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とにかく、その幽霊が出そうな場所を探しに速水と共に二階に上がってきた。
リビングとダイニングの間にある華美な螺旋階段を上がった先は少し広めのホールとなっていた。何一つ無く、温もりも一切感じられず、そのホールは窓からは斜めに降ってくる雨しか見えなかった……。
そんなホールに侘しいのような、寂しいのようなそんな感情を抱いていると、ふと横から声が聞こえてきた。
「……で、冴木はどっちにする?」
「え?」
その声――速水の声に自分は我に返ると、速水は面倒臭そうにしながら左右の廊下の先に視線を向けていた。
自分はその速水に促されるようにしてホールから左右の廊下を見ると、廊下の先には同じような作りの洋風の扉があった。どうやら速水は左右の部屋に分かれてそれぞれで設置しようということなのだろう。
「別にどっちでもいいが……」
「なら俺はこっちに行って設置して来るわ」
「……そうか」
部屋の間取りなどあまり変わらないだろうに速水は左側の廊下――男性部屋がある方を親指で指し示した。幽霊など微塵も信じていなくさっきまで嫌々だったのに、突然積極的になった速水に自分は目を丸くする。
「お前……どうした?」
「別に何も」
顔を合わせることなくぶっきらぼうにそう言うと、速水はビデオカメラと三脚の一式を自ら取って踵を返してそそくさと男性部屋に向かっていってしまった。
「…………」
速水の後ろ姿を見送りながら不思議なことも起こるんだなと思っていると、自分が持っているビデオカメラ一式を見てハッと気が付く。
「あっ!」
渡されたのは計3セットでその中の1セットは速水、残り2セットは自分が持っている……。つまり速水は手早く終える1セットだけ受け取って、残りの2セットは全てこちらに押し付けたのだ。
「あの野郎……」
速水の企みに憎々しく呟くが、その企みに気が付かず素直に渡してしまった自分がなにより怨めしい。
「……ったく、しょうがない」
自分自身がやらかしてしまった為に速水を責めることはできない。
深いため息を吐いてから速水と逆方向の女性部屋へとビデオカメラを設置しに、無駄に長い廊下を歩く。
途中、一階から話し声が聞こえ足を止める。
気になり吹き抜けの方から見てみると丁度、染谷さんと倉敷がリビングでビデオカメラを設置していた。先ほど〝センス〟と言っていた染谷さんがどこにビデオカメラを仕掛けるのか気になりそのまま見ていると雑貨棚の所からリビング、ダイニングの全域を映せるように置いているみたいだった。
「なるほど……」
染谷さんの置き方を見て、どのように置けばいいのか何となく理解したら自分は目の前の洋風の扉を開けた。




