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第二十八話 数多の予兆


 紫電のような一閃が過ぎ、魔物の喉を裂く。

 第十階層の魔物は同種であっても、第九階層のものより一段強い。

 持ち合わせの特攻のお陰で俺はどうにかなっているが。


「ごめん、伊吹」

「へーき、へーき!」

「後ろです」


 小杖の魔法が伊吹の背後にいた魔物を穿つ。

 三人は苦戦しつつも互いにカバーし合い、勝利に繋げている。

 決して楽な道のりじゃないが、この分なら第十階層も攻略できそうだ。


「パラサイトも今のところ見てないな」


 パラサイトは宿主を効率よく探し出すためか行動範囲が広い。

 この第十階層ほぼ全域に出没し、いつどこで鉢合わせても不思議じゃない。

 唯一の救いは繁殖能力が低く個体数が少ないことくらいか。


「何事も起きないといいけど」


 一抹の不安を抱えつつ、第十階層を進む。

 この階層にある資源は主に地下資源であり、冒険者の出る幕はない。

 専門業者が冒険者を護衛として雇うことはあるが、攻略目的ではあまり旨味がない。

 その上、パラサイトの危険がある以上、素早く通り抜けるのが吉だ。


「ん?」


 第十階層をある程度、進んだ所で不意に予兆がきた。


「待った」


 手で三人を制し、その予兆に集中する。

 一つ、二つ、三つ、数える間にも予兆は増え、数え切れなくなった。

 こんなことは初めてだが、考えられることは一つ。


「逃げるぞ! 魔物の群れだ!」


 その予想は当たり、予兆通りに魔物の群れが現れる。

 空から、地中から、丘の影から、無数の魔物が湧いて出た。


「走って! 走って!」

「もう走っています」

「じゃあ、もっと早く!」


 予兆のお陰で先手を打って動ける。

 初動の差で群れから距離を離すことができた。

 だが、振り切るにはいたらない。

 どこかで身を隠さないと。


「どこかに良い場所はっ」


 駆け抜けながら周囲を見渡し、身を隠せる場所を探す。

 目をこらして必死になっていると、視界の端で光が反射するのが見えた。

 誰かが鏡で天井から降り注ぐ鉱石の光を反射している。

 明滅するその間隔で、意味は推し量れた。

 こっちに来い、だ。


「あっちだ!」


 導かれるまま舵を切り、そちらへと向かう。


「こっちよ!」

「早くこい!」


 呼び込まれ、滑り込んだ先は洞穴だ。

 薄暗い中に灯る携帯型非常灯が数個。

 そして俺たちを呼び込んだのは、見知った顔だった。


「なっ、そ、総也か?」

「あなた、だったの」

「翔流、絵美……」


 まさかこの二人に助けられるとは。


「――それより持ってないか!?」

「な、なにをだ?」

「パラサイトの魔法薬よ」


 それを聞いて嫌な予感がした。

 雑嚢鞄から魔法薬を取り出すと、翔流はそれを持って奥へと向かう。


「なにがあった?」

「わかるでしょ? 寄生されたのよ、仁」


 それを聞いた途端、不快になるほど心臓が跳ねた。

 すごく、すごく、嫌な気分がする。


「……三人とも、ここで待っててくれ」


 そう言うと。


「わかりました」


 返事をしたのは伊吹だった。

 三人の中で唯一、俺の過去を知っているかも知れない伊吹。

 その様子だと、やっぱり聞こえていたみたいだな。


「ありがとな」


 そう言って洞穴の奥へと向かう。

 足を進めるたび、靴が重くなるような感覚がした。

 それでも無理矢理足を動かすと、見たくないものが見えてくる。


「……総也」


 青ざめた表情をした亜紀と、辛そうな顔をしている翔流。

 人の輪郭には明らかにないものが生えた仁の姿を見る。

 皮膚の下にパラサイトがいるのは間違いなく、その輪郭がはっきりと浮き出ている。

 長いムカデのような胴体から生えた脚の何本かが、皮膚の下から突き出ていた。

 あまりの姿に絶句する。

 言葉がなにも出てこなかった。


「やあ……総也……会えてよかった」


 その声は弱々しい。


「死ぬ前に……話したいこと……あるんだ」

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