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プロローグ
蒸し暑く、照り付ける日差しが鬱陶しい夏の日に僕は少しでも涼しい場所にたどり着こうと、昔ながらの平屋である祖父の家を飛び出し海岸へと向かった。水ならば冷たくて気持ちいいだろうと、日陰の全くない海岸へと飛び出したのだった。
海岸につき、海へと足をつける。やはり冷たい。しかし先ほどよりも激しく照り付ける太陽と差し引きした結果、快適さに大きな違いはなかった。
それでも海という普段住んでいる都会では見られない光景に興奮は隠せず、海水を蹴り上げながら砂浜を歩いていく。
と、そこで目の前に人影を捉えた。
とても珍しいことだった。
なぜならここは日本海に浮かぶ小さな島、居住者は片手で数えるほどの、若者が皆無の限界集落であったからだ。
だから僕は僅かに恐怖を覚える。視界に映るのは白いワンピースに麦わら帽子の、僕と同じくらいの背丈の少女だった。
僕が立ち止まると共に彼女が振り返る。
そして彼女はあどけない笑顔で口を開いたのだ。
「こんにちは!」