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私、酸素拾います!  作者: メケ
ジェシカの章・その6
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第二話 父に相談

「失礼します」

 私は父の部屋に入った。


 私の心臓は駿馬しゅんめのように高鳴っていた。

 父に相談なんてしたことがない。

 いつも無視されてきた。私に彼は答えてくれるだろうか。


「ああ、ジェシカか。どうした」

「相談があってきました」

「なんだ」

 一応、聞いてはくれるようだ。


「勇気隊長と結婚したいです。でも隊長さんと両思いの子が居るので……」

「俺に手を汚せと?」

「違います!  その子が言うには、私がもし勇気隊長と結婚したいなら、勇気隊長とその子、私の三人での結婚をする事を条件として提示されました。どうしたらいいでしょう?」

「なんで俺に聞くんだ。勝手にしろ」

 父はぶっきらぼうに応えた。

 相変わらず娘である私に興味がないようだ。


「なら勝手にしますよ。あなたの嫌いな有色人種と結婚するんです。それでもいいんですね?」

「構わん。お前が好きならそれでいいだろ? 第一、白人層でお前の貰い手は居ない。ウィリアムくんの件もあるからな」

「ウィリアムくん?」

「忘れたのか」

「記憶にないです」

 本当に記憶がない。

 と言うかよく考えると、私には反抗期あたりの記憶が抜け落ちているんだった。

 そのときに何かあったのだろうか。


「ウィリアムくんはお前が金玉を踏み潰した子だ」

「え?」

「記憶にないんだろ。仕方がない」

 とっさに二重人格という言葉が思い浮かんだが、私は首を振ってその考えを否定した。

 そんなわけない。私は正常だ。


「はっきり言うと、お前と結婚すると言ったらどの白人の親も反対する。有色人種と結婚できなきゃお前は一生独り者だ。勇気隊長に貰ってもらえ」

「認めてくれるんですか?」

 父の反応は意外なものだった。

 てっきり反発して妨害してくるのかと思えばあっさり許可が出た。


「俺は男の子が欲しかった。だが、その思いに俺はかなり固執こしつし過ぎていた。お前を深く傷付けてしまった。お前には辛い思いをさせた。俺がバカだった。確かに有色人種は好きじゃない。だが、こうなったのは俺のせいだ。ここでお前のせいにするつもりは一切無い。俺の教育が悪かったよ。ごめんなジェシカ」

「……お父さん……」

 私は父の、お父さんの反省した姿を見て、私は心を震わせた。

 やっと私の事を考えてくれたのかと思うと、涙が止まらなかった。


「本当にすまなかったジェシカ。よく考えればお前が女であろうと、男の子の孫を産んでくれば、ワンクッション置いただけで結果は変わらないんだよ」

「は?」

 私は自分の耳を疑った。先ほどまで流していた涙を拭き、目の前をじっと見つめた。


 やはりお父さんは、父は立っている。今の発言は幻聴だろうか。

 確かに私は外部遠征から帰ってきたばかりだ。疲労はピークに達しているだろう。

 変な声が聞こえてきても何ら不思議ではない。


「俺は鍛錬が足りなかったんだ。無いものは無いんだから、そこは自分を律するべきだったんだよ。父さんはそこが未熟だった。自分を律する事が出来れば、白人の男の孫を迎える事が出来たのに父さんのせいで失敗したんだ。でもまあ、この際だ。有色人種でも構わん。これですべてが丸く収まるな。これも父さんが最近、自分の事を律することが出来るようになった成果かもしれ……」

「律しろよ」

「ん? どうしたジェシ……」

「律しろよ! 今の発言をするんじゃねえ! 言わないように律しろよ!」

 私の怒声に父は目を丸くしている。

 よくもそんなことが言えたものだ。私に生理が来たときに汚いと言って拒絶したのは誰だ。お前だろうが!


 湧き上がるマグマのように私の記憶が少しずつよみがえってくる感覚があった。それと同時に耐えがたい怒りが全身を包んでいく。


 私は父の怯えた表情など気にせずに徐々に距離を詰めていった。

「ジェシカ、急に何を……」

「なぁにが丸く収まるだ。ふざけるなこのクソジジイ! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 私は父に掴みかかって押し倒した。

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