表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/31

第五話 クレイゴーレムの腕


 クレイゴーレムたちを連れ歩いてわかったことがある。


「ぐごごごご」


 ミニサイズの粘土人形たちは、ある程度自立して動くことが出来るみたいだ。

 命令をしなくても動けば後を付いてくるし、どこかに行ったかと思えば何かを抱えて持ってくる。

 その何かは大抵、視点の低いクレイゴーレムでしか見つけられないようなダンジョン資源ばかり。

 薬草や鉱石、魔物の鱗。とにかく、色々だ。


「ありがとな」

「ぐごごご」


 両手に抱えられた鉱石をアイテムボックスに収納する。

 回収してくる資源も移動すれば変わっていく。

 最初は薬草や花が多かったが、今では鉱石や宝石の原石が多い。

 温度も高く、岩肌の地面の材質が異なる。

 岩の陰から顔を覗かせれば、光を放つ溶岩溜まりが見て取れた。


「暑いな」


 ここは溶岩地帯。

 環境が変われば現れる魔物も変わってくる。


「グルルルルルル」


 低いうなり声と共に、新手の魔物が現れた。

 火の粉を纏い、炎の息を吐く、火炎の魔物。

 狼に似たその姿からして正体に見当はついた。


「ヘルハウンドか」


 比較的、弱い部類の魔物だが数が多い。

 油断していると大やけどを負う。

 離れていても熱気に肌を撫でられる。


「ワォオォオオオォオオオオオオッ!」


 叫ぶヘルハウンドに向けて突貫し、携えた剣を突き出すように薙ぐ。

 その一撃に灼熱の牙で応えた個体をそのまま引き裂いて命を奪う。

 安心は出来ず、その場に踏みとどまってすぐに次のヘルハウンドへと意識を向ける。

 瞬間、視界が真っ赤に染め上げられ、熱気が髪を靡かせた。

 ヘルハウンドの吐いた火炎が、目の前まで迫っている。


「チッ」


 即座に回避しようとしたが、その前にクレイゴーレムたちが動く。

 十二体が粘土に戻り、俺の目の前で練り直される。

 出来上がったのは粘土の壁。それがヘルハウンドの火炎を堰き止めた。


「なるほど」


 こういうことも出来るのか。


「なら」


 粘土壁を練り上げて、別の形に成形する。

 握り締めた拳は、元のサイズのクレイゴーレムのもの。

 それは俺の右腕と連動して動き、薙ぎ払うと粘土の腕がヘルハウンドをまとめて殴り飛ばした。


「ギャンッ!」


 殴り飛ばされ、壁に激突し、ヘルハウンドたちは地面に横たわる。

 身に纏う火の粉も掻き消え、命の灯火すら掻き消えた。


「ものは使いようだ、なッ」


 右手を広げ、振り向きざまに叩き付けるように振り下ろす。

 それに追従した粘土腕が地面を叩き、背後から迫っていたヘルハウンドを叩き潰す。

 粘土だから火傷もしないし、使い勝手がいい。


「これで全部か」


 周囲を見渡してみても魔物の気配はない。

 そのことを確認して一息をつくと、例の電子音が鳴る。


「ミッション達成、火の用心」


 達成条件、ヘルハウンドの討伐。

 報酬、スキル炎天下バーニング

 手の平を持ち上げてスキルを発動してみると、炎が燃え上がった。

 更に続いて電子音が鳴る。


「ミッション達成、ヘルハウンドキラー」


 達成条件はヘルハンドを十体討伐。

 報酬はヘルハウンド特攻+1だ。


「十体で特攻がつくって感じか。で、その次が百……」


 クレイゴーレムたちがヘルハウンドの魔石を拾い集める中、ふと遠くから戦闘音が響いてくる。

 それに紛れるように人の声もした。


「急い――やく」

「――つかれ――ないとっ」

「時間――ぎます」


 声音は焦りに満ちていて非常事態だとすぐ読み取れた。


「不味い状況っぽいな」


 クレイゴーレムたちが集めた魔石を回収し、その場から動く。


「待ってろ」


 俺がここで動かなかったら見捨てたことになる。

 見捨てられるのも見捨てる側になるのも御免だ。

 俺はあいつらとは違う。

 決して誰も諦めない。

 その思いが足を加速させ、ダンジョンを駆け抜ける。

 そうして、またしても電子音が鳴る。


「緊急ミッション?」


 走りつつ表示された文字に触れて詳細を開くと、達成条件に学生の救出と綴られていた。


「言われなくてもそうしてんだよッ」


 緊急ミッションの表示を払いのけて先を急いだ。

よければブックマークと評価をしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ