映像 その0
1999.07.1702:36:43――
映るのは散乱したガラスに、剥げ落ちた塗装の壁――そこは真夜中の廃病院。
肝試しに来たかのようにふざけあう若い二人の男たちはカチャリ、カチャリと割れた窓を踏んで歩いていく。
暫くして一人の男がある一室のプレートにライトを当てた。するとそこには『霊安室』の文字が書いてあった。瞬間先ほどまであったふざけていた声が聞こえなくなった……。
「……はっ、ははは」
まるで幽霊などいないと言い聞かせるかのように一人は無理矢理な笑う。
「へ……へへっ……」
もう一人も笑い、そして二人は恐る恐ると『霊安室』へと そんなボロボロの『霊安室』に男二人は進んで行く。長方形の部屋、塗装が剥げていてヒビが入っている事を除けば特に変わった所は無い……。足元を照らしながら奥へと進んで行く……と、不意に男たちの目にあるものが入った。
――それはボロボロになったストレッチャーだった。
男たちはすぐに思う、このストレッチャーの上に遺体が置かれたのだろうか、と。
緊張は高まり、再びの静寂――。
……一切の動きも出来ずただただストレッチャーを見続けてそのまま暫くして、特に何も起きない事から男たちは胸を撫で下ろす。
「なんだよ」
「やっぱ幽霊なんていないんだよ」
と、強がるように会話していたその時、
――パンっ!
突然何かが破裂した音がした。すかさず男たちはその音がした方向に振り向くが、そこにはなにも無かった……。
「はあ……はあ……」
暗闇の中に潜む恐怖に駆られ息が荒くなる男たち。こんな不気味な所からすぐさま出ようと一歩、後退りしたら今度はどこからともなく声が聞こえてきた。
――――――いあぁぁ
確かに聞こえた呪詛のような低い女性の声に男たちは絶叫して駆けた。一心不乱に出口へ、外へ駆けた。 ]