。"Good girl"だね」


 ご褒美によって、また満たされるような快感が生まれた。

 もう、かっこいいお姉ちゃんには戻れない。

 私は妹に服従する、ただのだらしない姉になってしまった。


「もう足に力入らないね。気持ちよくてびっくりしちゃったんだよね。私がべッドに運んであげるよ」


 妹にお姫様抱っこで部屋まで連れて行かれる。

 ああ。食べられちゃうな。

 でも、妹に運ばれるようなだらしない姉は食べられちゃっても仕方ないか。


「そうだ。お姉ちゃん。なんで私に従いたくないかの? "Say"だよ。言ってごらん」


 命令されてふわふわした頭で答える。


「だって、その……、かっこいいお姉ちゃん、でいたかった、から……」


 答えると妹は吹き出したように笑った。


「なんだ。そんなことか。お姉ちゃん、そんなことを気にしてたんだ」


 妹からしたら、この尊厳なんてちっぽけなものなんだろうな。

 可愛い妹の前でかっこよくいたい姉の気持ちなんてわからないだろうな。


「私からしたら、お姉ちゃんはいつも頑張っててかっこいいよ。かっこよくて可愛いお姉ちゃんだよ。そこが大好きなんだよ」


 そんなことを言われたら、逆らう理由がなくなっちゃう。

 もう、ダメだな。


「ちゃんと言えてえらいね。"Good girl"だよ。」

お読みいただきありがとうございます。

評価・感想等いただけると嬉しいです。


本作品は「カクヨム」にも投稿しています。

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