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第二十五話 魔法の詠唱


「どういうことだ? これは」


 炙り出された魔法使いと、その周辺にいる仲間たちに向けて問う。


「……しようがありませんね」


 観念したようにフードを取る。

 やはり、今朝の魔法使いだ。


「いつから気づいていたんですか?」


 彼の視線は相変わらず小杖を捉えている。


「なんとなく、気配を感じてはいました」

「……写真のときか」


 写真を撮るとき、小杖だけ明後日の方を向いていた。

 その時点で違和感には気づいていたのか。

 魔法使いであるがゆえの魔法に対する気配の察知だ。


「質問に答えてもらおう。なぜ、襲撃してきた」

「いえ、すこし再起不能になってもらおうかと」


 悪びれた様子もなく、奴は答えた。


「見たところそちらのギルドは四人だけ。残りの三人が引退してくれれば引き抜きやすい」

「……姿を隠して魔物の仕業に見せかけようって腹か」

「ご名答。なんと言ってもダンジョンですから。冒険者の身になにが起こっても不思議じゃない。まぁ失敗してしまいましたけどね」


 冗談でも言ったように薄ら笑いを浮かべている。


「なら、次はどうするつもりだ? 大人しく牢屋に入ってくれると助かるんだけどな」

「まさか。あなた方を一通り痛めつけた後、魔法で記憶の一部を消去します」

「そ、そんなことッ」

「できっこないでしょ!」

「出来るんですよね、それが。まぁ、それほど万能ではないので消せる範囲は小一時間ほど遡る程度ですが。我らの存在を隠すだけなら十分すぎる」


 襲撃してくるだけあって失敗した時のことも考えられているか。

 随分と用意周到だな。

 今朝のことがあって、もうこれだ。

 手際の良さを見ると初犯じゃないな。


「随分と自信があるんだな」


 再び死命を引き抜き、きっさきを奴へと向ける。


「べらべら、べらべら。もう勝った気でいるらしい」

「当然でしょう。我らは魔法使い」


 ローブが舞い、杖が伸びる。


「ただの冒険者とは格が違う」


 最初に動いたのは奴の仲間たちだった。

 手慣れたように動き、人間とは思えない速度で迫ってくる。

 魔法か何かで身体能力を引き上げているのか。


「三人とも互いを守れ! 俺が数を減らす!」

「はい!」


 指示を出し、ストーンゴーレムたちと共に打って出る。


「たった一人で我らの相手をするつもりか?」


 水晶を跳ねる火球と、身体能力が跳ね上がった魔法使い。

 それらが同時に押し寄せ、いの一番に届いた火球を切り裂いた。

 直後、左手で鞘を引き抜き、火球の向こう側にいた魔法使いを殴り倒す。

 一人を昏倒させ、背後から迫る火球をストーンゴーレムが弾く。


「ぐごごごごご!」


 火球への対処はストーンゴーレムに任せ、魔法使いの数を減らしにいく。

 向かってくる魔法使いが放つ剣撃は速いが洗練はされていない。

 たやすく見切って死命で弾き、がら空きの胴体に蹴りを放つ。

 みぞおちを抉られ、水晶に叩き付けられ、意識を失った人数が二人になる。


「ただの冒険者となにが違うって?」

「調子に乗るなよ、弱小ギルドが!」


 安い挑発に乗ってくれるのはありがたい。

 三人に向かっていた魔法使いが何人かこちらに来ている。

 これで向こうの負担が減るなら思惑通りだ。


「火球は任せて!」


 光剣が舞い、火球を次々に切り裂いていく。


「近づけさせないんだから!」


 身体強化で近づいてくる魔法使いは、風を纏った伊吹が返り討ちにする。

 そして。


「炎天 焼雲 灼土 熱海 大火を以てこれを成す」


 小杖の詠唱が終わった直後。


「そうはさせません」


 杖に宿る魔法が顕現し、うねる火炎が燃え盛ると同時に、掻き消える。


「――ッ」


 小杖の魔法がキャンセルされた。

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