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私、酸素拾います!  作者: メケ
ジェシカの章 その4
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第五話 非難轟々

「警告。自爆スイッチが起動しました」

 シェルターが大きく振動し、機械音声が私たちに一刻の猶予もないことを知らせてくれる。


「博士、自爆装置ってありましたっけ?」

「記憶にないな。ある程度の爆発や地震が起きても大丈夫なように頑丈に作られているはずだ。このシェルターを壊す威力があるかは疑わしい」

「爆発するまで、あと十二時間です」

 機械音声が私たちに残された時間を宣告してきた。


「ジェシカ。十二時間だとよ。この前発掘された「エイリアン2」と比べたらピクニックして昼寝しても余るくらいの時間だな」

「あの映画は面白かったですよね。確かに比べれば自爆するまでの時間が長いですね。ですが多いに越したことはありません。帰りましょう」

 私たちは来た道を戻りながら地上へ向かい始めた。


 迎え撃つは吉田博士と彼の改造した元人間たちだ。周囲の風景と完全に同化する擬態能力と、強力な筋肉を持つ現代版のフランケンシュタインである彼との決着は近い。


 廊下を進んでいくと、博士が銃を発射し始めた。

「ゴリラだ」

「博士、どうやって敵の姿を確認してるんだ?」

 サイモンは率直に質問をぶつけている。


「赤外線さ。温度で目に見えない存在が見える。暗闇の中でもしっかり見える」

「さすがだ博士。準備が良いな」

 サイモンと同じように私は感心してしまった。


「後方撃てぇ!」

 ラッシュフォード博士の指示で私は銃弾をばらまいた。

 姿は見えない。だが、博士の指示に、そこまで広くない廊下、床に撒かれた水という環境で敵の所在は手に取るように分かる。

 私たちは敵を蹴散らしながら廊下を突き進んだ。

 銃弾は人間が作り出した最高の兵器だ。

 銃の偉大さを何度も痛感しながら私たちはどうにか階段までたどり着いた。


「ルルルカちゃん、マガジンをちょうだい」

「はい」

 ルルルカちゃんからマガジンを二つ貰って、一つを装填した。

 私たちは階段を上って外部連絡室のある三階にたどり着いた。


 私たちは、外部連絡室のある三階の廊下を注意深く歩いていると、

「妙だな。奴がいないぞ」

 ラッシュフォード博士が何か異変を感じ取ったようだ。妙にピリピリしている。

「妙って、何がですか?」

「吉田博士がいない。待ち伏せていると思ったんだが」

 むしろ居なくていいはずなのだが、何かを気にしている。


「自爆装置を起動したから退避したのではないですか」

 ルルルカちゃんは、冷静に博士に質問をした。


 確かに吉田博士たちがこの施設を爆破させるつもりならこの施設とともに運命をともにするつもりはないだろう。そもそも何で自爆装置なんて起動させたのか不可解だ。自分の住処を破壊するのは腑に落ちないうえに、その長すぎる時間も何か引っかかりを覚える。あえて偽の情報を私たちに提供して、早く施設から追い出そうとしているのだろうか。私たちとしては目的を果たせた以上、長居は無用だ。


「とりあえずさっさと逃げちまおう。この異様に長い爆破予告でさえブラフかもしれねえ。本当はもっと短かったりしてな」

「サイモンくん、良い読みだ。その可能性も否定できないから、やはり迅速にだな」

 サイモンとラッシュフォード博士が通信を取り合って、次の手を模索しながら外部連絡室に向かっている。

 いざとなればサイモンは隊長として真価を発揮することが出来るのかもしれない。

 惜しむらくはそれが死んだ訓練生の前で活かせなかったことだろう。


 サイモンの発言にみんなは気を引き締めたようで、私たちは寄り道をせずに外部連絡室に向かって進んだ。


「みんな、ちょっと待ってくれ。山田に連絡する」

 サイモンは立ち止まって、通信を始めた。


「山田、おい、応答しろ」

「……」

 サイモンは山田に連絡を取っているようだ。

「おい、お前の山田隊長が出ねえぞ」

 サイモンは敵対シェルターの少女に語りかけているが、少女は眠って反応がない。


「仕方ねえ。こいつは俺たちのシェルターに連れて行く」

「サイモンさん、その子は敵対シェルターの人間ですよ」

 敵対シェルターの人間を連れて帰るのは、危険すぎる。

 下手をしたらスパイ候補を中に招き入れるようなものだ。仲間が殺されるかもしれない。


「文句あんのか。奴隷ちゃんのついでだ」

「捕虜になって酷い扱いを受けるかもしれません」

「この子に死ねというのか。あんな化け物がいるんだぞ。捕虜なんて問題は大丈夫だ。天下無双のジェシカ大佐補佐がなんとかしてくれる」

「んなっ!」

 この人、私にまた無理難題を押しつけてくる気だ。

 言っておくが大佐補佐の肩書きは、そこまで強いものじゃない。


「ジェシカくん、外部行動員層に連れて行けば良いだろう。あの場所に連れて行けば問題ない。最悪、面倒を見ると言えば女性だし許してくれるはずだ。もちろん慰み者にならないようにサイモンくんがしっかり面倒を見るんだよ。いざとなったら僕からも大佐に伝えておくから」

「ジェシカお姉ちゃん。この人だけ置いていくのは可哀想だよ。私は助けてその人はダメなの? 死んじゃうよ」

 非難轟々の嵐に私はルルルカちゃんに視線を移した


 ルルルカちゃんは視線を逸らして、私と目を合わせようとしない。

「ルルルカちゃんはどう思う?」

 ルルルカちゃんは私から声を掛けられて体をびくりと震わせた。

 賛同してもらうために、私はルルルカちゃんをじっと見つめた。


 私の視線に気付いたのか、ルルルカちゃんはバツが悪そうに顔を上げ始める。

 そして口を一文字にして、私を見つめ返してきた。


「ジェシカ大佐補佐、今から戻ってこの子を山田さんたちの下に返すのは危険です。一人で取り残すのはなおさら危険です。ですが、階級から言えばジェシカ大佐補佐の指示に従います」 お、ルルルカちゃんが私に賛同してくれるようだ。

「ですので……」

「ん?」

「もし彼女を置いていくのであれば、彼女は苦しい時間を過ごすことになるでしょう。ならば私がこの場で首をたたき切って楽にさせるのが情だと思います。さあ、ご指示を」

 ルルルカちゃんは冷たい瞳で私を見つめていた。


 彼女は自分の手を汚すと言ったが、頼んだ瞬間に私がたたっ切られる可能性もある。

 それくらいにルルルカちゃんは怖い顔をしていた。


「連れて行きましょう。命は大事ですからね」

 私がそう言うとその場の雰囲気が和やかになった。


「ありがとな、ジェシカ。俺はもう人が死ぬのは見たくねえ。救えたはずの命を救えなくなるのは嫌なんだ」

 私はサイモンに肩を叩かれた。


 この子を救うと言ったサイモンはそれなりに自分の天秤に掛けて下した発言なのだろう。

 私は何も言えなくなった。

 見捨てたらこの子は死ぬし、連れて帰ったら私たちのシェルターに被害が及ぶかもしれない。


 色々考えたけど、サイモンにはチーム・アポカリプスで参謀さんを失ったり、勇気隊長が下半身不随になったり、その後、育てていた訓練生が多数死んだりと悪い事ばかり起きていた。

 きっと精神的に参っているのかもしれない。

 だからこそサイモンはこのような判断を下したのだろう。


「さ、みんな。行くよ」

 ラッシュフォード博士が警戒しながら先に外部連絡室に入室した。

「クリア!」

 博士の合図が聞こえた。

 敵はいないようだ。


 私たちも博士に続いて入室した。

ごめんなさい。

今日はあんこ練ってたので遅くなりました。

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