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妖精のことがら  作者: 岡池 銀
序章
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序章 その一

初めて掲載する作品です。素人ですので、読みにくいこともあると思いますが、楽しんでいただければ幸いです。

 突然だけど、「妖精」と言えばどう言うイメージがあるだろうか。

 小さく、無邪気で、可愛らしく、不思議な力を使って悪戯をする。

 大体はこういうイメージだろう。

 僕もそう思っていた。

 今だってそう思いたい。

 だけど、今、僕の目の前にいる妖精達は、少なくとも悪戯なんて生易しいものとは無縁だった。

 

 僕は秋野紅太(あきの こうた)。どこにでもいる普通の高校一年生。と、自分では思ってるんだけど周りの評価はどうやら違うらしい。

「紅太よ〜。いつまでお前は妖精なんて信じてるんだ?あ、そう言えばサンタも信じてたっけ?」

 こいつは僕の同級生で、中学からの腐れ縁の川澄清(かわすみ きよし)

 頭も良いし顔も良いのに、目つきの悪さとトゲのある言い方が原因で友達は少ない。後、知ってる限り恋人もいない。

「失敬な。中学卒業まで、ついにその姿を見ることがなかったからね。サンタさんはもう卒業したよ。僕ももう高校生、子供じゃないんだ」

 やれやれ、と首を振る清。

「その言い方じゃ妖精は見たから信じるってことだろ?」

「その通り、妖精はいるとも。なんせこの目で見たからね。僕は……」

「見えないものは信じないけど、見えているなら絶対に信じる、でしょ?」

 僕が言い切る前に言葉を被せてきたのは、学級委員長の天海太陽(あまみ たいよう)

 人に優しく、自分に厳しくって言葉を体現したような人だ。

 人当たりが良く、博識、且つ勤勉で、運動もできる。おまけにイケメン。

 神は二物も三物も与えてしまったらしい。

 清に絡んでくる数少ない人でもある。

「そうそう。それに欠片でも見える可能性があるなら僕は信じるよ。今まで見えてなかったとしてもね」

「それだよ、紅太。その考え方が危なっかしくて見てられねぇんだ。いつか誰かに騙されて痛い目見るぞ?目に見えるものだけって言うならともかく、見えてもいないもんを信じようとすんな」

 清が僕を指差しながら言う。

 口調はキツイけどやっぱり良いやつだ。

「何にやけてんだよ気持ち悪い」

「いや、やっぱり清は良いやつだなぁ、って」

「うるせぇ!さっさと弁当食べちまえ。昼休み終わっちまうぞ。しかも次、移動教室じゃねぇか。遅れたら怒られんぞ」

 赤くなってる。可愛いやつめ。

「はははっ。遅れないことも大事だけど、授業の準備を忘れないようにね。橘先生は忘れ物一個で遅刻一回分評価が下がるらしいから。結構重いよ?」

「汚いな!それが大人のやり方か!」

「これが社会さ、世間は冷たい、ってことだよ?清」

「綴ってねぇし、勝手に続けてんな!それに全然上手くねぇよ、バカ!」

「ひどい!即興で考えた割に上手くできたと思ってたのに!」

「ぷいっ!」

 そっぽ向いておかずを頬張る清。

「じゃあ、僕は先に行ってるよ」

 と、言って委員長は行ってしまった。

「ふぅ。ごちそうさまでした。早く食べないと置いていくぞ」

「あ、待ってよ!」

 先に食べ終わった清が、授業の準備を始めている。

 僕はお弁当の残りをかきこんで、それをお茶で流した。

「ごちそうさまでした。すぐ行くからもうちょっとだけ待ってて?」

「しょうがねぇな〜。十、九、八……」

「カウントダウンで急かさないでよ、イジワル清!」

 手早く準備を済ませて清の元に走る。と、その時。

「ひゃっ……」

 一瞬、冷たい風が吹いて、全身に鳥肌が立った。あたりを見回しても、特に変な様子はない。

「気のせいかな……」

 この教室にエアコンはないし多分気のせいだろう。それか悪戯でもされたのか?

「おーい。本当に行っちゃうぞ〜」

「あ、待っててば!」

 

 一体いつ以来だろうか、これを感じたのは。

 僕には妖精が見える。

 いや、正確には見えていた。

 今はさっぱり見えなくなっている。幼い時には確かに見えていた。はっきりと覚えているわけではないが、いっぱいいた。

 漂うようであったり、這うようであったり。こちらから話しかけたりはしなかったし、あちらから話しかけられることもなかった。

 見た目は普通の人間と大差なかったが、直感であれは妖精なのだとわかった。

 幽霊とか心霊現象の正体は妖精達だ。

 幽霊を見えるって人は、実は妖精が見えるだけであり、心霊現象にあうのも妖精の悪戯が原因だ。

 さっきの冷たい風も多分そうだ。吹くはずがない風を感じることが何度かある。

 閉め切った部屋で、冬でもないのに、凍えそうなくらい冷たい風が吹く。

「…い、…ーい、おーい!」

「わっ、びっくりした!どうしたの?」

 気が付いたら廊下をあるいていた。

「考え事しながら歩くと転ぶぞ、ちゃんと前向いて歩け」

「ん、ありがと」

 わからないことを考えていたって、しょうがない。今すべきことは次の美術で提出する作品を完成させて、単位を落とさないようにすることだ。

 

 しかし、長い間胸に引っかかる疑念は簡単には取り除けない。

  

 多分、僕には妖精が憑いている。

お疲れ様でした。

これからも、「妖精のことがら」をよろしくお願い致します。

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