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第5話 謝礼

エルナトを撃破した翌日、ウトとウラノスは移動するために町の近くにある移動用馬車の乗車場へとやってきていた。今まで住んでいた家は元々ウラノスの魔法によって作成したものであり、再びウラノスの魔法によって解体され、家があった場所は何もなかったかのように元通りとなっていた。


 乗車場まではあまり距離がないため、2人は出発してすぐにたどり着くことができた。ウトはセイカ王国国王によって捜索命令が出ていることもあり、フードを深くかぶって顔を隠した状態で待機していた。


 (頼むからばれないでくれー)

 見つかると面倒なことになるのは分かりきっていたため、ウトは誰にも見つからないことを願っていた。だが、こういう時に限って願いというものはかなわないのである。


 「あの、少しいいですか?」ウトは最初、自分が声を掛けられていることに気が付かなかった。

 「すみません、フードの方?」声をかけてきた女性はウトの顔を覗き込みながら言う。

 「あ、俺ですか?なんでしょう?」少し嫌な予感がしつつ、無視するのも気が引けるのでウトは小さな声で返事をする。

 「もしかして、私たちを助けてくださった方々ですか?」女性は確信を持ちつつもウトに尋ねるように言う。


 そう尋ねられ、ウトは声をかけてきた女性の顔を見た。するとそこにいたのは地下牢でともにとらわれていた果樹園の夫婦だった。

 「あなた方は地下牢の。」ウトは思い出し尋ねる。

 「はい、先日は助けていただいてありがとうございました。それで、少しお礼がしたくて。」

 「いや、俺は別に大したことをしたわけではないので。それに今はあまり時間がないので、気持ちだけ受け取っておきま」

 「いえいえ、それでは私たちの気が済みませんし、お二人は馬車を待っているんですよね?それなら好都合です!」

 ウトはウラノスと目を合わせ、夫婦に背中を向ける。

 「師匠、どうしますか?」

 「そうだな、もしかしたら何かいいお礼をしてもらえるのかもしれないが、時間を取られる可能性もある。まあ、ウトに任せるよ。」

 「そうですね・・・。」


 (どうしよう、この国の近くに長くいると見つかる可能性も高くなる。まあこの夫婦にはすでに見つかっているから彼らが国に何か言った時点で見つかるのは時間の問題か。それなら口封じのためにも少し探りを入れておくのもありか。もしかしたら本当にお礼だけかもしれないし。)


 ウトは夫婦の方を向きなおす。

 「そうですね。それでは少し甘えさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 「本当ですか!?ありがとうございます。なるべく手短に終わらせますので。ではこちらへ。」

 夫婦はウトとウラノスを森の奥へと誘導した。


 10分ほど歩いてたどり着いたのは一軒の家。森の中にこんな家があることは2人とも知らなかった。夫婦は2人を家の中へと誘導し、2人は素直に従って家に入った。


 どうやらこの家は夫婦の別荘らしく、中は綺麗に整理されていた。


 「突然声をかけてごめんなさい。それでもあそこで声を掛けないと会うことができるタイミングはなかなかないと思いまして。」

 「まあ確かにそうですね。」

 「改めて、地下牢では助けていただきまして本当にありがとうございました。あの後偽の国王を倒して今では国の英雄になったようですね。」

 「なりたくもないものになるのはストレスになるだけですよ。」ウトは少し嫌味を含んで言う。

 「まあそれもそうですね。それでは早速お礼をさせていただきたいのですが、お二人のお名前を教えていただけますか?」

 「俺はウト、この人は師匠でウラノスといいます。」

 「ウト様とウラノス様ですね。少々お待ちください。」

 そう言うと女性は男性に指示を出す。奥に入っていった男性は何やら黒色のバッジものようなものを手に持ち戻っていた。


 「これを受取ってください。」男性は2人に持ってきたバッジを手渡す。

 「これは何ですか?」ウトはバッジを隅々まで眺めながら尋ねる。

 「これは私たちが経営しているミライ商会の名誉会員バッジでございます。自分でいうのも恥ずかしいですが、このバッジを見せればこの世界で買うことができないものはないです。さらに、どこの国にも入ることができるようになるほど信頼性のあるものです。この国で名誉バッジを持っているのはお二人以外では賢者エンキ様のみとなっております。」

 「エンキが持っているのか。それは信頼できるな。あいつは疑い深いやつだからこそ信頼できる。」

 「ありがとうございます。」ウトも礼を言う。

 「例には及びません。我々は命を救っていただいたのですから。どうぞご自由にご利用ください。」

 「最初は疑っていまって申し訳ありませんでした。このような貴重なものをいただけるなんて。大切にします。」

 「そうしていただけますと幸いです。」

 「それでは、そろそろ馬車の時間ですので。また会う機会があれば」

 「ちょっと待ってください!」家を出ようとしたウトの前に、女性が立ちふさがる。

 「な、なんですか?」

 「そうお急ぎにならず、ぜひ使っていただきたいものがあるのです。」そう言って女性はあるものをウトに渡す。

 「それは転移石と呼ばれています。私たちの商会に所属している魔法師が使用したところ、使用者が触れているものすべてがスイメイ王国の森に転移しました。魔力を込めるだけで転移できるようです。また、すでに転移先には我々の施設を設立してありますのでそこから歩いていただきますとすぐにスイメイ王国に行けます。これもお礼ですので是非ウト様がご利用ください。」

 「こんな貴重なもの、ありがとうございます。」

 「いえいえ、気にしないでください。それに転移石はあと4つあるといわれています。おそらくそれぞれが各王国に転移できるようになっているでしょう。興味があればぜひお探しになってはいかがでしょうか?」

 「そうですね、時間があればぜひ。」


 ウトとウラノスは転移石を使うために外へ移動する。

 「改めてこの度は命を救っていただきましてありがとうございました。」

 「こちらこそ貴重なものを色々といただきありがとうございます。また会う機会があればその時はご一緒にご飯でも食べましょう!」

 ウトはそう言って転移石に魔力を込めた。


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 魔力を込めた途端、ウトの目の前は真っ白になった。しかし、次の瞬間ウトはもう建物の中にいた。きれいに整備された建物の中には人が1人もいなかったため、何も疑われることなく転移を行うことができた。これもあの夫婦の気遣いなのだろうか。彼らとの関係は大切にしていこうとウトは心に誓った。


 施設を出ると、そこは小高い丘の上だった。森の中ということもあり、周りには沢山の木があったがスイメイ王国は分かりやすい場所にあった。ウトはスイメイに向かうまでの道でウラノスと転移石の話をした。


 「師匠、これ便利ですね。」

 「転移石は久しぶりに使用したな。」

 「使ったことがあるんですか?」

 「ああ、確か1つエンキが持っていて移動に同行した際、あいつが使った。」

 「賢者エンキ様ですか。1度会ってみたいですね。」

 「あいつは神出鬼没だからな、たまたま会えることを願うしかない。」

 「そうですね。ちなみに師匠とエンキ様はどちらのほうが強いのですか?」

 「まあ、同じくらいかな?」

 「そうですか、ぜひ戦ってみたいですね。」


 そんなたわいもない話をしているとあっという間にスイメイ王国の城門が見えてきた。

門の前では、兵士が入国検査を行っている。


 「お前たちの身分を証明するものはあるか?」

 ウトとウラノスは先ほど夫婦からもらったバッジを兵士に見せる。ウラノスは賢者の証を見せることで基本的にどこの国にも入ることができるが、今回はバッジの効力を見るためにあえて証を使用しなかった。


 「これは!失礼いたしました。まさかミライ商会の名会員様に来ていただけるとは。さあお通り下さい。」

 誘導されて2人は城下町に入った。


 「すごいですねこのバッジ。」

 「ああ、効力は本物のようだな。」

 「あの夫婦に感謝ですね。」

 2人は一旦拠点となる宿を探して宿泊した。


-----------------------------------


 「今日もまた1人、明日も1人。地道に増やしていくことで気付いた時にはもうこの国は終わりだ。誰にも邪魔はさせない。エルナトはしくじったが私は慎重だからな。」

 夜道に声が響く。

 「---を相手にしたとき、---はどのような選択を取るのか。今から楽しみだ。」

ありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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