優しい中学生の所業 ~一人の幼女を助けるために~
この物語はフィクションです。
中学生である僕は、夜中にランニングしている時に、一人の幼女を見つけた。その幼女は道路のど真ん中にいた。
「どうしたの?」
「……」
僕は何かあったのか聞いてみてもその幼女は無言だ。すると、幼女は走り出した。
「――っ」
その幼女は走るのが速かった。僕は毎日ランニングをしているのにそれでもぎりぎりついていけるぐらいだ。
「おい、そっちは危ないぞ!」
幼女は路地裏に入っていった。僕は声をかけたのだが無視されてしまった。僕は路地裏の前で立ち止まる。
「きゃあぁぁぁ!」
僕がどうしようか悩んでいると、幼女が悲鳴を上げており、僕の意思とは関係なしに体が動いてしまい、僕も路地裏に入る。
すると、一人のガタイのいい男が片手で先程の幼女が捕まえており、もう一方の手には包丁が握られている。
「その手を放せ」
僕は声を荒げてそう言った。すると、男はこちらに気付いていなかったらしく初めてこちらを見る。
「動くなよ」
男はいたって冷静で、幼女を人質として僕に命令をする。そして、包丁を僕の方に向けながら、後ろに下がっていく。
僕は幼女を助けられなかったのを悔やみながら、ポケットの中でスマホを通報できる準備をする。
ガンッと鈍い音がして僕は地面に倒れこむ。どうやら後ろに誰かいたらしい。
「縛って連れてこい」
幼女を捕まえていた男の声を最後に聞き、僕は意識を失った。
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「どこだ、ここ?そういえば、あの幼女は?」
僕は目覚め、ここがどこなのかを確認する。僕が目覚めた部屋は無機質な部屋で、壁も床も白い。
「くっ!」
僕は手を動かそうとするがジャラジャラと音が鳴るだけで動かせない。足も同様だ。
「やあ、元気かな?」
声が聞こえて振り返ると、昨日の男がいた。
「あの幼女は?生きてるのか?」
「幼女?ああ、由奈の事か」
「大丈夫なのか?死んでないよな!?」
僕は心配で、声を荒げて大きな声でそう言う。
「クックック、アッハッハッハ!」
「何だ!?何がおかしい!?」
「君はまだ分からないのかな。君はね、騙されているんだよ」
「なん、だと」
僕はようやく気づいた。由奈という幼女は、この男の共犯だったのだ。
「実に愉快だ」
「ク、クソ」
こいつら人間じゃねえ。しかし、そうではなかったようだ。
バンッと扉の開く音が聞こえると、由奈がいた。
「お父さん、こんな真似はもうやめて!」
由奈は声を荒げてそう言う。そして、僕の拘束を解いてくれる。
「昨日はごめんなさい。私ってバカだった。ここから出よう、走って!」
僕は拘束が解かれた後、言われるがままに走りはじめる。あの男も自分の娘を傷つけることはできないのだろう。追いかけてこない。
「こっち。このまままっすぐ行って!」
「君は?」
僕は由奈にどうするのかを聞く。
「私は残るよ。あなたに酷いことして逃げるなんて、出来ない」
「そうか、ありがとな」
僕は由奈に恩を感じながら走り出す。そして、出口の目の前で、僕が床を踏んだ瞬間、床が……落ちた。
落とし穴だ。僕は、また、騙されんだ。
「ふふっ。まったく馬鹿な人。こんなに簡単に信じるなんて。あっ、その穴にはさ、虫を放ってるんだよね。私はあなたが死ぬまでここで見とくね}
僕は由奈を信じたことを後悔しながら誓った。もし来世があったら、人の事は、信じないと。
知らない人にはついていかないようにしましょう。