ジェシカの章・その2 第一話 外部行動開始
体がゆっくりと起き上がっていくのを感じた。
私のベッドには目覚ましを掛けると、掛けた時間にベッドの上半身部分が起き上がる機能が付いている。
ベッドに上半身を起こされた私は目覚め、トイレに向かった。
用を足すと、部屋に戻って外部行動の準備を始めるのは全ての外部行動員に当てはまる行動だ。
服を脱いで全裸になると、下腹部にクリームを塗った。
このクリームには撥水効果がある。
下半身が尿で赤くただれないようにするために、このクリームは欠かせない。
クリーム塗ったあと、おむつを履きながら私はサバイバルウェアに着替えた。
広い廊下を歩いて、私は外部連絡室の前に立った。
出勤簿とも揶揄されるカードリーダーにカードキーをかざして中に入った。
他の部隊に所属する人たちは、すでにアヌビスの前にいる。私も急がなければ。
自分のアヌビスの前に立ち、昇降機を起動させた。
昇降機が起動し、コックピットの隣まで上昇していく。
アヌビスを遠隔起動させると、コックピットが開いた。
今日から新しい部隊で、外部行動が始まる。
深呼吸をして、気持ちを落ち着けてから、私はコックピットに乗り込んだ。
間違っても人を殺さない。信頼を獲得するんだ。
私はコックピットにうつ伏せになるような形で操縦桿に手を入れた。
アヌビスは犬型の車両だ。四本の足を動かせるように、操縦者も犬のようにうつ伏せになって操縦する。四つの操縦桿には穴が開いており、両手両足を入れ、センサー認識でアヌビスの手足を操縦する。頭と口の動きを感知すると、アヌビスが噛み付きを行い、お尻に密着する操縦桿に意識を向けると、アヌビスの尻尾が動く。
これには慣れが必要だ。初心者はアヌビスをまったく動かすことが出来ない。
「注水開始」
私の声にしたがって、コックピット内に注水が開始された。
この水は私の肉体にかかる重力や震動を軽減するためのものだ。水がないと、脳みそが揺れて、最悪の場合、死んでしまう。水をある程度圧力を掛けて注水し、体の揺れを防ぐシステムになっている。これも圧力に耐えられるサバイバルウェアがあってこそのことだ。
「ジェシカ・サラヴァンティア。出撃します」
デバイスが声を認知し、アヌビスが乗っている昇降機を起動させた。
さあ行こう。暗黒と異形の怪物が蠢く死地へ。




