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私、酸素拾います!  作者: メケ
樟木勇気の章・その4
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樟木勇気の章・その4 第一話 みんなで奴隷ちゃんを励ます会

「リーチ一発ツモ。平和タンヤオドラ」

「くそっ、六〇〇〇オールか」

 俺たちは仕方が無く奴隷ちゃんに点棒を払った。


 ヤバいぞ、残り一二〇〇〇点だ。箱になる。

 奴隷ちゃんは絶好調で、現在トップを独走中。


 サイモンは顔を青ざめながら、

「点一〇につきキャンディが一本。箱で焼き鳥だから三本追加で七本。勘弁してくれ!」

 負け勘定をしている。


 参謀は、儚く散るのも美しさだね、といいながら箱に片足を突っ込んでいる。

 今日は俺たちの部隊だけ外部行動が休みだ。

 手柄を取られたのは腹立たしいが、こうやって、みんなで奴隷ちゃんを励ます会と称して麻雀大会を開催している。

 奴隷ちゃんの作った雑草とイナゴのパスタをつまみに、みんなで久しぶりに酒盛りをしながらわいわいやっていた。


 ジリリリリリ。

 電話が鳴ったので、俺は仕方が無く受話器を取った。

 とっても楽しくて、気分がいいのに電話を寄越しやがって、いったい誰だ。


「はい。樟木だよ!」

「こちら大佐だ」

 何だよ、お前かよ。


「おー、大佐。この前は世話になったな。じゃあな!」

「ちょっと待て。お前酔ってるのか?」

「酔ってるよ。そりゃあもう、あんたが奴隷ちゃんを拉致して、手柄を横取りして、やりたい方題してくれたおかげで少将が特別休暇をくれた。今日はパーティを開いてる。邪魔をするな。切るぞ」

「待て。この前はすまなかった。折り入って話したいことがある」

「ないないない。絶対無い。少なくとも俺は話したくない」

「貴様! 上官に対してその態度は何だ」

「知るか。スタンガンを押し当てて、人の奴隷を拉致して、手柄を横取りする奴がよく上官を名乗れるな。切るぞ」

「待て! 頼むから」

「ん?」

 しつこいな。一体どうしたんだ。


「本日ジェシカが未踏の岩山区域に行った」

「ああ、俺たちの探索してた場所か」

 そういえばそんな作戦が行われるとかなんとか言ってたな。奴隷ちゃんが戻ってきたのですっかり忘れていた。

「そうだ。そこで救難信号が発せられている。ジェシカの引き連れた部隊の他に応援の部隊も行ったが、消息不明となっている」

「危険だってジェシカは言ってたんじゃないのか?」

「……その通りだが、まさかこんなことになるとは思わなかった」

「おいおい、頼むぞ。三人で行けるパラダイスだと思ったか」

「返す言葉も無い。だから頼む。今から行ってくれないか」


 俺は時計を見た。

 時間は午前十時を示している。午前六時に外部行動を開始するので、すでに四時間が経過していた。


「大佐。すでに何時間経っているか分かるはずだ。サバイバルウェアではどんなに頑張っても四時間で酸素が尽きる。四時間経過して戻ってこないと言うことはみんな死んだ。運が良ければパニックルームでたっぷりの酸素の中で一ヶ月生き残れるが、あの危険な区域では正常な判断は出来ない。今まで何機のアヌビスが、そして乗り手が死んだか分かるよな?」

「そこをなんとか頼む」

 大佐は電話口では必死だった。

 こいつには恨みがあるし、何より電話口ではどんな顔をしているか分からない。

 本当に真剣な表情をしているかもしれないし、鼻くそをほじくりながら喋っているかもしれない。確実に言えることは大佐は信頼ならないということだ。


「おーい、みんな。ジェシカが死にかけてるかもしれないけどどうする?」

「大佐にケツを振ったあのクソ女は助けなくて良い」

「僕も賛成。ジェシカが来なければこんなことにはならなかった。こっちまで巻き込まれるのはごめんだよ」

 一方奴隷ちゃんは、

「私はジェシカお姉ちゃんを助けたい」

 泣きそうな顔で、救助をすべきとの案を出した。


「大佐、ちょっと考えておく。この電話からでもジェシカと連絡は取れるか」

「ジェシカのアヌビスの番号に繋がる番号がある。モニター番号171の1718だ。パソコンでも良いし、普通の電話でも繋がる。生体反応はあるから試してみてくれ」

「了解」

 てめえらまだ連絡とってねえのかよ。

 受話器を叩き付けて俺はみんなの方を向いた。


「みんなの意見は聞いた。確かにあのクソどもは許せないが、ここで救助して帰還できれば我々の地位は遙かに向上する。どうする?」

「また裏切られるかもしれねえ」

「サイモンの言うとおりだ」

 サイモンと参謀の意見に真っ向に対立したのは奴隷ちゃんだった。


「ジェシカお姉ちゃんは悪い人じゃ無いよ。また遊びたいの。それにこれを見てよ」

 奴隷ちゃんは一枚の封筒を渡してきた。

 中を見るとジェシカの全裸の写真が出てきた。ジェシカは痣だらけで、涙を流している。

「なんだこれは!?」

 俺の驚愕に、サイモンと参謀が集まってきた。

「おいマジかよ。なんだこれは」

 サイモンは信じられないようなものを見たように目を見開いている。


 リリィ少佐が少将に渡したのだという。奴隷ちゃんは少将から受け取ってしばらく持っていたそうだ。

「リリィ少佐が? 隊長。リリィ少佐って言ったら絶対階層のリリィだよな」

 サイモンは信じられないといった様子で、語りかけて来た。


「ああ、粛正のリリィだろうな。裏がありそうだ」

 参謀は話しについて行けないようで、首をかしげている。

 この話は俺とサイモンしか知らない話だ。参謀が分からないのも仕方がないだろう。


「参謀のために話すが、絶対階層とリリィが呼ばれるのは、カーストを狂信的に信仰している。カーストから飛び抜けて優秀な奴は他の階層をおびやかすとして、殺して回る女だ」

「隊長。わかったよ。で、そのリリィ少佐が奴隷ちゃんにわざわざ写真を託したと。どういう意味なんだ?」

「分からない」

 話はそこで終わり、部屋に沈黙が流れた。


「なるほど。とりあえずジェシカお嬢は脅されてたって訳か。それにしてもいったい誰がこんな写真を撮ったんだ?」

 サイモンが指を顎に当てて悩んでいる。

「大佐じゃないの? 私ね、大佐に裸の写真撮られそうになった」

 奴隷ちゃんは怒り心頭で怒っていた。


「大佐は性癖異常がある。生身の人間には興味がないんだけど、写真に撮った裸体に興奮するんだ。男でも女でも構わないらしいよ」

 参謀は苦虫を噛んだような、苦渋の表情を浮かべている。


「なるほどな。勇気隊長、大佐をぶっ殺してからジェシカを救出する。これでどうだ」

「サイモン、順番が逆だ。理由を付けて最新鋭のサバイバルウェアを借りる。そしてジェシカを救出してから大佐をぶっ殺す」

「クールだな隊長」「妙案だ。さすが隊長」

 三人で拳を合わせた。


「私もやる!」

 奴隷ちゃんもやりたがったので、四人で拳を合わせた。


「とりあえずジェシカに連絡を取るか」

 俺は大佐の示した番号に電話を入れた。


「おい、ジェシカ。生きてるか」

 反応がない。

「おいジェシカ。死んでんのか。返事しろ」

「ゆ、勇気隊長」

 か細く、弱々しい声が聞こえた。

 精神的な衰弱が見られる。


「おお、やっぱり生きてたか。調子はどうだ」

「死にそうです。応援部隊もおそらく死に絶えました」

「だろうな。お前らの言う中途半端な地図、それは役に立ったか?」

「……」

 返事は帰ってこない。少しイジメすぎたか。


「お前の写真を見た。例のな」

「写真って……」

「裸の写真」

「み、見たんですか」

「ああ、リリィ少佐を通じて少将、そこから奴隷ちゃん。最後に俺たちに回ってきた」

 返事が返ってこない。写真を見た発言は余計だったか?


「聞いてるかジェシカ?」

「はい」

「それでも生き延びたいと思うなら……助けに行く」

「!」

「俺の奴隷ちゃんが会いたがってる。また遊んで欲しいんだと。ただそれだけだ」


 慰めではない。奴隷ちゃんがジェシカを欲しているなら、俺はジェシカを助ける。

 三〇〇〇リットル回収できたのはジェシカがいたからこそだ。今回の件はジェシカも巻き込まれたと言っても良いだろう。

 いかにジェシカの方が立場は上といえども、隊長としては隊の仲間を守れなかった点についても責任がある。


「お願いします」

「よし、分かった。作戦を話す。俺たちは酒を飲んだ。アルコールにはホルモンを阻害して尿が多量に出る。そのため、今から外部行動をすれば俺たちは脱水と酔いで満足なパフォーマンスをこなせない。そして、そっちは興奮したエイリアンが蠢いているから時間をおく必要がある。二日後にそっちに迎えに行く。酸素と食料は十分か?」

「はい。大丈夫です」

「分かった。閉所で精神がおかしくなるかもしれないが、たった二日だ。寂しくなったり異常があったら連絡してくれ。話し相手程度ならできる」

「分かりました。頑張ります」

「いいか、困ったら電話だ。忘れるなよ。じゃあな」

 俺は電話を切った。


「というわけだ諸君。作戦は二日後だ。大佐には電話をしておく」

「「了解しました隊長」」

 二人の敬礼を受け、俺は雀卓の前に座った。


 どうにも嫌な予感がする。

 この救出作戦。やはり断るべきだったろうか。いや、そんなことを考えても意味はない。

 ジェシカは仲間だ。助けるのが道理だろう。


 不安を振り払うように、

「ということで、麻雀を再開するぞ」

 俺は大声を上げた。

「「「よっしゃああああ!」」」

 それに呼応するように、みんなは笑顔で卓を囲み始めた。

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