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ゼノグラフト動物園  作者: 竹内伊織
5/9

周到なる敵襲

組み合わせ。

新谷六玖と横川念(ホワイトタイガー)

雨森乃葵と城咲朱音(ホッキョクグマ)

上坂英美と剣侍一将(ライオン)

根川完塔と見川るい(ゾウ)

小早川寧々と陸谷健二(シマウマ)

椎木源次郎(コアラ)尾園美樹(キリン)

遠藤登(ペンギン)

 

 円陣を組み、気合いを入れた。

 そして、アンダーズを檻から解放するためにそれぞれ散らばった。


 作戦が開始された。

 新谷は、横川(ホワイトタイガー)を解放し、中央通りへ向かった。


 みんなが揃った。

 キリンの上にコアラが乗る不思議な騎馬があったが椎木さんに突っ込める人なんていないので全員笑いをこらえていた。



 いきなり、動物が檻に放たれたことから周囲もざわついている。


「よーし。突っ込むぞ。」


「おー。」


 そして、剣侍(ライオン)を先頭に突っ込んだ。


 剣侍(ライオン)を先頭に置いたのは客の恐怖心を煽り、中央道路を開けてもらうためだ。


「ここまでは、予定通り。」


 椎木は、そう思った。


 そして、猟銃を持った兵隊が足を檻の柵にまたぐようにしてこちらに銃口を向けている。


「突っ込めー。」


 椎木の合図で中央道路から出口へ向かった。


 すると、どんどんと兵隊が集まってきてこちらに、発砲する。


「奇襲なのに、この兵力。やはりスパイがこのチームに紛れ込んでいる。」


 新谷は、作戦に遅れを取らない範囲でバレないようにスパイを探すことにした。


 左右にいた兵隊たちは、中央道路の両脇に寄った客が邪魔だと感じ、客に発砲し始めた。


 次々と射殺される、残酷な光景を見て助けに行きたくなるが、雨森先輩のことを考え先へ進むことをやめなかった。


「ごめんみんな。あとで墓は立ててやるからちょっとの間耐えてくれ。」


 そう言い放ち、新谷は先へ進んだ。


 すると、今度は自動照準のライフルのようなものがこちらを待ち構えている。


「ダダダダダダダダダダダダダダ」


「これでは、誰かに命中する。どうしますか?」と剣侍(ライオン)が言うと


「構わん。経験豊富な雨森と新谷の周りを固めつつ先へ進め。誰か一人でも脱獄できればこの悪夢は終わるのだ。」と椎木は答えた。


 新谷は、この計画を雨森先輩から聞いた時からこの何の策もない正面突破作戦を疑問に思っていた。


 そして、雨森先輩は前回の脱獄計画で親族が巻き込まれている。


 つまり、こんな作戦雨森先輩ならしない。


 てことは、アンダーズリーダーの椎木さんが考えた作戦だ。



 そして、新谷はもし椎木さんが敵だったらと考えてることにした。


「椎木さんは、始めに僕を閉じ込めてこの動物園の実態を知らせた。


 僕に脱獄という考えを生み出させた恩人である。


 そして、椎木自身が動物になってしまっている。


 そもそも椎木さんがスパイなら俺たちはなぜ1回目殺されなかったのか。


 椎木さんがスパイな訳ないか。


 んー、考えてもわからない。 


 とりあえず従おう。」


 やがて、雨森と新谷の周りを固める飼育員とアンダーズが撃たれ始めた。


 大量に血が流れる。


「ババババババババババババババ」



 そして、小早川の乗るシマウマは、足を撃たれ動けなくなり、自身も重傷となった。


 また、ゾウに乗っていた根川も的が大きくついに倒れてしまった。


 残りは3人。


 そして、以前同様偽物の柵が目の前に表れた。

 すると、椎木は立ち止まり作戦を言った。


「この壁沿いを走って注意深く見て本物の出口を見つけろ。」


「はい。」


 みんなは道沿いを二手に分かれて進んだ。


 椎木と新谷は右側へ、雨森と上坂は左側へ向かった。


 すると、左側を進んでいく雨森たちの前に、大量の兵隊が待ち構えていた。


 雨森が「私たちの方向はハズレね。」と言うと


「確かに。でもなんとか時間を稼ごう。」と上坂は答えた。


 すると、兵隊の奥からスーツの男が出てきた。


「おっ!雨森飼育員と上坂飼育員じゃないか。


 ダメじゃない。

 ちゃんと仕事しなきゃ。」


「あの人誰?」

 上坂はあったことがなかった。


「おっと、上坂ちゃんに会うのは初めてかな。


 僕の名前は越黒流然。


 ここの動物園の園長をやらせてもらってるよ。」


「へー、あんたがここの園長ね。


 こんな変な動物ばっか集めて悪趣味ね。」


「悪趣味?褒め言葉だね。


 君にはこの動物園について語りたいものだが、あいにく時間がなくてね。

 本題に移らせてもらうよ。」


「君たちには、二つの選択肢がある。


 1つはここで降参を宣言してもらって飼育員として職場に戻ってもらいたい。


 ただし、今海外に動物園を建設中でね。

 そこの動物園の飼育員として参加してもらいたいから職場は海外なるんだけどね。


 そして2つ目は、ここで大人しく死んでもらうことなんだがどっちを選ぶかな。」


 2人はどちらも選ばないでおこうとしていた。

 しかし、そんなことは鹿和平にはわかっていた。


 すると、越黒は、揺さぶりをかけた。


「ねぇ、上坂ちゃんて子供いるよね。

 可愛い可愛い女の子が。

 名前は、確か根川愛ちゃんだったっけ。」


「まさか。」


「そう。持ってきたよ。」


 そう言い越黒が横にずれると後ろに子供を持った兵隊が立っていた。


「その子はこの戦いには関係ないはずよ。」と上坂が叫ぶと越黒は


「確かに。

 でも、未来の危険因子なんだよね。

 改造してあげなくちゃ。」

 と返した。


 上坂は

「殺す。」

 と呟いた。


 しかし、越黒は動揺を誘う。


「いや待て。

 お前はまだ何も失っていない。

 お前の夫もまだ生きている。」


「え、根川は打たれて死んだはずじゃ。」


「でも、まだ息してるよ。」


 揺れる上坂。ついに、脱獄組にとって良くない方に振れる。


「わかったわ。

 私は前者の方を選び、飼育員として生活するわ。

 その代わり夫と子供の命は保障して。」


「ああ、もちろん。」


 上坂は、脱獄組を裏切った。


「上坂あんた私たちを裏切るの?」


 と雨森が言うと上坂は


「仕方ないじゃない。私たちはここで死にたくないの。」


 と返した。


「私は、ここから逃げる。じゃね。」


 雨森は、越黒から提供された提案には乗らず一旦この場から逃げることを選択した。


 雨森は斜め後ろに方向転換し木々に隠れるようにして逃げようとした。


 しかし、そんな簡単に逃げれるわけがない。


 雨森は腕、肩、腰、足全て撃たれて倒れ込んだ。


 乗っていた城咲朱音(ホッキョクグマ)も重傷だ。


「トドメさしますか?」


 兵隊がそう言うと


「やめておけ。どうせこいつはこんな木々に隠れたことで誰にも見つからず助けも来ん。


 ゆっくり寝させてあげよう。」


 と越黒は言い、また兵隊にこう告げた。


「それより、もう一方に逃げた方へ向かうぞ。」


 兵隊長が部下に命令を下す。


「これより、右側方向へ行った逃亡犯を捉えるグループと上坂を船まで案内するグループに分ける。

 さあ取りかかれ。」


 ―――――――――――――――――――――


 一方右側進行グループでは、先を進みながら敵に遭遇することもなく、捜索を行なっていた。


 新谷は出口を探しながら、こう考えた。


「もし、椎木さんが敵なら今回の作戦は大崩れだ。


 しかし、もし味方なら作戦はともかくこんなに心強いものはない。」


 僕は、覚悟を決めて聞いてみた。


「椎木さんってスパイですよね。」


 すると、椎木さん以外のアンダーズがピクッとなるのを感じた。


 しかし、椎木は冷静に


「どうしてだ?

 俺の作戦が間違っているか?」


 と言った。


「いや、そうじゃないんですけど僕は、このチームにスパイがいると思ってるんです。」


「聞かせてくれるか?」


「はい。」


 そう言って新谷は、椎木に話し始めた。


「前回と今回奇襲にもかかわらず相手の準備が整いすぎている。


 私たちを追い込む具体的作戦まで決められていて、こんなことは我々の作戦を事前に知っていなければ不可能だと思われる。」


「それで、私がスパイだと。」


「いや、まだ決定的な証拠は得ていない。


 ただ、我々脱獄グループ内中枢にいると考えている。


 でも、最初に質問した時にわかりました。


 椎木さん。いや、アンダーズのみんな。


 あなたらは、我々飼育員に隠していることがある。」


「こんな大事な時に、何をふざけたことを」


 と新谷の考えを周りが遮ろうとしたが、新谷は話を続ける。


「それと、なぜ椎木さんは、1回目に脱獄作戦を実行した時、柵に触れていないのに偽の物の扉とわかったのかも聞きたい。」


 新谷が話に対して、椎木さんの態度は一切変わっていないが、他のメンバーが明らかに動揺している。


 特に、新谷が乗せてもらっていた横川念(ホワイトタイガー)の振動は私の体まで伝わってきている。


 椎木さんは、しばらく沈黙のうちに話し始めた。


「君の想像通りだよ。


 僕らアンダーズは全員スパイだ。


 作戦も事前に敵側に渡してある。


 あと、10分くらいしたら敵もここに到着する予定だ。」


「なんでそんなことするんだ。」


 新谷は、始めて椎木さんに礼儀のない言葉を使った。


「新谷くん。ここまでたどり着いているなら全て話そう。」


 椎木は新谷に話し始めた。



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