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また幾らか時間が経過して、カチャカチャと鳴っていた食器の音が完全に鳴り止んだ。
「ごちそうさま。あ~食った食った。これで落ち着いたわ」
最後に食べ終えた、スプーンを置いた速水は満足そうにお腹を擦る。
そんな姿の速水に倉敷はホットミルクを飲みながらが呆れ混じりに言う。
「朝からよくそんなに食べられますね。カツカレー大盛りに、更に追加でアイスクリームなんて……」
「いいだろ別に、アイスが好きなんだから。大体、俺からしたらお前のパンケーキ二枚の方がおかしいわ。よくあれだけで朝ご飯が済むな。というかパンケーキ二枚は朝ご飯にはならないだろ」
「あれでいいんです。速水先輩と違って女子の胃は小さいんですからね~」
二人のしょうもない小競り合いを横目に自分は染谷さんと会話をする。
「鍵の受取時間までは大丈夫ですか?」
スマホで時間を確認する染谷さんは頷く。
「うん、大丈夫。受け取り時間の11時までに到着するよ。というかこのままの順調に行けば早めに着いちゃうから、どこかのコンビニにでも寄って今日のお昼のお弁当でも買って行こうか。どうせ別荘に着いたら疲れて何も作りたくないだろうしね」
「まあ……そうですね……」
染谷さんの話しを聞いて『ならあんなにも朝早くに行かなくてもよかったんじゃないの?』と思ったが、それを口に出すと何か染谷さんを責めているような気になるのでぐっとここは呑み込んだ。
「……でも、昼の弁当を買うんだったら夜の弁当も買った方が良くないですか? 二度手間になりますよ」
その質問に染谷さんはにやりと面白い事を企んでいるような笑みを見せた。
「別にそれでいいの。夜ご飯は毎日替わり替わりで誰かに作ってもらおうかと思っているからね。この一週間、この四人の中の誰かが作った料理を食べられるってとても楽しそうだとは思わない?」
「それはまあ……」
「ちなみに今日は私が作るから、そこの所は心配しなくてもいいよ」
「そうですか。じゃあ楽しみにしてますよ」
初めて聞いたこれからの夜ご飯事情に少し驚いたが、染谷さんと倉敷の手作りご飯は食べられると思うと心が躍った。
朝食終えた後に早速今日の夜に何が出て来るのかとにやけていると染谷さんはすっと静かに立ち上がった。
「……それじゃあそろそろここを出ようか」
「そうですね」
そう言って自分はこのにやけ面を直すように残ったお冷を全部飲み干したら、まだ小競り合いをしていた速水と倉敷を止めて早々にファミレスから出て行った。
どんよりと鉛色に濁ってきた空からは、ぽつぽつ……と小さく冷たい雨が降り始めてきていた。




