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私、酸素拾います!  作者: メケ
樟木勇気の章・その4
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第二話 ジェシカ救出作戦

 翌日。俺たちチームアポカリプス男三名と、奴隷ちゃんとサイモンの弟、計五名で売店に来ていた。


 有色人種市民であるサイモンの弟は問題ないが、奴隷ちゃんが一人で売店に来ることは禁止されている。しかし、奴隷よりも上のカーストと同伴であれば一緒に行くことが許可されている。


 店に来ていた他の部隊の外部行動員たちは珍しいものを見る目で、こちらを見ていた。

「見世物じゃねえんだぞ」

 サイモンの一喝で、他の外部行動員たちは視線を棚に移した。


「えっとねえ、コーラ味とぶどうと、サクランボ味。うわぁ見たことないお菓子だ。牛乳も飲みたい!」

 奴隷ちゃんはテーマパークに来た子供のようにはしゃいでいる。


「ねえ兄ちゃん。あんなにいっぱい買って貰ってずるい」

「じゃあお前も麻雀を覚えろ。そして勝て」

「……わかった」

 サイモンの弟は炭酸キャンディを一個買って貰うことになった。


 奴隷ちゃんは抱えきれないくらい、たくさんのキャンディと一本の牛乳を売店のおばちゃんの前に提示して、驚かれている。

「あんた、糖尿病に気をつけなよ」

「うん!」

 奴隷ちゃんは目をキラキラと輝かせている。


「あんたたちも保護者なんだから健康管理をしっかり……泣いてるのかい」

「「「いいえ」」」

 ちくしょう。俺たちの給料が消えていく。

 売店にお金を払い、俺たちは退店した。


「じゃあな、隊長」

 廊下の途中で別れて、俺と奴隷ちゃんは部屋に戻った。


 部屋に入ると、奴隷ちゃんは俺のベッドの上にキャンディを並べて数えている。

「四十八本だ。凄い!」

「食べ過ぎるなよ」

「いっぱいあるから隊長さんに一本あげる」

 奴隷ちゃんはコーラ味のキャンディを俺に差し出した。


「奴隷ちゃんが勝ったんだから奴隷ちゃんのものだよ」

「だったら私が隊長さんにあげても良いよね」

「まあそうだな」

 二人でベッドの上に座ってキャンディをなめた。

 甘くてシュワシュワする。たまにはキャンディも良いものだ。


「ねえ隊長さん」

「ん?」

「死なないでね」

 奴隷ちゃんがぽつりと言った。


「急にどうした?」

「だって隊長さんは私の婚約者だよ。心配だもん」

 どうした。急に女らしくなってきたな。

 少女の成長に、俺は少し恥ずかしくなった。


「そんな心配より牛乳を飲め。しっかり飲んで身体に脂肪を付けろ。子供を産める身体になれ」

 奴隷ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめている。

 きゃーと黄色い声を出して、耳まで真っ赤だった。


 俺は外部行動員だ。いつ死ぬかも分からない不安定な職業だ。

 奴隷ちゃんが気になるのも分かる。だけど心配したって意味はない。そんなの神様じゃなきゃ分からないってもんだ。


 いつもと同じように、これが最期の時と思って、二人だけの時間を過ごした。




 ジェシカが遭難してから三日目。

 いよいよジェシカ救出策戦が始まる。体調は万全。不具合はない。


 ジェシカと一日に一回、最低限の生存確認をしただけで、お互いに連絡を取り合わなかった。

 向こうから掛けてきても良かったのだが、そっとしておいて欲しいのだろうか。


 俺は服を脱いで全裸になり、おむつをベッドの上に敷いた。

 おむつはしっかり当てないと、横漏れするので、これは極めて重要な作業だ。

 横漏れすれば外部行動後に洗濯作業が始まる。それはなんとしても避けたいところだ。


 ガチャッ。

 急に開けられた扉からは奴隷ちゃんが顔を出した。

「おいおい、着替えてんだ。あとに……」

 奴隷ちゃんは俺が裸であることをいとわず、抱きついてきた。


「必ず帰って来てね」

 奴隷ちゃんは涙目になっていて、叱るに叱れなくなった。

 こんな姿を見られたらまずいのだが、今回だけは許すことにしよう。


「ああ、必ずな」

 奴隷ちゃんは首に飛びついてきて、頬にキスをしてきた。

「必ずだよ。必ずだよ」

 そう言って彼女は手を振って去って行った。

「必ずな」

 俺は扉を閉め、鍵を掛けておむつの上に倒れ込んだ。


 陰茎に尿取りパットを巻き、更にその上に尿取りパット、そしておむつを装着するのが通例だが、

「ちくしょう。俺も男だな」


 今日は陰茎に巻く尿取りパットがやけに巻き辛かった。




 時間は午前四時を指した。

 いつもより二時間早いが、外部連絡室に俺たちは集まる事が出来た。


「みんな、体調は万全か」

「問題ない」「至って普通だよ」

「よし、行くか」

 昇降機が上がり、ジェシカ救出作戦が開始された。


 昔は午前六時といえば太陽という恒星が上り、世界を青く染めていたらしい。映画で見た事があるけど本当にそんな世界があったなんて信じられない。

 今の時代はいつでも漆黒の空に浮かぶ星が俺たちを出迎えてくれる。

 青い世界も見てみたいけど、星が歌うこの世界も素敵だ。

 星に思いを寄せつつも周囲の風景に目を凝らした。


「なあ隊長。今日のサバイバルウェアは特別製なんだよな」

「ああ。話によると、パニックルームに付属したカメラに接続してジェシカの姿が見れるらしい。死体が映ってなきゃ良いが、とりあえずやってみよう。モニター接続開始。コード171の1718」

「接続完了しました」

 機械音声がコードを認識した。

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