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私、酸素拾います!  作者: メケ
サイモンの章・その4
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第四話 超能力?

 翌日。

 俺たちはアヌビスの置いてある武器庫アーセナルに来ていた。


「ジェシカ大佐補佐、できあがりました。完璧な仕上がりです」

 満面の笑みの整備士がジェシカに敬礼をしている。

「ありがとう。これで薬を取りにいけるわ」

「ご武運を」

 整備士はアヌビスから離れていった。


「みんな、準備は良い?」

 ジェシカは意気揚々、迫力満点だ。


「任せておけ!」

「武器はそろえた。行こう!」

 俺とラッシュフォード博士はジェシカに応えるように、大きな声を出した。


「私、足手まといになりませんかね?」

 出発前になってルルルカは不安になっているようだ。

「安心しろ。多口型の群れから逃げられれば十分だ。ほら、さっさと行くぞ」

 俺はルルルカの肩を叩き、ルルルカの手を引きながらアヌビスに向かった。

 不安なのはみんな一緒だ。だからこそ俺は笑顔で行きたいと思う。


「ちょ、ちょっと待ちなさい」

 息を切らしながら、少女が一人、武器庫に入ってきた。

 慌てて、武器庫に入ってきたのはレベッカ少佐だった。


 まさかジョナサン大佐のように俺を邪魔しに来たのか。

「ジェシカ、もうっ。忘れ物」

 レベッカ少佐はなんと四丁の自動小銃を引っげて持ってきた。

 物凄い怪力の少女だなあと俺は感心してしまった。


「レベッカ、ありがとう」

「危うく死ぬところだったわね。ジェシカはおっちょこちょいなんだから。私が居ないと本当にダメね」

「私もそう思うから、これからも一緒に仲良くしてね」

 ジェシカはレベッカから自動小銃を貰って、うれしそうにしている。


「みんな、レベッカからの差し入れよ」

 ジェシカはうれしそうに、俺とラッシュフォード博士にも銃を渡した。

 弾の入ったマガジンも渡されたが、基本的には有色人種に銃を渡す事は禁止されている。反乱を防ぐためだ。


「ジェシカ、この銃弾は特別製よ。油分の揮発きはつによる銃弾の接着が起きないから、外の環境にさらしても問題ないわ。外でも多分撃てると思うけど、お奨めはしない。高価だから無駄撃ちは絶対にダメよ」

 二人が話している間にラッシュフォード博士の手から俺の手元に自動小銃が渡された。


「サイモンくん、頑張ろうね」

 ラッシュフォード博士がウインクをしてきたので、俺はそれに頷いた。

 レベッカ少佐は普通に俺に銃を渡してきたし、ジェシカも黙認している。レベッカ少佐も穏健派なのか?


 銃を渡されたのは良いが、問題なのは俺が銃の使い方が分からないという事だ。

「ジェシカ。使い方が分からねえ」

「私も分かりません」

 ルルルカも申し訳なさそうに、頭を下げている。


 有色人種は銃なんて持った事がない。すべて映画の世界の中だ。

「分かりました。じゃあサイモンさんは持っててください。私の方がまだ銃の使いは慣れていると思うので、弾が足りなくなったら、譲り受けます」

「教えてくれないのか? 銃って強ぇんだろ。一撃で人が吹っ飛んでく。ばん、ばん、ば~んってな」

「あれは映画の演出ですよ」

「え、マジで?」

「映画のように吹き飛ぶレベルの弾丸を受けたら、肉体が先に千切れます」

「何だよ、つまんねえな」

「事実はそんなものです。今度ショットガンを持ってきますので、サイモンさんがサバイバルウェアを着た状態で受けてみませんか。スラッグ弾なら吹き飛ぶかもしれませんよ」

「死ぬからやめとく」


 サバイバルウェアを着ているとはいえ、体をスラッグ弾で打たれたら貫通するかもしれねえ。

 例え、サバイバルウェアの体幹部分を頑丈に作ったとしても、ジェシカは間違って俺の頭を打つだろう。こいつはそういう奴だ。


「ではみなさん、行きましょう」

 満面の笑みで自信たっぷりのジェシカが昇降機で上っていく。

 ジェシカがコックピットからアヌビスを操作すれば、俺たちも中に入れる。


 ウォータールームと呼ばれる部屋に俺たちは入室するらしい。

 通常のアヌビスはパニックルームと呼ばれている部屋だが、外部遠征用のアヌビスはウォータールームと呼ばれている。ウォータールームは移動時に水で満たされ、中にいる人間が重力で負傷しないように固定されてるそうだ。


 アヌビスに入ること自体、今までになかった事のため、俺は期待に胸を躍らせていた。

 水を全身に浸からせてしばらくそのままなんて、母親の腹ん中以来だ。

 いったいどんな感覚なんだろう。

 非常に期待が膨らむ。早くジェシカはウォータールームを開放してくれないだろうか。

 俺は久しぶりに高揚感を覚えていた。


「おい待て!」

 俺の高揚感に水を差したのは、武器庫に入ってきたジョナサン大佐だった。

「なんで有色人種が銃を持ってるんだ。しかも連射式だぞ。誰が渡したんだ?」

 入室して早々、ぴーぴー騒ぐジョナサン大佐に俺はため息をついた。


「私です」

 性懲りもなく言ってのけたのはレベッカ少佐だ。


「んなっ、ななななな! もし奴が銃を乱射したらそうするんだ。有色人種だぞ」

「ジェシカが連れて行くなら、私は信じます。ジェシカが信じた人だから外部遠征に連れて行くんですよ」

「認めない。何かあったらどうする? レベッカ少佐、君はとても優秀で熟慮に熟慮を重ねる人材だと思っていたぞ」

「あなたは変わってしまった。勇猛だったのに偉くなってからはミスをしないように立ち回っているだけ。いつもビクビク怯えている」

 レベッカ少佐の一言に腹を立てたのか、ジョナサン大佐は顔を真っ赤にしている。


「訂正しろ。一介の少佐ごときが大佐に向かってなんて口をきくんだ。今からでも良いから銃を取り返してこい」

「あなたの指図は受けません。ジェシカ、さっさと行きなさい」

 レベッカの拒絶と同時にジョナサン大佐はレベッカ少佐に銃を向けた。


「命令だ。処分するぞ」

 このままではレベッカは射殺されてしまうかもしれない。


「レベッカ、サイモンの銃は返すからもうやめて」

 折れないレベッカと強硬的なジョナサン大佐にジェシカが折れたようだ。


「ジェシカ、私の子供の頃を思い出して」

「?」

 レベッカは不敵な笑みを浮かべている。


「私は超能力が使えるの」

「ああ、そういえばそうだったわね。今でも使えるの?」

「もちろんよ」

 何を言ってるんだこいつらは。射殺されるかもしれないんだぞ。


 俺は心配になって二人を見ていた。

「見せてあげるわ、ジョナサン大佐」

 言うが早いか、ジョナサン大佐の持っていた拳銃が宙を舞った。


「え?」

 戸惑う大佐と部下たち。

 だがレベッカは一歩たりとも動いていない。


「ぐおっ、ぐあああっ!」

「ぎゃああっ」

 ぼこっ、どこっ、という鈍い殴打音とともに大佐とその部下たちが地面に倒れ伏していく。


「やめろ、やめてくれ!」

 大佐たちは吹き飛ばされて地面をゴロゴロ転がったり、身を丸めてレベッカの攻撃を耐えている。

 まさに超能力だ。映画の世界が今ここに現れているように見える。いったいどんな手品を使っているんだ?


「ここは私に任せて! 早く行きなさい!」

 レベッカは得意そうに左手を拳にして振り上げた。

「みんな、ウォータールームが開きました。乗って!」

 俺たちは走ってウォータールームに飛び込んだ。


「ジェシカ、お前の友達は大丈夫なのか?」

「大丈夫です。あの子は上手くやるタイプだから今回も勝算があると思います」

「俺たち、帰ってこれるのか?」

「私たちが帰ってくる前にレベッカが大佐に昇格してたら帰ってこれるかもしれませんね」

「そうかもな。お前の親友だ。大佐になっててもおかしくねえ」

 皮肉めいて喋ったが、下手をすれば俺も粛正対象になる可能性があるという事だ。

 せめて任務を最大限に成功させて恩を売り、命乞いをする準備だけはしておこう。


 席に着席し、俺はシートベルト締め、オキシゲンプラグをサバイバルウェアに接続した。

 外部遠征用のアヌビスにはオキシゲンプラグというプラグがあり、それをサバイバルウェアに接続すると、サバイバルウェアの酸素を使用しないで目的地までたどり着ける。


「ルルルカ、シートベルトを忘れるなよ」

「はい、サイモン隊長。シートベルトしました」

「サイモンくん、こっちも済ませたよ」

 ラッシュフォード博士とルルルカの準備が整ったようだ。


「ジェシカ、注水を頼む」

 ジェシカにシートベルトの装着を伝えると、体に重力を感じた。

 どうやらアヌビスが無事に昇降機で地上に向かっているようだ。

 ウォータールームに備え付けられたモニターが武器庫内の周囲の様子を映し出した。


 ジョナサン大佐はレベッカ少佐にボコられて、土下座をするように地面に突っ伏している。

 一方、大佐の部下たちは、顔を青く腫らしながら天井のLEDを呆然と眺めていた。


「なあ、ジェシカ。あれって本当に超能力か? タネがあるように見えるが」

 俺は無線でジェシカに率直な質問をぶつけてみた。

「私はタネのある超能力だと思います」

 ジェシカはそう言ったあと、ふふふと笑っている。


 ジェシカは上手い事を行言ったつもりなのかもしれないが、答えになっていない気がする。

 むしろ分からないという意味で言っているのだろうか。


「ルルルカ、お前はどう思った?」

 緊張しているのか存在感のないルルルカに俺は声を掛けた。

「私は、光学迷彩を被った人が攻撃してるんだと思います。この前SF映画でやってたじゃないですか。レベッカさんの攻撃は、一人の攻撃なのに攻撃が緻密すぎます。おそらくレベッカさんが司令塔で複数人が攻撃をする。これだと思いますよ。私の参謀遺伝子がそう告げています」

「もしかしてこの前のSF映画って「降格機動隊」?」

 ルルルカの発言に食らいついたのはジェシカだ。

 

「降格機動隊」とは、機動隊に降格させられた女主人公が様々な難事件を解決するSF刑事アニメだ。


「はい、そうなんです。主人公に憧れますぅ~。私もかっこいい女性になりたいなあ」

「うんうん」

「でも私は参謀になるので、かっこいい女性は諦めて、インテリな女性になります」

「そっかあ。それならインテリでかっこいい女性になれば良いんじゃない?」

 どうやらジェシカは聞き役、相づち役に徹するようだ。

 俺はその「降格」なんとやらを知らないので、黙ってガールズトークを聞いていた。


「インテリで、かっこいい女性……両立できますかね?」

「むしろ頭の良くない女性はかっこわるいわ」

「でもジェシカ少佐はかっこいいと思いますよ」

「そう、褒めてくれるの? うれしいなあ」

 ジェシカ、違うぞ。遠回しにバカと言われているんだ。ルルルカが「でも」と言ってるだろうが。


「ルルルカちゃん。今度、発掘に行かない?」

「発掘ですか? 行ってみたいです。ぜひぜひ!」

 ルルルカは「発掘」という言葉を聞いて、テンションが上がっているようだ。


 発掘というのはデパ地下と呼ばれる区域に到達して、物資を調達することだ。

 文献によると、かつてのデパ地下には食料が大量に並んでいたらしい。

 だが、地球に浮遊惑星が向かってきているという事実が判明してから、地下には食材が並ばずに本やDVDなど文明を受け継ぐためのが品々が並んだそうだ。

 そして破滅の日には地下数百メートルのシェルターに入れなかった人類は衝撃波とともに、木っ端みじんに吹き飛んだそうだ。


 俺たちが発掘に行くデパ地下という空間は、いわば遺跡のようなものだ。

 地下一階部分は吹き飛んで跡形もないが、三階からは散らかってはいるが、確実に物が残っている。

 そこでDVDや書物などを回収し、解析復元班に処置を施して貰う。


 つまり、シェルターの新しい映画などの娯楽は外部行動員の発掘が一翼を担っている側面がある。


 ルルルカとジェシカが発掘で上手く仲良くなってくれれば良いのだが、その話はこの外部遠征を成功させてからだ。

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