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私、酸素拾います!  作者: メケ
ジェシカの章 その3
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ジェシカの章 その3 第一話 睨み合い

 奴隷ちゃんが勇気隊長の部屋で食事を作ってから二週間が経った。


 それからは奴隷ちゃんの表情には笑顔が増えたので、行かせて良かったのかもしれない。

 あれから毎日の練習に文句も言わず、むしろ笑顔で臨む奴隷ちゃんは日に日に上達していった。


 左官専用機とはいえ、外部遠征に必要な技術は十分に付いたと思う。困ったことがあったらアシストシステムがどうにかしてくれるだろう。外部遠征用のアヌビスの仕様を確認したが、申し分ない性能だった。

 エイリアンに対する攻撃、退避、バランス補正、緊急時のブレーキなど外部遠征に必要そうな様々な機能が付いていた。


 つまり、この前岩場に突撃したのはアシストシステムが使用されていなかったために起きた事故だ。気をつけよう。


 奴隷ちゃんには私が教えられる事をすべて教えたが、果たして彼女は自信が持てただろうか。

 気になった私は外部行動員層にある奴隷ちゃんの部屋に向かった。


 本日は奴隷ちゃんの休みの日だ。部屋でゆっくりしているのだろう。


 チーム・アポカリプスの物置と書かれた部屋の前に私は到着した。

 外見は物置、中身は奴隷ちゃんの部屋だ。


 私がノックすると、どうぞ~、と元気そうな声が聞こえた。

「入るね」


 中に入ると、換気扇の音が聞こえてくる。

 相変わらずうるさいが、奴隷ちゃんは気にしていないようだ。住めば都、ここは奴隷ちゃんの王国のようだ。


 奴隷ちゃんはベッドに座ってアヌビスの本を読んでいた。

 アシストシステムに理解を深めるために、復習しているのだろう。


「奴隷ちゃん、今日も頑張ってるね」

「ジェシカ大佐補佐。私、アヌビスの操縦が上手くなりました。そろそろ外部遠征に行っても良いですか?」

 奴隷ちゃんは誇らしそうにニコニコしている。


「いいわ。今日、大佐に言ってみる」

「え、今日?」

 奴隷ちゃんは戸惑っている。


「そうよ。あまり練習ばかりもしてられないわ。奴隷ちゃんが自信が付いたらいつでも行こうと思ってた。手筈てはずもすべて教えたから、後は自信を持つだけよ」

 私は事前に準備していた奴隷ちゃんに書類を渡した。


「これが持ってきて欲しい薬よ。組成式っていう作り方も貰ってきてね。持ってきたらこっちの学者に作って貰うから」

「分かりました」

「じゃ、大佐のところに行ってくるから」

「いってらっしゃ~い!」

 奴隷ちゃんは大喜びで、叫ぶように声を上げている。


 よっぽど私に期待をしているようだ。この期待には是非とも答えたい。

 私は奴隷ちゃんに手を振って、奴隷ちゃんの部屋から退出した。

 

 ぐお~ん。

 今日はなぜかエレベーターの音が頭に響く。

 ストレスがたまっているのだろうか。やけに音がうるさい。


「ジェシカ大佐補佐。気が重そうですね」

 私に話しかけてきたのはジャック少尉だった。

 本日のジャック少尉はエレベーターボーイのようだ。


「今から外部遠征について大佐の許可を得てきます」

「勝算があるのですか?」

 ジャック少尉は難しそうな顔をしている。


「ないですが、とりあえずやってみます」

 私は顔を引き締めて、腹に力を入れて言い放った。


「勝算はありそうですね」

 私の心境を知ってか知らずか、ジャック少尉は笑いかけてきた。

 押し通る。他に渡る道はない。


「やってやりますよ」

 エレベーターが開き、私は白人層に踏み、司令部に向かった。


 倒す、倒す、倒す、倒す。


 私は大股で歩き、肩で風を切って歩き始めた。


 私は強い、私は強い!


 自分に言い聞かせて、私は自分を鼓舞した。

 相手は人間。私も人間。階級など知った事か。


 司令部に着くと、私はドアを開けてジョナサン大佐の下に向かった。

「大佐、お話があります」

「なんだ」

 えらくジョナサン大佐はぶっきらぼうだった。おそらく私の顔を見て、察したのだろう。


「外部遠征の許可をください」

「くどい。お前は行かせない」

 想定内の反応だ。


「私がダメというなら、他の者に行かせればいいのですか」

「言っておくが、レベッカはダメだぞ」

 レベッカがいなくなると業務に支障を来すのは私も重々承知だ。


「承知してます、彼女も仕事がありますでしょうから代わりの人を用意しました」

「なんだと。誰だ」

「レイに任せます」

 ジョナサン大佐は聞いた事のない名前に口をぽかんと開けていた。


 少しの間があった後、

「ああ、あの奴隷か」

 ジョナサン大佐は合点がいったようだ。非常に納得した顔をしている。


「教え込んだのか」

「はい」


 私はジョナサン大佐と見つめ合った。端からは睨み合っているように見えるかもしれない。

 だが、他人の目など知った事か。奴隷ちゃんは私の管理下にある。ジョナサン大佐の命令は一切受けずに、命令する事が出来る私の忠実な可愛い部下だ。ジョナサン大佐に勝ち目はないはず。


 唯一の懸念と言えば、アヌビスに乗る事を禁止されてしまう事だ。


 しかし、そもそも私が遠征して死んだ場合、シェルターの秩序に関わるから禁止という話だった。奴隷ちゃんは奴隷という身分ではあるが、私がしっかり訓練させた。操縦に関しては問題ない。後はジョナサン大佐がどう判断を下すかだ。

 私はここを引けないし、絶対に譲れない。


 一分以上の睨み合いが続いた後、

「じゃあ行かせろ」

 ジョナサン大佐の方から折れた。


 ひとまずは私の勝ちで良いのだろうか。

「分かりました。メンバーを募ります」

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