3-5
陽も沈みかけた午後のリビング。
特にやることもなく、ただただ他愛もない会話やテレビを見て倉敷と過ごしていたら再び恐怖が襲ってきた。
ザザザッーーーーーー!
さっきまで普通に映っていたテレビ画面にいきなり砂嵐が走ったのだ。それはぐにゃりと、まるで異界への扉が繋がったかのように歪み、そして最後は白と黒が入り交じった画面となった。
「な、何なんですか!」
リビングに居た倉敷はビックリしたあまり一瞬にして体全体を丸めるように縮こまらせて、驚かせてきたテレビに向かって逆切れしていた。
そんな倉敷の側に座っていた自分も驚きすかさず身構える。
「…………」
ビデオカメラの件があった為、もしかしたら何かが起こるかもと思ったが特に何かが起こりそうな気配は無かった……。
「ふう」
自分は緊張をほぐすように小さく息を吐くと、テーブルの上のリモコン手に取り色々と操作しながら正常に映らないか試してみる。
「……どうですか? 動きますか?」
依然体を縮こまらせている倉敷は恐る恐る顔を覗かせる。
倉敷の質問を聞き流しながらリモコンを何度か操作して、自分はおかしく笑いながらダメだと首を横に振った。
「全く操作できないや」
異常がキッチンで料理していた速水に伝わったのか、エプロン姿の速水が菜箸を持ったまま興味深そうにリビングから出てきた。
「なんでテレビに砂嵐が?」
「さあ、突然こうなったんだ」
キッチンから顔を出す速水の方を向き、リモコンを見せつけて色々試してみたと意思表示する。
「直らないのか? それは困るな、見たい番組が今日の夜あるんだが……」
「だったら速水が直してくれよ。こういう系はここにいる誰よりも詳しいだろ?」
「まあそうだが扱いに多少詳しいだけであって、電波とかそういうのはどうしようもないぞ」
速水が指の代わりに菜箸で指して答えた。
――ガチャ。
自分の後方の脱衣所から風呂洗いを終えて染谷さんが出てきた。
「どうしたの? どういう状況?」
砂嵐が走るテレビに、怖がる倉敷、そして菜箸を持ったままダイニングに来ている速水を見たならば、そう尋ねるのは必然だった。速水から後方の染谷さんに視線を移してこうなっている経緯を説明する。
「いや、実はテレビを見ていたらこの通り砂嵐になっちゃったんです。それまではいつも通り見れていたのにいきなりですよ……。で、テレビが壊れた可能性があるかもしれないから、そういうのに一番詳しい速水に調べてもらおうかと思っていたところです」
「なるほどね。でもこういう場合は自分たちでやるより宿泊会社に電話した方が良いかもね」
状況を理解しどうするかをすぐに決めた染谷さんは宿泊会社に連絡する為、ダイニングに置いていた自身のスマホを取りに行く。そんな染谷さんに宿泊会社の電話番号が書かれているパンフレットを手渡そうと自分も立ち上がりダイニングに向かう。
「きっとポルターガイストですよ」
途中ソファからすっかり怯えた倉敷の声が聞こえてきた。
「……どうだろうね」
自分はそんな倉敷の言葉に苦笑しながら改めてパンフレットを渡しにダイニングに行こうとしたその瞬間、
ガチャン!
目の前に大きくて黒い物体が通り過ぎた――。




