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怪研見聞録 ~第一の記録・心霊現象~  作者: 長山真也
第二章 紅葉荘
25/47

1-1


 天気予報では昼から雨は降ると言っていたが、どうやら見事に外れてしまったようだ。


 白いミニバンはしとしとと降り注ぐ雨の中、ワイパーを左右に動かして雨を退かしながら〈紅葉荘〉がある山へと続く街道を進んでいく。



「……まだかな」



 陰鬱(いんうつ)とするような雨、そして何もすることが無い暇な時間が絡み合ってか、自分は思わずうわ言のように呟いてしまった。するとそのうわ言を聞いていた染谷さんが運転しながらテンション低めにキッパリと告げた。



「まだだよ」



 それを聞いて自分は「はぁ」と深くため息を吐くと、視線をおもむろに窓の外へ戻し流れゆく景色に心を預けた――。


 ファミレスから出た後、懸念していた渋滞にはまることなく順調にここまで来ることができた。おかげで時間にも余裕ができて染谷さんが言った通りコンビニに寄りパンやおにぎりといった昼食を買うことができた。また〈紅葉荘〉の鍵も余裕を持って三十分前に受け取ることもできた。 


 全ては円滑に進みあとは紅葉荘に向かうだけ、なのだが……。



「…………」



 車内の空気はこの通り、あまり芳しくない状況だった。


 だけどこうなったのも必然といえば必然だろう。部室と違って車内にはテレビや雑誌などが皆無(かいむ)で話のキッカケが全く無いし、また二時間以上もこの狭い密室空間でずっと同じ場所に座り続けなければならないのだからか……。


 また外の雨、これも雰囲気を陰鬱とさせている大きな一因だろう。


 バチバチ、と雨が車に当たり、その音が車内まで響く……。



「……染谷先輩!」



 重たい沈黙に耐え兼ねた倉敷が運転席を掴み前のめりになって染谷さんに質問する。



「あとどれぐらいで着きますか?」

「ん~、だからあともうちょっと。というかそれ、さっきも聞いたよね~」



 染谷さんはウンザリするように返事をする。



「あれ? そうでしたっけ……」



 どうやら倉敷は先程の自分と染谷さんのやり取りを聞いていなかったようだ。多分、倉敷もこの陰鬱な空気に嫌気がさして先ほどまで外の景色を眺めていたからそのやり取りを聞き逃してしまったのだろう……。


 倉敷は前のめりになっていた体をすっと元に戻した。



 再び沈黙に包まれる車内――。

 車を打つ雨のバチバチという音だけが、ずっとその車内で鳴り響いていた。


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