3-6
「ふう」
面倒事の元となる染谷さんがいなくなりとりあえず一安心だが……。
「さて、どうしようか……」
呆れ果てた物言いと共に自分は二人を見る。
そこでは再度、もう一つの面倒事が――速水と倉敷とケンカが勃発していた。原因は言わずもがな先程の挑発で、倉敷はその挑発に「行ってやりますよ、行ってやりますとも」と、語気を荒げてずっと速水に噛みついていた。
そんな倉敷に速水は嫌気がさしたような顔をすると、ため息ついて机下のリュックを持って立ち上がった。
「はあ……俺もう帰るわ……」
唐突な速水の発言に自分は少し驚きつつも、何となく疲弊しているのが分かったので無理に引き留めることはしなかった。
「そうか。もう帰るのか」
「まあな。どうせこの後いつもの様に駄弁るだけだし、それに……」
キッと睨み上げる倉敷をチラリと見て、速水は続ける。
「なんかすげぇめんどくさい」
「逃げるんですか!」
「ああ、めんどいから逃げるわ」
速水は倉敷の挑発をものともせず扉へ――と、ここでふと思い出したように告げる。
「あ、そうだ。冴木、俺が帰った事を染谷先輩に言っておいてな」
「ああ。別にいいよ」
「それじゃあ、また」
「ああ、またな速水」
そうして速水は最後に軽く手を上げて帰っていった……。




