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妖精のことがら  作者: 岡池 銀
序章
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序章 その二

この前書き部分って何を書けばいいんでしょうね。

今回もあまり字数は多くないので、軽い気持ちで読んでいただけたら幸いです。

「うへぇ〜……間に合った〜……」

 机に突っ伏してうなだれる。

 美術の課題は無事に提出することができた。

「お前は本当に不器用だよな。時間ギリギリ、滑り込みセーフだなんて」

「も〜、不器用なのは知ってるよ! 不器用は不器用なりに真面目に、丁寧に、頑張ってるんだよ」

「だからって最後に焦って完成を優先して、テキトーしてたら意味ないだろ? だったら最初から、丁寧とテキトーを半々くらいにした方がいいんじゃないか?」

「それができたら僕は不器用なんて言われてないよ」

「ははっ、違いないな」

 

 さて、次はホームルームだったか。

 正直、ホームルームの時間って毎回違うことをしてるから、前回のことはかろうじて覚えていても、前々回のことはすっかり忘れてしまうのは僕だけだろうか。

 それに自分が発言しなくても、授業が進んでいくから、大抵は考え事の時間になってしまう。

 協調性がない、真面目にやれと言われたら言い返せないが性分だ。

 机に突っ伏して寝ていないだけマシだと言いたい。

 そういえば、僕は昔からこうだ。

 頼まれれば快諾するし、強制されれば仕方がないと腰を上げる。

 

 そうだった気がする。

 そうだったはず。

 ……本当に?


 実を言うと、僕は幼少期の記憶が曖昧だ。

 勉強した内容や、どんなイベントがあったかは、割とはっきり思い出せるのに、誰と遊んでいたとか、遊んでいる時に自分が何をしていたかが、あまり思い出せない。

 まるでモヤでもかかったいるみたいに。

 自分から積極的に行動したことや、印象深いことは思い出しやすいらしいので、多分、僕は昔からこうだったのだろう。

 ただ、引っかかるのは、僕にとって大事なことも忘れていることだ。

「それ」を思い出そうとすると、悲しくて、寂しくて、心が痛むような。

 逆に、穏やかで、落ち着いて、安心するような、複雑な感覚に襲われる。一体何なのだろうか。

 忘れている……

 思い出せない……

 大切なもの……

 

「おい、大丈夫か?」

 清が静かに話しかけてきた。

 ふと、自分の机に目をやると、そこには1枚のプリントが置いてあった。前の席から回ってきたのだろう。

「うん、大丈夫。平気だよ」

「そうは見えないけどな。涙が出てるぞ。しんどいなら先生に言って、保健室行ってこい。それもキツイなら俺が言おうか?」

 気遣いがあたたかい。やっぱり良い奴だ。

「大丈夫、心配してくれてありがとね。本当に大丈夫だから…」

「そうか。無理するなよ?気分悪くなったらすぐに言えよ?」

「うん、そうする」

 涙を拭いながら答える。

 

 さて、たまには真面目にホームルーム参加しようか。

 それで内容は……来月にある文化祭の出し物か。

 今は案を出し合っているところみたいだ。

 考え事しているときは気がつかなかったが、大分ざわついている。

 この喧騒を無視して考え事をしていたのか。

 黒板に目をやると、色々な案が綺麗な字で書かれていて、

 ・メイド喫茶

 ・コスプレ喫茶

 ・性別逆転喫茶

 ・お化け屋敷

 ・出店

 …いや、喫茶店多いな。そんなにお茶が入れたいなら茶道部に入ればいいんじゃなかろうか。

 って、ツッコミが的外れなことは僕でもわかる。

 共学だしね。可愛い子多いもんね。

 だから、メイド喫茶とコスプレ喫茶はわかるよ。

 でもちょっと待て。

 性別逆転喫茶の需要はどこにある?

 例えば、女の子なら男物の服を着ても似合うだろう。様になると思う。

 ボーイッシュって言葉もあるくらいだしね。

 逆はどうだ。男が女物の服を着るのは、なんかこう酷い絵面になるのではないだろうか。

 レディースを着るってだけではわかりにくいだろうから、恐らくはスカートが必須。そしてスカートから覗く逞しい男の脚。

 うっ、気分が……。

「大丈夫か? 少し顔が青くなってんぞ?」

「うん、ちょっと出し物の想像をしてたら気分が……」

「あー……。性別逆転喫茶な。まあ、多分需要はねぇし、悪ふざけみたいなもんだろうよ。俺もスカートとか履きたくねぇし」

 そうか、盲点だった。自分がスカートを履く可能性もあるのか。

「最終決定は投票式の多数決みたいだし、他のになるように祈っとこうぜ」

 祈るしかないのか。

 

「ちゅーもーく。今から投票用紙回すから、やりたいやつ一つ書いて前に持ってきて〜。二つ以上書いたら無効だからね〜。全員分集まったら開示するから〜」

 ざわついている教室でも聞こえるように委員長が叫ぶ。

 その後、前の席からノートの切れ端が回ってきた。覚悟を決めて書くしかない。

 淡い期待と不安を抱きながら、お化け屋敷に投票した。

「開示するね。メイド喫茶、性別逆転喫茶、性別逆転喫茶…」

 委員長が読み上げ、半ば空気と化していたもう一人の委員長、星野恵(ほしの めぐみ)が黒板に正の字を書き上げる。その結果は……

 ・メイド喫茶……八票

 ・コスプレ喫茶……五票

 ・性別逆転喫茶……二十五票

 ・お化け屋敷……一票

 ・出店……一票

 湧き上がる女子の歓声、男子からは落胆の声。一部の男子の声は歓声を上げていた気がしたが気のせいだろうか。

 ……えっと、うちのクラスの人数は四十人。

 男女比は一対一。つまり二十人ずつ。

 性別逆転喫茶の票は二十五人……。

 少なくとも五人は裏切ってるじゃないか!

 くっそ〜、こうなったら全力で可愛くなってやる!

 僕が腹を括っているうちに、メニュー、衣装の調達、資金等の話が進んでいた。

 そうして大体のことが決まったところで、六時間目終了のチャイムが鳴る。

お疲れ様でした。

この小説、タイトルが「妖精のことがら」なのに、妖精がさっぱり出てこないですね。精々、影くらいしかわかりません。次回は多分出ます。

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