星はココアに溶けて
取り出した鍋に、スプーン二杯のココアと、少しの砂糖、そしてたっぷりの牛乳を注いだら、お湯で伸ばしながら温める。
しばらくすると、甘く香ばしい香りが立ち昇る。
それが出来上がりの合図だ。
ホーローのマグカップに、ゆっくりとココアをついで、ちいさなマシュマロをひとつかみのせる。
パソコンの前に座り、マシュマロが溶けていくのを眺めながら、息を吹きかけて冷ます。
ふと見ると、ベランダから星が見える。
マグカップを持ったまま、外へ出る。
月は見えない。
こんな夜が大好きだ。
月が輝く夜は、その光が星の輝きまでも奪ってしまう。
さらに、街灯が近くにあると、星は見えない。
星は、その瞬きが小さいがために、簡単に大きな光に吸い込まれてしまうのだ。
でも星は、決して人の輝きを奪わない。
隣の星を邪魔したりしない。
そうやって空一面に広がる星たちは、月に負けず劣らない美しさを持っていると思う。
冬の夜は寒い。
マグカップから揺らめく湯気が、冷えた空気に溶けていく。
あんなに熱かったココアも、今は程よく飲みやすくなっている。
星たちの営みと、甘いココアに、私は優しい暖かさを感じた。
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