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ゼノグラフト動物園  作者: 竹内伊織
3/9

平和な世界とは

 朝。

 雨森先輩が地下にきた。


「雨森さーん。おはようございます。」


「あっ新谷君。朝早くから偉いねー。」


「いやいや、ラクダが可愛くてつい早く来ちゃいました。」


 新谷は、先輩にアンダーズとの関わりを隠した。



 新谷は地上に生還した。

 そして、目的に取り掛かった。


 まず、地下動物園の事務所以外の入り口を探すことが大事だ。

 地下にいるラクダを上げるために絶対地上からの大きめの入り口があるはず。


 30分後新谷は、見つけた。

 それは、立ち入り禁止場所の奥にあった。


 新谷は、そこから人も入って来ているのだと認識した。


 とりあえずアンダーズの生活は確保できた。


「あとは、逃げ場だ。」


 新谷は、動物園内の寮に住んでいるので考えたことがなかったため先輩に聞くこととした。


 しかし、先輩も外に出ようとしたことがあったが出られなかったらしい。


 この動物園は、動物の脱走や客の不法行為を監視するためそこら中に監視カメラが敷かれている。

 動物が仮に檻から出るとすぐに射殺される仕組みとなっている。 


 そして、飼育員がいなくなると動物が暴れ出す危険性があるため飼育員も監視対象となっている。


「飼育員も飼育されているということか。」


 とりあえず新谷は飼育員としての活動を始めた。

 先輩は、ラクダを取りに行き、新谷は餌の準備をしていた。

 すると、向こうの方から警報がなった。


 あちこちから響き渡る警報。


 兵隊が猟銃を持って一方へ走っていく。新谷は、檻から出てついて行った。


 どうやらカバが外に逃げたらしい。

 一匹に対して集まった兵隊は20人。


 カバは直ぐに射殺された。


「これは、気をつけなければ。」


 カバを片付けるのを手伝っていると、カバにも手術痕があることがわかった。

 新谷は、片付けを終え元の配置に戻ると先輩は、ラクダを連れてきていた。


 開演だ。

 沢山の人が入ってくる。


 客の新鮮な反応は私の始めてきた時を思い出させる。


 あの時、ここにきてよかったのかと。


 新谷は、先輩と昼食をとった。

 すると、先輩が新谷に言った。


「新谷君、最近なんかあった?」


 新谷は先輩に全てを話すことに決めた。

 ただこれは、話して先輩の反応を見るためでもあった。


「実は、昨日地下に閉じ込められている時に気付いちゃったんだ。

 この動物園の真実に。」


 雨森は、やはりなというそぶりを見せた。


 雨森には、今朝新谷が地下にいた事を早起きしてきたなどとは最初から思っていなかったようだ。


 雨森は協力を約束してくれた。

 僕が計画した作戦を話しながら作業を進めた。


 日中は、いつもと変わらない作業を行なった。

 この日、カバ以外が脱走することはなかった。


 閉園になった。

 いよいよ作戦が始まる。

 新谷は、先輩と立ち入り禁止区域から地下に向かった。

 広い道を下り地下に着き、しばらく歩いて明かりのある方へ向かった。


 すると、前方に動物園の看板を見つけた。

 30メートル先、動物園ありと書かれていた。


 しかし、30メートル進んだがそこには動物しかいない。


「どこだ人間がいるところは。」と新谷が言った。


 雨森も動揺しつつ答えた。


「ここよ。この檻にいたはずよ。」


 新谷は色々と理解しがたかった。

 それは、雨森も同様だ。


「何かが起こっている。

 もしかして、、、、」


 新谷たちは奥の方で医者たちとおそらく偉いであろう人が何が喋っていることが聞こえてきた。


「大成功ですね。

 ああ、6年間の成果がやっと花開いたよ。」


 新谷は、人間が収容されていた檻に近づき餌を置いた。

 すると、中にいた一匹のコアラが近づいてきた。

 新谷がそこに目を向けると、コアラは言った。


「前を向け!俺らの魂は無事だ。

 この負の連鎖を繰り返さないためにお前にできることをしろ。」


 見た目はコアラだが中身は完全に椎木さんだった。

 新谷は、予想が当たったことに現実逃避したくなった。


 昨日まで収容されていた人間が動物に変わっている。そして、近くに医者がいる。 そういうことだろうと。


 新谷は、椎木さんからこれまであったことを全て聞いた。つまりはこういうことだ。


「この地下では動物の体の中に人間の臓器を埋め込む実験が日々行われていた。

 そして、初めて感情を持ったままの臓器移植に成功した。

 なので外から見ればただの動物にしか見えない。


 地上にいる動物も同様だが、奴らは感情は持っていない。

 この手術に成功したことでこれから喋る動物としてさらに客足を伸ばす算段だ。


 お前は俺らのことは気にせず逃げろ。」


 新谷は話を聞いた後、医者の方に向かって歩き出した。

 そして目の前で言い放った。


「あんたらのしていることは間違っている。最低だ。」


 すると、黒スーツを着た男が言った。


「俺の名前は越黒流然。


 ここの動物園の園長をやっているものだ。


 君も動物になりたいかい。」


 新谷は黙ってしまった。


 これが現実だ。

 中身は同じ人間なはずなのに外見で判断してしまっている。


 黒スーツと医者は私たちを置いて地上に戻っていった。

 新谷は彼らを許さなかった。

 新谷は、檻にいる動物を集めてこう言い放った。


「明日、みんなで動物園を脱獄しよう。

 そして、この動物園の園長を追放し元の生活を取り戻す。」


 新谷と先輩は、寮で就寝を取り、翌朝通常通りの業務をこなした。

 これは、動物園側にストライキがバレないように普段を装う必要があるからだ。


 10時雨天決行。

 30分前、土曜日ということもあり今日は観光客が多い。


 何も知らない人を巻き込んでいいのかと考えたが、作戦の確実な成功のためには必要だ。


 5分前、我々は立ち入り禁止区域にすぐ入れる場所への配置に動いた。


 3分前、地下に行きアンダーズを檻から解放した。


 30秒前。

 ぞろぞろと立ち入り禁止区域柵の後ろから動物が上がってくるのがわかる。


 5.4.3.2.1.始めーーーーー。


 アンダーズは、立ち入り禁止区域から飛び出し僕らの前に並んだ。

 作戦開始だ。


 新谷と先輩と椎木(コアラ)を動物の上に乗せ、周りをアンダーズが囲うような陣形を取り中央突破を狙った。


 ここは、道幅も広い。

 突っ込んだ。


 すると、中央道路両側方より猟銃を構えた兵が銃弾を発砲し殲滅を狙う。

 我々も死者3名を出しながら椎木の指示に従い出口へ向かう。


 ただ、動物を見に来た客も大勢巻き込まれている。

 椎木(コアラ)はキリンの上にしがみつき、出口が見えて来たと伝える。

 新谷は、この時点ではこの動物園の構造を理解していなかった。


 出口まで来た。

 ここまでは、5人の犠牲で済んでいる。

 そのまま柵を壊す勢いで突っ走っていたが先頭を走る剣侍(ライオン)が急に立ち止まった。

 そしてこう叫んだ。


「ここは出口ではない!とにかく逃げろ!」


 意味がわからなかった。

 そして、それは新谷だけでなくみんな剣侍が血迷ったのだと思っていた。

 しかし新谷は、その柵に触れて気付いた。

 

 この柵は、映像技術で本物のように見せた偽物だと。


 そして、なにより後ろを振り返ると猟銃を持った兵がさっきよりも増えている。


 はめられたんだ。


 全てバレていた。


 作戦決行日もすべて。


 猟銃を向けられ新谷たちは死を覚悟していた。

 兵隊長の「始め!」の声と同時に銃弾が新谷たちの両足に命中した。


 2.3歩死の世界に歩いた後、新谷たちは心臓の鼓動が収まっていないことに気がついた。


「僕らは、なぜ生きているのか。」


 すると、兵隊長の後ろから黒いスーツの越黒流然が現れて言った。


「君たちに見てもらいたいものがある。」



 すると我々の眼の前にいた兵隊が我々と逆の方向を向き、一般市民を虐殺し始めた。

 大人子供関係なく全員殺された。


 僕は、大声で「やめろーっ」と叫んだ。

 

 しかし、虐殺は止まらない。

 そして、檻にいたはずの動物たちがいないことにも気がついた。

 なるほど、我々の中にスパイが紛れ込んでいたのか。

 全て殺された後越黒は、言った。


「動物園の本性を知ったものは全員殺す。


 お前らのせいだよ。


 もう、脱獄しようなど考えないことだな。」


 こんなに胸が痛むなら、いっそ殺して欲しかった。


 もう、僕らの身勝手で関係ない人間が死ぬのは嫌だ。


 もう諦めよう。


「よーし、こいつら動物を一旦地下に入れろ。」


 アンダーズは、地下動物園に入れられた後、僕と先輩は飼育員として元の場所に配置された。


 そして、数日後アンダーズは、1匹、1匹地上にデビューしていった。


 普通の動物として。



 もう、アンダーズのメンバーもバラバラになった。

 そして、新谷は今まで特に関わりのなかった他の飼育員たちとも関わりを持ち始めた。


 そこで、3人の友達もできた。

 上坂英美、根川完塔、小早川寧々。

 5人の飼育員は、仲良く飼育員ライフを過ごしていた。


 そして、上坂と根川は、付き合っており、新谷も先輩に一方的に恋していた。


 偽りの平和の中で幸せに生きていた。



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