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第二十七話 夢の彼方


「聞いたぞ、仁! お前もスキルの詳細がわかったんだってな」

「あぁ、卒業間近でようやくね。次はそっちの番だよ、総也」

「そうだな。パーティーの中で俺だけ出遅れてるし、気合い入れないと」

「大丈夫、亜紀も翔流も絵美も詳細がはっきりしたんだ。総也だってそのうちわかるよ」

「だと良いけど。いや、きっとわかるよな」

「あぁ! もちろん」

「総也! 仁! 授業始まるわよ!」

「あぁ、今行くよ。亜紀」


 景色はがらりと変わり、薄暗いダンジョンの最中。

 背後には追い掛けてくるゴブリンの群れ。

 今、その一匹が仁に追いつき、鈍色の短剣を振りかざす。


「仁!」


 咄嗟に仁を突き飛ばし、ゴブリンに無防備な姿を晒した。

 刃毀れした剣先が、俺の脇腹に食い込んだ。


「――夢……か」


 じっとりと汗を掻き、気がつけば手で脇腹を押さえていた。

 あの日から何度も見た悪夢。

 最近は見なくなったと思ったんだけどな。


「六時半か……軽くシャワーでも浴びるか」


 軋む廊下に気を遣いながら脱衣所へと向かう。

 この音とも今日でお別れだ。

 ダンジョンに行っている間に改修業者が来て、床も壁も天井も外観も綺麗にしてくれる。

 それを思えば悪夢で沈んでいた気分も多少はマシだ。


「はぁ……ひどい始まりだ」


 ようやく脱衣所に辿り着き、熱いシャワーを浴びる。

 それが終わるとそのまま朝食に取りかかった。


「わぁー、いい匂い」


 ベーコンの匂いに釣られて、伊吹が起きてくる。

 最初の頃とは違い、服はきちんとしたものを着てくれている。


「今日は早いんだな」

「はい! 今日はいよいよ第十階層ですから! 今日の私は気合いが入ってますよ!」

「そりゃいい。朝飯を食って更に力を付けないとな」


 卵を落として目玉焼きにする。


「おはよう」

「おはようございます」

「あぁ、おはよう」


 朝陽と小杖も起床し、ちょうど朝食も出来上がった。


「さぁ、飯にしよう」

「いただきます」


§


「さて、今日はいよいよ第十階層にいく」

「たしか第十階層からが本番で、それまではただのチュートリアルだって話だったような……」

「あぁ、そうだ。俺も第十階層に行くのは初めてだな」

「今まで以上に気を引き締めて望むべき、ですね」


 第十階層は魔物も一段と強くなる。

 これまでは三階層ずつ攻略していったが、これからは一階層ずつだ。

 無闇に階層を進めると、あっという間に全滅してしまう。


「さて、問題だ。第十階層でもっとも注意すべき魔物は?」


 そう問うと、全員が神妙な顔つきとなる。


「パラサイト、ですね」

「あぁ、そうだ」


 それがもっとも危険な魔物だ。


「パラサイトに寄生されたらまず助からない。この魔法薬で活動を鈍らせることは出来るが、稼げる時間は遺言を残せるくらいだ」


 これまで何人もの冒険者がパラサイトに殺されている。


「幸い、出現頻度はそれほど多くない。一度も会わずに第十階層を攻略することだってざらにある。でも、可能性は常にあるんだ。絶対に気を抜かないでくれ」

「わかりました」

「よし。じゃあ、行こう」


 注意事項を伝え、席を立つ。

 ギルドを後にして、ギルド協会へと向かった。


§


 第十階層は見渡す限りの荒野が広がっている。

 うねるような起伏に荒れた大地。

 丘の影には魔物が潜伏し、葉の少ない木々が幾つも聳えている。

 太枝に止まる鳥の魔物は、猛禽類を思わせる凶悪な姿をしていた。


「視界が空けているせいか、ほかの冒険者の人たちも見えますね」

「あ、ホントだ。ちらほら見えるね」

「あの方たちも私たちと同じ立場なのでしょうか?」

「かもな。負けてられないぞ」


 そう言いつつ周囲に目を向けると、見慣れた後ろ姿を見る。

 仁、亜紀、翔流、絵美だ。

 俺はそれを見なかったことにして、三人と共に第十階層の攻略を始めた。

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