エピローグ2
自分はゆっくりと顔を上げた――。
視線を向ける先には講義をする先生が、しかし気持ちはこれから行かなければならないサークルに向かっていた。
別にサークルを嫌っているという訳ではない。だが他のサークルと違って特殊で、さらにそこに所属する人たちはかなり個性が強いのでサークル内での面倒事が絶える事が無いのだ。だからサークルに行く事に対して乗り気ではないのだ。
行こうかそれとも行かない方がいいか迷い頭をクシャクシャと掻いて、ぼさぼさ頭がさらにぼさぼさ頭になったら、もう一度ため息を吐き先生に向けていた視線を隣にある窓ガラスに向けた。
そして諦めたような遠い目で空を見つめた。
「行かない訳には行かないか……。副部長だし……」
トンビが飛んでいる。ゆったりと大きく弧を描いて大海のような夏の青い空を飛んでいる……。
何も悩み事がなくて気持ちよさそうだな、と現実逃避するように羨望の眼差しでそのトンビを目で追い続けていると、スピーカーから誰もが一度は聞いた事があるクラシック音楽が流れた。
どうやら現実逃避をしている間に講義が終わってしまったようだ。
さっきまでずっとスマホをしていた生徒たちや、寝ていた生徒たちは不自由から解放されたように嬉しそうに立ち上がってこの講義室からそそくさと出て行く。
その様子を後方から見ながら自分は呟く。
「……行くか」
もうすでに少し疲れ切った心を奮い立たせて、未だ講義室に残っていた自分も立ち上がるとノートなんか机に出しっぱなしの筆記用具をバックに詰め込む。そしてそのバックを肩にかけて、この誰もいない講義室からひっそりと退出した。