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第二十三話 魔法使いのギルド


「か、勧誘!?」


 俺よりも先に声を上げたのは朝陽だった。


「そ、それでどうしたの!?」

「どうしたもこうしたも断りました。見ての通りです」


 そう言ってゴミ箱を手で示す。


「そ、それもそっか」


 ほっと安堵の息をつく。


「でも、凄いなー。私たち冒険者になってまだ半月とちょっとくらいなのに。こんなにほかのギルドから勧誘されるんだー」

「小杖は魔法使いだからな。それだけって訳でもないだろうけど」


 魔法使いというだけで大手ギルドから声が掛かる。

 優秀なら尚更だ。

 本当ならもっと大きなギルドにいてしかるべき小杖が、こんな弱小ギルドにいるんだ。

 そりゃ勧誘もくる。

 まぁ、ギルドの郵便受けに直接届けるのもどうかと思うが。


「ともかく、私がほかのギルドに移ることはないので安心してください」

「だ、そうだ。よかったな。俺もよかった」

「はい、そうですね」


 先日のこともあって朝陽が過敏に反応したが、小杖にその気がないなら心配ごとはない。


「さて、俺は風呂に入ってくる。体中べとべとだ」

「はーい。その間に夕食の準備、しておきますね。今日はハンバーグですよー」

「そりゃいい。楽しみだ」


 そう言いつつ脱衣所に入る。

 汚れた衣服を脱ぎ捨てて浴びる熱いシャワーは格別に気持ちがよかった。


§


 翌日の朝、朝食を取り終えてダンジョンへと向かう準備をした。

 全員の支度が調い、揃ってギルドを出て戸締まりをする。


「鍵も閉めたし、行くか」

「はい。今日の目標は第九階層ですね」

「二桁まであとすこし!」

「一階層ずつ着実に進んでいきましょう」


 気合いも十分、階段を降りてギルド協会へと向かう。

 その一歩目を踏み出した、その時だった。


「真道小杖さん」


 小杖を呼び止める何者かが現れ、全員がそちらに振り向いた。

 視線の先に捉えたのはローブを纏った複数人。

 彼らは目深に被ったフードを取ると、視線を小杖へと向けた。


「どうも、先日連絡した真魔ギルドの者です」

「真魔って、あの魔法使いしかいないギルドのこと?」

「みたいだな」


 伊吹の言う通り、真魔ギルドは魔法使いだけで構成されている。

 少数ながら大きなギルドで魔法使いであっても優秀な者しか敷居を跨げない。

 昨日のこともあるし、彼らの目的は小杖の勧誘か。


「貴方はとても優秀な魔法使いだ。是非、我らと共に魔法の研究をしていただきたい」


 こちらはお構いなしに、彼らは話しを続ける。


「おいおい、マスターの目の前で引き抜きか?」


 一歩前に進み出て、彼らと対峙した。


「……なるほど、貴方が妨害を」

「妨害?」

「とぼけないでください。我らが送った手紙や書類がすべて無視されている。それは貴方が彼女に届く前に処分しているからでしょう。違いますか?」


 やけに自信満々に彼は言う。


「いや、違うけど。小杖宛ての郵便物は全部本人に渡してるし」

「な、なに?」


 視線が小杖のほうを向く。


「はい。たしかにその通りです。その中にはあなた方の物もありましたが、すべて読まずに捨ててしまいました」

「す、捨てた?」

「申し訳ありません。興味がなかったもので」


 すっぱりと真っ直ぐな言葉で小杖はそう言い放つ。


「ど、どうやら我らのことをご存じでないようだ。だから、そんなことを」

「いえ、私も魔法使いですので、あなた方のことを知っています。優秀な魔法使いにしか許されない場所で、選ばれたことは栄誉であると」

「では、なぜ!」

「先ほども言いましたが、興味がないので」


 二度、すっぱりと言い放つ。

 それを聞いた魔法使いたちは、ぽかんと口を開けていた。


「私は魔法の研究や栄誉よりも、友達や恩人のほうが大事です」

「だとさ。さぁ、お引き取りを」


 そう促すと彼らは渋々と言った様子でフードを被る。


「今日の所は引き下がります。ですが、まだ諦めた訳ではありませんので」


 そう言って去って行った。


「小杖!」

「小杖ちゃん!」


 そのすぐあと、両サイドから伊吹と朝陽が抱きついた。


「わお、どうしたのですか?」

「ううん、なんでもないよ」

「そうそう、ちょっと抱きしめたくなっただけ!」


 体を寄せ合い、頬を合わせ、三人は密着する。

 仲良きことは美しきかなとはよく言ったものだ。


「さぁ、今度こそダンジョンにいくぞ」

「はーい」


 三人を微笑ましく思いつつ、止めていた足を動かした。

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