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私、酸素拾います!  作者: メケ
サイモンの章・その4
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第九話 稀土玉

 たどり着いた薬品製造部には既に他のサバイバルウェアを着た人間が薬品をあさっていた。


「山田隊長、お疲れ様です。その人たちは?」

「ああ、さっき出会った奴らだ」

「えぇ……」

 山田の部下だろうか。どうした事か歯切れが悪い。


「サイモンだ、よろしくな。こっちはジェシカで、訓練生のルルルカ、そしてメカニック担当のラッシュフォード博士だ。俺たちは三十七番シェルターから来た。リモハノールと女の子を探してる」

「三十七番? 山田隊長、なに考えてんですか。そいつら敵ですよ!」

「そうだね」

「え?」

 こいつら俺たちを敵だと言ったのか?


 山田の部下は俺たちに銃口を向けてきた。

「撃つんじゃない。敵って何の話だ」

 俺は山田たちに説明を求めた。このまま殺されるくらいなら、交渉をした方が良い。


「あ、みんな。銃は下ろしてくれ」

 山田は部下たちに銃を下ろすように促している。

「悪いねサイモン。君たちはきっと何も知らされてないだろ?」

 山田は俺たちに哀れむ視線を向けてきた。


「ちょっと待ってくれよ山田隊長。こいつらは三十七番シェルターの奴らだろ。生かしておけねえ」

 山田たちの部隊員の一人がかなり殺気立っている。

「なあ、ギョク。家族を失った気持ちは分かる。だがこいつらは三十七番シェルターの内情を彼らはペラペラ喋ってくれたよ。おそらく一度も外に出た事が無い子供みたいなもんだ。無害そうだから協力し合うべきだと思ったんだ。このシェルターにはゴリラとタコの化け物が居るらしい」

「ゴリラ……あぁ、映像で見たことがある。人間に近い動物だろ? 銃で一発だ。こいつらの力は借りねえ。お前の姉さんはこいつらに殺されたんだぞ」

「ギョク、俺たちのミッションは消息を絶った先遣隊の捜索だ。戦争をしに来たんじゃない。こいつらは武装した一般人だ。俺たちの敵じゃない」

「分かったよ。だが一般人と一緒に仕事をするつもりはない。アマチュアだ。なあそうだろ?」

 ギョクは周囲の隊員たちを見渡すと、同意するように彼らは頷いている。


 山田は裸の王様なのか、あまり支持されていないようだ。

「言っておくが、薬はやらないぞ。残念だがこれは俺たちが先に見つけた物だ」

 ギョクは一歩も譲らないようだ。

 困った事態になった。

 力尽くで奪いたくなるが、ここで無駄な戦闘行為をするべきじゃない。

 向こうの戦力が分からない以上、数の少ない俺たちが戦闘行為を行うべきではない。


「ギョク、この人たちも困ってこのシェルターに来たんだ。少しくらい分けてやらないか」

 山田はギョクを説得している。

「俺たちのシェルターにだって困っている人がたくさん居るんだ」

「ここで敵対する意味はない。先遣隊との連絡が取れていないんだ。熟練も何人か居るのにだぞ。ここは協力した方が良い」

「ちっ」

 ギョクは渋々といった様子で、鞄から褐色の瓶を一つ取り出した。


「リモハノールだ。ほらよ」

 ギョクは俺たちに瓶を向けてきた。

 それを受け取ったのはラッシュフォード博士だった。


「ありがとう。確かギョクくんと言ったな。リモハノールの組成式はないのか?」

 ラッシュフォード博士はギョクに組成式を尋ねている。

「探したが見つからない……あれ? あんた、あのラッシュフォード博士か?」

「どのラッシュフォードかは知らないが、私はラッシュフォード博士だ」

 ギョクは目の色を変えて、ラッシュフォード博士と抱き合った。


「あんたのお陰で俺たちのシェルターは助かった。みんな元気でやってるよ」

「もしかして君たちは二十四番シェルターか?」

「そうだ」

「そうか。君の名前は稀土まれつちぎょくか?」

「ああ」

「大きくなったな」

「博士はジジイになったな」

ギョクは立ち上がって、バッグの中から褐色の瓶を取り出した。


「抗生剤も欲しいか? ドラゴンズブラッドがあるぞ」

 先ほどとは打って変わって、ギョクは博士に褐色の瓶を二つ渡してきた。


「いいのか? 私は今、向こうのシェルターにいるんだぞ」

「あんたは英雄だ。恩は売るもの、返すもの。何が起きたかも知っているから俺は特にあんたが所属してようが恩は返す」

「恩に着るよ。そういえば組成式はどこにあると思う?」

「来たときからなかった。誰かが持って行ったのか、もしくは他の階層だろう」

 悩んだ様子でギョクは答えた。

 来たときにはなかった。つまり奴隷ちゃんか、もしくは先遣隊が持っているのか?


「分かった。参考になったよ。みんな、行くよ」

 俺たちは山田たちに頭を下げて、薬品製造部から出ようとした。

「ちょっと待てお前ら」

 ギョクが俺たちを呼び止めた。


「そこの黒人。博士に免じてお前たちを信頼する。俺たちはお前たちの仲間、サバイバルウェアを着た女の子をついでに探す。お前たちは先遣隊を見つけたら通信機で伝えてくれ。俺たちは疑い深いから、先遣隊に出会ったら「星を見る者、来たれり」と伝えてくれ。攻撃されなくなる」

「星を見る者来たれり……か。分かった。ちなみに星を見る者ってなんだ?」

 馬鹿でかいエイリアンの事を勇気隊長は「星を見る者」と名付けた。単なる偶然か、それとも何か意味があるのか?


「意味はない。だが数年後は違う」

「何かあるのか?」

「『最終戦争』が始まる。そっちのシェルターの「星を見る者」にも伝えて欲しい。降伏するなら、星を見る者の一族だけでも生かすと」

「なんの話だ?」

「樟木一族に聞けば良い。「星を見る者」について聞いてみろ」

「!」

 こいつ、勇気隊長の事を知ってるのか?


「一応言っておくがこれ以上は答えないぞ。樟木の名は知ってるようだから本人に聞け。先遣隊を見つけたらもう少しだけ話してやってもいい。この世界と俺たちに何が起こっているのかを。だが、このシェルターを探索していればそのうち真理にたどり着くかもしれない。ひとまず先遣隊を頼む」

「分かった、あんたを信頼する。女の子には「ジェシカとサイモンが来た」と言ってくれ。名前は奴隷ちゃんだ」

「奴隷ちゃん……ね。分かった」


 俺たちはそこで別れ、お互いの任務を再開した。

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