3
翌朝、僕は彼女に会うために彼女の屋敷へと向かった。
島のはずれに位置する屋敷は遠目から見ても異様に目立っている。それもそのはず、この島の建物の大半が平屋で、近代的な建物が皆無だからだ。
木々の生い茂る林を抜けると屋敷の門までやってくる。使用人らしき人物が定期的にやってきて掃除をしていたこともあってか、重厚な門と佇まいはあの頃と何ら変わらなかった。
腕時計で時刻を確認する。午前八時。本来ならば訪問することがためらわれるような時間だが、インターホンを押すとすぐに返事があった。
『ん、来てくれたね。開けるから少し待ってて。』
インターホン越しに彼女の声が聞こえる。自惚れでなければ、彼女の声はどこか弾んでいた。
数秒後、彼女の身長の二倍はあるであろう大きな玄関扉がゆっくりと開かれる。そこから彼女は姿を現した。
「おはよう、蓮君。」
挨拶をする彼女は長い髪を後ろに結っており、昨日と同じ真っ白なワンピースの上にエプロンを着用している。朝食を作っていたであろうことが伺えた。
「おはよう。もしかしてお邪魔だった?」
既に分かり切っていることを彼女に問いかける。
「いいや、むしろ待っていたよ。朝ごはん、一緒に食べないかい?」
その申し出は朝食を食べていない僕にとって素直に嬉しいものだった。
「うん。いただくよ。」
そう言って僕は門をゆっくりと押し開ける。そして彼女の目の前までやってくると、彼女は玄関扉を開け放った。
「さ、どうぞ。」
「お邪魔します。」
彼女に促されるまま、僕は屋敷の中へと入っていった。
この屋敷は洋館故、日本の建物のように靴を脱がずにそのまま家に上がる。そんな些細なことでさえ昔を懐かしむには十分だった。
「さて、早速席について、食べようか。」
目の前のダイニングテーブルにはトースト、ハムエッグ、サラダ、フルーツに暖かいコーヒーが並べられていた。
僕と彼女は席につくと食事前の挨拶をして食べ始める。
「おいしい?」
穏やかに笑いながら彼女は問いかけてくる。
「うん。とってもおいしいよ。」
空腹も相まってか、目の前の朝食がとてもおいしく感じられた。
「それはよかったよ。」
その言葉を最後に、数分間食器の音だけが食卓に響く。
そして朝食を全て食べ終えると、食後のコーヒーを飲み始める。
「それで、蓮君はどうして私の家に来たの?」
なぜやってきたのか。その単純な問いかけに対して僕は明確な答えを持ち合わせていなかった。
それでも輪郭のぼやけた動機ならば存在した。彼女の一挙手一投足が熊谷ゆりを思い出させる。事実、彼女は熊谷ゆりなのだろう。しかし目の前の変わり果てた美を持つ彼女が熊谷ゆりであるという確信が、全くと言っていいほど得られなかった。
だからこそ、彼女が熊谷ゆりたる心を見極めたいがために、衝動的に屋敷を訪れたのだと思う。
「……分からない。でも何となく一緒にいたいからかな。迷惑だったら帰るけど。」
彼女は首を横に振った。
「ううん。迷惑じゃないよ。そう言ってもらえてとっても嬉しい。…………じゃあ、お話しようか。昨日の続き。」
その提案に対して、僕は動揺を隠せなかった。
「昨日、答えてくれなかった理由、教えてくれないかな?」
愛しむ視線の中に僅かな冷たさを孕ませながら、彼女は口を開いた。
「いっただろ、分からなくなったんだよ。」
「なにが?」
何が分からなくなってしまったのか、それさえ分からない僕は渦巻く違和感を口にすることしかできない。
「君が熊谷ゆりだって、認識してはいるんだ。仕草だとか雰囲気だとか、僕は明確に君を君だと認識できてる。でも、僕は君を知らない。君は熊谷ゆりの面影を全く持たない。だから――」
「私が整形したことが気に入らないんでしょ?」
彼女は僕の言葉を遮って口を開く。
僕はその言葉に対して、無言を持って肯定することしかできなかった。
「蓮君はさ、整形をどう思ってる?」
「……いきなりどうしたんだよ。」
答えになっていない返事を投げかける。その返答に彼女はやや不満のようだった。
「一般的にさ、整形って悪いイメージだよね。それこそ縁切りするほど毛嫌いする人もいる。嘘つきだとか、卑怯者だとか、今でも整形には悪いイメージが先行する。でも、どうして?」
彼女は自身の顔をそっと撫でる。その手つきは彼女のむき出しにしている感情とは裏腹にとても優しいものだった。
「人を見た目で判断する人にとっては美しさは何よりも優先されることでしょ? その美しさに磨きをかけてるんだから魅力的なはずじゃん。人を内面で判断する人は外見は関係ないって言うよね? じゃあ見た目どうしようが勝手じゃん。整形が嫌いって、その言葉が見た目で判断してますっていう宣言だと思わない? みんな理不尽な矛盾を整形に押し付けて自分の理不尽さを正当化してるよね。どうしてそんな醜いんだろ。どうして? 蓮君。」
彼女の紡ぐ言葉には怒りに任せたように見えて、用意していた言葉を理路整然とぶつけているようだった。
「そもそも人は見た目だけ、内面だけで判断しないだろ? …………それにな、整形をする人の心がそもそも醜いって考える人もいる。整形で手に入れた美しさは偽物、本質は醜いと考える人もいる。何も矛盾なんてない。」
「じゃあ私は醜いの?」
揺れる瞳で彼女は問いかけてくる。ここで僕が醜いと答えたのなら、彼女は壊れるという確信が僕の中で生まれた。
でもそれは僕の本心じゃない。美しさだとか醜さだとか、僕の心中に渦巻くものはそんなことではなかった。
「美しいとか醜いだとかそんなことは考えたこともないよ。僕の中で熊谷ゆりは熊谷ゆりだ。彼女だからこそ魅力的なんだよ。」
その言葉に彼女は何も答えない。俯いてしまったため表情さえも見ることができなかった。
手元のコーヒーはとうに冷めきっている。それでも僕は残りを全て飲み干した。
暖かかった。
「今日はもう帰るよ。ありがとう。」
ゆっくりと席を立つと僕は屋敷を出て自宅へと帰った。
◇ ◇ ◇
ふと目が覚め、上半身をゆっくりと起こす。
どうやらソファに寝転んだ後、眠気に負けてしまったらしく、外は既に暗くなっていた。室内も同様である。
未だ朦朧とする意識の中、僕は昼の出来事を思い出していた。
喧嘩別れとはまた違う、それでも後味の悪い別れ方を彼女としてしまい、多少なりとも罪悪感が芽生えていた。
しかし思考の大半を埋め尽くすのは彼女との会話に関してだった。
僕は熊谷ゆりの美しさや可愛さに惹かれたわけでもなければ、プロポーションなどの見た目に心動かされたわけではない。彼女に指摘されたように整形に対して大きな嫌悪缶を抱いているわけでもない。
確かに初対面の熊谷ゆりを可愛いと思ったことは事実であり、容姿に魅力を全く感じなかったとは言えない。それでも僕をあそこまで惹きつけたのは熊谷ゆりと過ごした日々が積み重なったことによるものだ。
たとえ熊谷ゆりの可愛さが微塵もなくなり、彼女の美しさが覆い尽くそうとも、変わらぬ恋心、それこそ愛と言って問題ないものを向けることは容易であると確信していた。なぜなら彼女と過ごした日々が僕をそうさせるから。
でも今の僕は、彼女に愛を向けることができていない。
確信が崩れさってしまった。
ならば僕は整形をして偽りの美しさを手に入れた彼女を軽蔑しているのだろうか。そんな疑念が何度も浮かび上がる。
しかしその度に僕の想いに叩き潰されてしまう。
僕は熊谷ゆりを、牽いては彼女の熊谷ゆりと認識させんとする仕草や立ち振る舞いを愛していた。愛しく思っていた。だからこそ、そんな疑念は僕を悩ませる前に消え失せていた。
熊谷ゆり、彼女への愛の確信がある。それにも関わらず、僕は実際に彼女から向けられる愛を受け入れ、僕から愛を与えることができていない。だからこそ、僕が恋心を抱いていた過去の熊谷ゆりと、僕が愛を傾けつつある彼女と、熊谷ゆりと彼女を愛しているのにも関わらず彼女たちに対して愛を向けることができない矛盾した僕、それらの確信が崩れ、分からなくなっているのだろう。
何が分からなくなってしまったのか、ある程度の結論は導き出せたものの、心中の蟠りを解消することに大した進歩があるわけでもない。
昼食を抜いたことによる空腹を満たすため、立ち上がって台所へと向かう。しかし激しい空腹感とは裏腹に食欲は湧いてこなかった。
一先ず冷凍食品のおにぎりを温め、水と共に胃の中に入れる。それだけで十分だった。
ゴミを捨て、もう一度ソファに寝転ぶ。そのまま明日の朝まで寝てしまおうと考えていた。
しかし目をつむったところでインターホンが鳴り響く。その音を聞き、胸の鼓動が嫌に速まった。
ゆっくりと立ち上がり、なるべく時間をかけて玄関へと向かっていく。扉のすりガラス越しに彼女の姿を捉えることができた。
玄関のカギを開け、そしてチェーンロックをして扉を開ける。
「……蓮君、こんばんは。」
そこには彼女が俯きがちに立っていた。目元は僅かに赤く腫れており、泣きはらしていたことが推測できる。なぜ彼女が涙していたのか、僕には断定することができなかった。
「こんばんは……こんな夜更けにどうしたの?」
「……今日の朝のことを謝りに。それと、蓮君と話がしたいんだ。ダメ、かな?」
彼女の提案を特に断る理由もない。故に承諾した。
「全然いいよ。あ、でも父さんも母さんもいないけど、それでもいいなら……」
言外に二人きりになってしまうことを匂わせる。今日の朝の時点で今更かもしれないが。
案の定、彼女も僕の言葉を少しおかしく思った様子で小さく笑った。
「そんな、今更だよ? それに蓮君のお母さんとお父さんだけじゃなくて、この島には私と蓮君しかいないでしょ?」
「気づいてたのか。もうみんな本州に移り住んでて、僕だけ我儘で八月中だけ島にいさせてもらえることになったんだ。……驚いた?」
その問いに対して彼女は首を縦に振る。
「うん、驚いたよ。私と蓮君の二人だけなんだもん。まあでも、嬉しくもあった……かな。」
頬を僅かに赤く染めながら彼女は呟く。一切日に焼けていない肌はうっすらと桃色に染まっていた。
「あ、あの……蓮君? よかったら中に入れてくれない?」
沈黙に耐えきれなくなった彼女は僕に視線を向けながら徐に口を開く。
「ああ。どうぞ……」
一度扉を閉め、チェーンロックを外して彼女を招き入れる。そして僕たちはリビングへと向かっていった。
「一先ずそこの椅子にでも座って待っててくれ。何か飲み物持ってくるから。」
リビングの明かりを点けながら着席を促す。無言でそれに従った彼女をしり目に僕は台所へと足を運んだ。
グラスに氷をいくつか入れ、市販のお茶を注いでいく。今朝に受けたもてなしに対して大きく劣っていることは明らかだった。そのため僅かに罪悪感が芽生えるが、仕方ないと自身を納得させる。
「もてなしといっても本当に粗茶しか出せないけど、どうぞ。」
リビングへと戻り、向かい側に座っている彼女にグラスを差し出す。すると彼女は一言礼を言い、口をつけた。
「さて……まずは謝らせて。今朝は本当にごめんなさい。私が何も考えずに我を忘れて怒って……本当にごめん。ごめんなさい。」
グラスを両手で握りしめながら、彼女は頭を下げる。
その姿が僕にはとても痛々しく見えた。
「頭を上げてくれよ。僕も言いたいことだけ言ってあの場から逃げたし、お互いさまってことでダメかな?」
その言葉に彼女は肩をピクリと震わせると、ゆっくりと顔を上げて口を開いた。
「うん……うん。それで蓮君がいいなら、ありがとう。」
心底安心したような表情で、彼女は大きくため息をつく。
彼女の一挙手一投足全てが、僕の彼女に対する嫌悪感をそぎ落とし、恐ろしいほどの保護欲を掻き立てていた。
「あの、でも、もう一回聞いてもいいかな?」
すぐさま彼女の表情は不安で塗り固められる。誰がどう見ても彼女の精神状態は不安定そのものだった。
「……なんだ?」
「私って、やっぱり醜いのかな。蓮君の側にいられるような人間じゃないのかな。」
僕は何か反応することもなく、ただ彼女の言葉に耳を傾けていた。
「何をしても、どんなことをしても、理想の私が遠ざかっていくんだよ。怖いんだよ。私の顔を直視するのが、他人に顔を晒すのが、……このまま蓮君に見捨てられるのが。」
徐々に彼女の声の揺れは大きくなっていった。
「ねえ蓮君。私は、熊谷ゆりは、あなたと釣り合うだけの女性ですか?」
消え入るような声で彼女は問いかけてくる。しかしその小さな声とは裏腹にその問いは身体の奥底から滲み出た叫びのようにも聞こえた。
「釣り合うか? そんなこと――」
そこで僕は口を紡ぐ。僕と彼女が釣り合うか、僕と熊谷ゆりが釣り合うか、これはそんな問題ではなかった。
「…………今朝、整形が気に入らないかどうか、聞いてきたよな。」
先程の彼女の問いかけが僕の心に巣食う、靄のかかった蟠りを露わにしていた。
「気に入らない。整形も、整形をする人間も気に入らない。嫌いだよ。」
その言葉に彼女は目を見開く。半開きになった口は言葉を紡ごうと動いてはいるが、意味を成していなかった。
「君に会ってからずっと、ずっと悩んでた。君の仕草、態度、言葉、記憶、全部が熊谷ゆりだった。あのとき共有した楽しい時間を今も同じように共有できるような、そんな気がしてた。」
でも、と僕は続ける。叫びだしたくなることを必死に抑えながら。
「君は熊谷ゆりじゃない。熊谷ゆりは君みたいな完全無欠の美しさを振りまいてなんかいない。熊谷ゆりは口元から見える八重歯が魅力的で、主張の控えめな鼻がいじらしくて、丸めの顔が可愛らしくて、トロリとした目元が煽情的で、全てが、全てが愛おしいんだよ。今の君は熊谷ゆりじゃない。熊谷ゆりと同じ仕草、態度、言葉、記憶を持った全くの別人だ。その姿で……その姿で熊谷ゆりを語らないでくれ!」
気づけば感情に任せて言いたいことを吐露していた。それでも僕の心中に謝罪の二文字は浮かんでこない。
「やっぱり……やっぱり、そうだったんだ……」
目の前の彼女は特に驚いた様子もなく、何かを諦めたように小さく笑った。
「ごめんね……本当にごめんね。私が、熊谷ゆりを壊しちゃったんだよね…………」
彼女はそう言って自身の顔をゆっくりと撫でる。一つ一つ、顔を構成するパーツを確かめるように。
「醜いままで良かったのかなあ……でも醜いままは嫌だ……でも蓮君の側にいたかった……もう、もう戻せないのかなあ……」
彼女の白く細い指の間から彼女の双眸が覗く。辺りを見回しているようだった。そしてある一点に目をつける。
その視線の先にはペン立てが。そしてボールペンなどに紛れてカッターが入っていた。
「でも蓮君がダメっていうなら、それは醜いってことだよね……だったら、だったら変えないと。早くしないと。元が分からなくなっちゃう。」
徐に彼女は立ち上がり、覚束ない足取りでペン立てへと向かっていく。
昨日の彼女の話から、僕には彼女がこれから何をしようとしているのかが理解できた。
「やめろ。」
僕は彼女の行く手を阻むように立ちふさがる。
「どうして……?」
その言葉に対し、僕は無言で首を横に振った。
「……分かったよ。」
彼女の表情が悲しそうに歪んでいく。
「今日は帰るね。さようなら。」
茫然自失といった様子で彼女は僕の横を通り過ぎていく。その後ろ姿はとても寂しそうで、六年前の別れの際に熊谷ゆりが見せた姿と重なった。
故に自然と僕の口が言葉を紡ぐ。
「また明日。」
ピタリと一瞬、彼女は足を止めるが何か返事をするわけでもなく、そのまま去っていった。
一人取り残された僕は再度テーブルに着き、まだ口をつけていないお茶を飲み干す。気づけば乾いていた喉が潤っていくのが分かった。
彼女に言い放った言葉は全て僕の本心だった。故に僕は自分自身を何とも醜い心を持った人間なのだろうと毛嫌いせずにはいられなかった。
彼女は熊谷ゆりだ。仕草も態度も、言葉も記憶も。その全てが熊谷ゆりだった。
しかし顔が全く違っていた。成長によって大人びた、程度のものではない。それこそ誰かと頭部を入れ替えたのかと錯覚するほどに彼女の顔は変貌していた。彼女の顔には六年前の面影が全く見られなかった。
つまり僕は、彼女の顔に感じた違和感のみで彼女を突き放し、あまつさえ本物である彼女の仕草、言葉、態度、記憶の全てを否定したのだ。
六年前の熊谷ゆりとの記憶を鮮明に思い出し、その度に恋い焦がれ、そして愛を傾けられるという確信を得ていた。そんな積年の想いが再会後のほんの数秒で崩れ去っていたことに自分自身を嘲笑することもできない。
結局僕は熊谷ゆりそのものに恋心を抱いていたのではなく、熊谷ゆりという名を冠した少女に恋をしていたのだ。
あるいは『少女』なんてものではなく、熊谷ゆりの形をした『肉塊』への恋なのかもしれない。
少し子供っぽくて、無邪気で、六年前に出会って、一夏を共に過ごして、結婚の約束をした少女が熊谷ゆりではなく、口元から見える八重歯が魅力的で、主張の控えめな鼻がいじらしくて、丸めの顔が可愛らしくて、トロリとした目元が煽情的な少女が熊谷ゆりなのだ。
僕の中の熊谷ゆりとの数々の記憶は熊谷ゆりという少女の形を成していない。
熊谷ゆりという少女の顔だけが、僕にとっての熊谷ゆり全てだったのだ。
彼女の言葉をふと思い出す。曰く、理不尽な矛盾を整形に押し付けて自分の理不尽さを正当化しているという。彼らはあまりにも醜いのだという。
僕は彼女を内面で判断していない。なぜなら彼女の顔のみが僕の恋の対象だから。
でもいくら外面を良くしようとも、整形は嫌いだ。なぜなら彼女の顔を消し去ったから。
ならば整形で僕の想い描く顔を作ったら?
僕の想い描く彼女を、熊谷ゆりを作ったら?
……彼女は正しかったのだ。
なぜなら僕自身がその存在の証明に足りうるから。
再会してからの彼女の仕草、言葉、態度を思い出す。他愛ない会話から、彼女の僕に対する愛が強く伝わってくる。
僕に対して愛を傾ける彼女はどこまでも美しいのだ。
誰が最も醜い存在なのか、問わずとも明確だった。