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私、酸素拾います!  作者: メケ
ジェシカの章・その6
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ジェシカの章・その6 第一話 レベッカに相談

 翌日。

 私は一晩中三人で結婚するかどうかについて悩んだ。


 考えられない。あり得ない。


 私は打ち震えながら、司令部に向かった。

 司令部に着くと、私はレベッカの席まで行き、声をかけた。


「ジェシカ、おはよう。泣きそうな顔をしてどうしたの?」

 レベッカは私の異変に気がついたようで、驚いていた。


「相談があるの」

「……ちょうどいいわね。分かった。時間を作るからそこで座って待ってて」

 レベッカの指示通りに近くの椅子に座り私は彼女を待った。


 椅子を移動させて、レベッカの隣に座ってぼうっとしていると、レベッカはパソコンに向かって文字を打ち込んでいく。

 そして電話をかけて、部屋で待機するように言っている。いったい誰と電話をしているのだろう。

 レベッカの手際よい仕事に私は惚れ惚れしていた。


 レベッカは仕事を一段落終えたようで、行くわよ、と言いながら手を握ってくれた。

 とても温かい手に、私は癒やされて私は涙腺が高まった。


 思い出せば、子供の頃に虐められて泣いていたとき、レベッカにこうして手を握って貰って一緒に帰ったことがある。

 レベッカが男の子だったら良いのにと、少し残念に思っていた。


 レベッカに手を引かれて入ったのは会議室だった。


 悪い意味で懐かしい。

 この部屋でスティーブン大佐に裸になるように指示された場所だ。

 気分は良くないが、レベッカにとっては普通の会議室だ。仕方のないことだろう。


「お帰り、怪我はなかった?」

「うん。大丈夫だよ」

「博士のことは残念だったわね。で、相談って何?」

 レベッカは優しく微笑んでいる。

 これなら何でも相談できそうだ。


「あ、一応言っておくけど面倒事は却下するわよ」

 レベッカの受け入れ体制は万全のようだ。

 私は胸のくような気持ちでいた。


「それなら大丈夫。私ね、昨日、勇気隊長に結婚して欲しいと言ったんだけどね……」

「却下」

「え? 相談に乗ってくれるんじゃないの」

「面倒事は却下するって言ったでしょ。勇気隊長と奴隷の子は事実婚みたいなものよ。知らないの?」

「え……レベッカは知ってたの?」

 私の問いに、レベッカは額に手を当てて視線を落とした。


「常識みたいなもんでしょ? あの二人の熱愛は今に始まったことじゃないわ。まだ正式な結婚は決まってないらしいけど、よりによって勇気隊長だなんて。あぁ、なんてことを」

「でもね、奴隷ちゃんから提案があったの。奴隷ちゃんと隊長さんと私の三人で結婚するならいいって言われたんだけど、どうかな?」

「キャンディ何年分で言うこと聞かせたの?」

「違うよ! 外部遠征を頑張ったから結婚して良いって奴隷ちゃんに言われたの」

「……そう。あんたはどう思ってるの?」

 レベッカは目を細めて震えている。かなり怒ってるようだ。何か実のある会話をした方がいいのだろうか。


「ど、どうにか隊長さんと二人で結婚できる方法とかあるかな? なーんて、あはははは」

「……」

 レベッカが口を開いてこの世の終わりのような顔をしている。


「ジェシカ、本気で言ってるの? あなたは腹を見せてきた犬の腹を踏みつけるような人間だったの?」

「だ、だよね。まずいよね?」

「当たり前でしょ。そもそも博士が亡くなった事について相談してくるのかと思ったら、あなたには喪に服すという言葉がないの?」

「葬式には行ってきたよ。なんかもう、なんかもう……やることがいっぱいで頭がおかしくなりそうで……」

 実際忙しすぎて、私の頭の中はこんがらがっていた。

 始末書に報告書を山のように書かなくてはいけないし、奴隷ちゃんの返事も必要だし、どうしたら良いのか分からなかった。


「そう。じゃあ一個ずつ片付けましょう」

 レベッカは仕方がないような表情をして、ため息をついた。


「結婚の件に関しては……ま、いいチャンスだと思った方がいいんじゃない? あんたと結婚してくれるのは勇気隊長くらいよ。腹の底で何を考えているかは分からないけど、彼は腹が据わってるわ。三人がかりでアヌビスを倒したなんて初めて聞いた」

「そ、そのチャンスって奴隷ちゃんと争ってもいいってこと?」

 私は恐る恐るレベッカに尋ねた。


「違うってば。三人で結婚しなさい。あんたは仮にもスティーブン大佐たちを殺したのよ。あんたと結婚したら酷い目に遭わされるんじゃないかって思ってる人も居るわ。白人層であなたと結婚したがる人は居ないわよ。穏健派として頭角を現したあなたと結婚したらその相手は治安維持派から敵視しされ始めるでしょうね。上の寒い階層と違って、暖かな気候の白人層で平和に暮らしたいのなら、あなたと結婚するのは見送るわね」

「うぅ……」

「でも、ジェシカも若いんだから。いつかあなたの事が好きって言ってくれる人が現れるかもよ」

「それって男を振るときのセリフよ」

「そうかもね。私はあんたの人生だからこれ以上は口を出さない。後は自分で決めなさい。お父さんに相談するのもいいだろうし」


 お父さんか。

 未だに私は父との距離を測りかねていた。

 結婚についての相談だなんてしても良いのだろうか。


「無理よ。彼が欲したのはジャックよ。私は女の子だからいつも相手にしてもらえなかった」

「ジェシカ。お父さんとわだかまりがあるかもしれないけど、今回は話すべきじゃないの?」

「私の事なんか相手にしてくれないよ。いつも自分勝手だった。私が苦しんでいた時も自分の事ばかり……」

「ジェシカ、彼も人の子よ。今は権力にもとらわれてないし、少し話でもしてみれば?」

 私は父の腑抜けた顔を思い出した。

 もしかしたらいけるかもしれない。


「……出来るかな?」

「分からないわ。あなたのお父さんのことよ。あなたが一番知ってるはず」

 レベッカは立ち上がって背伸びをした。


「さ、相談は終わりよ。あなたはどうするのか、私が決める事じゃないわ」

「レベッカ。私、どうしらいいの?」

「落ち着いてジェシカ。結婚とか人数とか関係ないのよ。あなたの幸せが一番なの。よく考えてみて。邪魔したわね」

 レベッカは私の肩を叩いて出て行った。


「私の幸せ……か」

 私は誰かに取りつくろって生きてきた。

 幸せになるんじゃなくて、不幸にならないように奔走ほんそうしてきた気がする。


 どちらかというと、幸不幸こうふこうを考えるより、不幸か不幸ではないかを考えてきた気がする。

 そりゃあ、上手くいくわけがないよね。

 幸せを求めてきた人間と不幸にならないように生きてきた人間。こころざしが違いすぎる。

 くよくよする事はない。ただ、私は前に進むんだ。


 父に相談してみよう。

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