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国民的バンドのボーカルの素顔がバレたのは一つ電話からだった

勢いで書いた作品です。


「え………?

 ね、ねえ、もう一回言って?」

 鈴白(すずしろ) 寧々(ねね)は顔を真っ青にして、携帯に―――正しくは、携帯で電話をしている相手にそう言う。


『……ごめん。もう付き合えない。

 別れよう、俺たち。』

 電話相手―――寧々の彼氏……いや、()彼氏、岩倉(いわくら) 双治(そうじ)は、寧々にそう告げた。


「え? え? なんで?」

『なんでも、なにも、ないだろ。』

 静かな怒りを宿した声で、双治は続ける。


『寧々―――いや、鈴白さんが、浮気をしているからだろう。』

「う、浮気?」

 小刻みに震える唇で、寧々はそう繰り返す。


(そんな! 私、そんなコト、したことないのに! それに、それに、鈴白さんって、名字で……。)

 寧々は、浮気をしている、と言われたことよりも、「鈴白さん」と呼ばれてしまったことにショックを受けていた。


『そうだ。浮気だ。

 鈴白さんが、その日は用事があるって言ってデートを断った日―――ちょうど一週間前の水曜日。

 その日、鈴白さんが見たことのない男の人と一緒に車に乗ってたっていうことは、聞いてるんだよ!』


 ちょうど一週間前の水曜日。

 確かに、その日、用事があると言って寧々は双治からのデートのお誘いを断っていた。

 だが、その日は本当に用事があって、行けなかったのだ。


(確かに、その日、()()()()と一緒に帰ったけど! 何なら送ってもらったけど!)


 寧々は心の中で反論する。

 現実では、怒鳴られたりするのが怖くて何も言えていないが。


『どうせ、その男とずっといたんだろう?』

「っち、ちがっ……」

 寧々は慌てて否定するも、頭に血が上った双治は止まらない。


『そんなふしだらな身体で、浮気してないって考えないことのほうがおかしいだろ。気持ち悪い。』

「ふっ、ふしだらって……!」

 確かに、寧々は同い年の平均的な身長より小さい割に、胸などは出ている方ではあるが、そんなことを言われるのは流石に心外であった。

 というか、それだけで決めつける双治も双治である。


『そういうわけで、お前とは別れる! もう話しかけてくるなよ!』

 そう言って、双治は電話を切る。


―――ツー、ツー、ツー


「……………。」

 これまで優しかった双治にボロクソ言われてしまったショックで、寧々は呆然と立ち尽くす。


 と、そこに、一人の男が入ってきた。

―――ガチャッ


()()()()()()ー、おつかれさん……って、どうした?」

 ノックもせずに入ってきた男を寧々は見ると、近寄って無言でポカポカと叩き始めた。


「え?

 本当にどうかしたのか?」

 心配そうに寧々の顔を見る男。

 身長が158㎝の寧々と170㎝以上の男ではかなりの差があったので、男が少々かがむような格好になっていたが。


「アポロン……。

 お前のせいだ〜!」

 そう言ってアポロンといった男に一発強いパンチをお見舞いすると、寧々は部屋―――控室から出ていく。


「ちょっ、おま、すっぴん……!」

 慌ててアポロンが止めるも、寧々は止まらない。


 今、寧々は自宅にいたのではない。

 寧々は、とある()()()()()()にいた。



 国民的バンド、【Symphony of the gods《神々の共奏会》】。


 メンバーは四人。


 ボーカルのアメノウズメ(天宇受売命)


 ベース担当のアポロン。


 双子の片割れでドラム担当、ミューズ。


 双子の片割れでキーボード担当、ムーサ。


 それぞれ音楽の神の名前からとっている(ミューズとムーサは同じ神の別の読み方の名前)。


 寧々は、アメノウズメ(通称アズメ)だった。

 ただ、【Symphony of the gods《神々の共奏会》】は、全員が顔バレを防ぐため、仮面等をつけているので友達等にはバレてはいなかったが。


 そんな国民的バンドのボーカルは、ただひたすらに走っていた。

「うわああぁぁぁ……!」

 その声は抑えめだったが、それでも叫び声を上げて。


 いつも行っていたストレスの発散場所に行く。

 そこは、寧々の家の近所にあった川原。

 寧々がまだ学生だったので、寧々の家に近いところがライブ会場になっていたのが災いし、個々までたどり着いてしまった。


(ここに来たのは久しぶりだなぁ……。最後に来たのは…【Symphony of the gods《神々の共奏会》】に入る前だったっけ。)

 ここで寧々は、いつも()()()()()()ストレスを発散していた。


 そもそも、【Symphony of the gods《神々の共奏会》】は、もともと有名だったわけではない。

 アズメの奇跡的なその歌声も、有名になった一因と言えるであろう。


 六オクターブも出すことのできる奇跡の歌声。

 高音も低音も、自由自在。


 そんな、彼女しか出すことのできない歌声。


 それが、惜しげもなくさらされていた。


「―――♪――♪―――♪」


 寧々を遠巻きに見ている一団があった。

「え? あれって―――」


 学校帰りの女子高校生の一団だった。

 高校生たちは、その歌声をネットにアップしてしまった。


 ###


 ともかく、こうして、国民的バンドのボーカルの素顔がバレてしまったのである。



「消えたい………………。」

 その後、そんな事を言っている少女がいたとかいないとか。



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