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第二十四話 透明の敵


 第七階層を無事に超えた俺たちは第八階層を突き進む。

 周囲の壁や地面からは色取り取りの鉱石たちが露出していて非常に凸凹としている。

 これらも金になる資源だが、目的は第九階層への到達だ。

 回収作業はストーンゴーレムたちに任せて先へと進んでいる。


「ぐごごごごご」


 ストーンゴーレムがまた一つ、鏡のような鉱石を持ってきた。


「あれ? そのゴーレムってもっと可愛くありませんでしたっけ?」

「ん? あぁ、昨日スキルが変化したんだ」

「へぇー! 総也さんのスキルってそんなこともできるんだー」

「前々から思っていましたけど、色々と万能ですよね、総也さんのスキル。万能というか、破格?」

「まぁな。これに命を救われたし、自慢のスキルだよ」


 そう言いつつストーンゴーレムから鉱石を受け取った。

 すると、例の電子音が鳴る。


「ミッション達成、シャッターチャンスか」


 達成条件、鏡石を十個取得。

 報酬、写し絵(フォトモード)


「丁度、新しいスキルが手に入った。試してみよう」


 立ち止まって振り返り、両手の親指と人差し指でカメラのフレームを作る。

 スキルの発動には不要だけれど、こうしたほうが意図が伝わりやすい。


「あっ、記念撮影ですか!? 可愛く撮ってくださいね!」


 ノリノリな伊吹は二人を巻き込んでポーズを撮る。

 朝陽は驚きながらもすぐにそれに合わせ、小杖は明後日の方向を向いていた。


「小杖? どうかした?」

「いえ、なんでもありません。ピース」


 向けられたピースサインをアイズにシャッターを切る。

 フラッシュもシャッター音もないが、きちんと写真は撮れたようだ。

 スキルで現像したものを手の平に出現させる。


「ほら、出来た」

「わー、ホントに撮れてる!」

「画質もよくてはっきり見えるね。あ、やだ。ここ汚れてる」


 衣服についていた汚れをぱっぱと払う。


「あとで総也さんも一緒に撮りましょう」

「あぁ、そうだな。一枚くらいそういうのがあってもいいな」


 ダンジョンから帰ったら撮るとしよう。


「さぁ、行くぞ。もうすぐ第九階層だ」

「はーい」


 露出した鉱石に足を取られないよう慎重に歩きつつ先へと進んだ。


§


 第九階層、水晶地帯。

 青色を帯びた岩の地面から突き出る透明な結晶が特徴的な場所だ。

 結晶はほのかに発光していて薄暗くはあるが周囲が見えないほどではない。

 満月の月光をより明るくしたような光量と言えばちょうど良いかも知れなかった。


「ふぅ、今回も無事にたどり着けたな」

「はい。あとは資源回収ですね」

「あぁ、どうせなら壁も床も天井も一緒に改修してもらおう」

「頑張らなきゃ!」


 前回と同様、付かず離れずの距離感を保ちつつ資源回収を行う。

 基本的に階層の数字が大きくなるほど資源の価値は高い。

 明かり代わりの巨大結晶を持って帰ることはギルド協会に禁止されているが、その周囲にある細々とした結晶なら採取が許可されている。

 頭の中での計算ではここで稼げれば、ギルドの見てくれくらいはマシにできるはずだ。

 端から見て恥ずかしくない外観になるのも、あとすこしだ。


「上から水が……」


 天井から壁伝いに水が流れ、水晶の下に小さな水溜まりが出来てる。

 覗き込むと複数の色が集まって出来た結晶が映えているのが見えた。

 手を伸ばすと水温が意外と低くて戸惑う。けれど、冷たさを我慢して水晶を掴む。


「こりゃ綺麗だな」


 よく見ようと目の前の巨大水晶に近づけて視線を持ち上げる。

 その瞬間、俺の背後から飛来する火球が鏡のように映り込んだ。


「ぐごごごごご!」


 直後、ストーンゴーレムが跳躍し、石の拳で火球を殴る。

 その衝撃で軌道が逸れた火球はそのすぐ後、爆ぜ散った。


「敵襲だ!」


 スキルで開いた空間の裂け目に多色水晶を落とし、腰の死命を鞘から引き抜く。

 視界の端に三人を捉えつつ、火球を放った魔物の姿を探す。


「隠れたか……」


 巨大水晶のお陰で視界は確保できている。

 だが、それでも魔物らしい姿を発見できない。

 目をこらして姿や影を探っていると、遠くで再び火球が走った。

 それは巨大水晶にぶつかるとそのまま跳ね返り、何度もジグザクに軌道を変えてこちらへと向かってくる。

 それも一つや二つではない。


「厄介だな」


 身に迫る火球を死命で引き裂き、次に備える。

 三人も各々の方法で火球を捌き、身を守った。

 とはいえ、火球は止めどなく跳ね返っては飛んでくる。

 やはり大本をどうにかしないと防戦一方だ。


「総也さん。なんとかして敵の位置を探し出せませんか?」

「考えがあるのか?」

「はい。敵を暴き出します」

「わかった。なんとかしてみる」


 身の守りをストーンゴーレムたちに任せ、俺は死命を鞘に戻す。

 そして新たにスキルを発動した。


観察眼ダウジング


 天から伸びるペンデュラム。

 それが見えない力に引っ張られるように、一つの方向を指し示す。


「そこだ」


 位置を割り出すと、小杖が詠唱する。


「遠方の火 届かざる彼方 そらを超え ただ遍くを照らす」


 それは頭上に極小の太陽を現し。


斜光影退しゃこうえいたい


 姿を隠した者を光によって炙り出す。

 透明化していたのか、そこになかった輪郭が浮かび上がる。

 それは毛皮というには滑らか過ぎ、獣と言うには線が違う。


「くっ」


 姿を隠して火球を放っていたのは、今朝の魔法使いだった。

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