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神様に就職しました!  作者: しり
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2話 神様になるよう迫られる

手に取った人形が喋った・・・そして動き出した。


「かみさまー、かみさまー、みんなーかみさまがきたよー」


わーわーわーと

まわりの人形も騒ぎ出した。


「神様!?なんだよ神様って、てかお前達生きてるのか!?」


小さい人形達が足元で騒ぎ、俺に群がり脚をつかんでいる。


「なんだよ、ここ何処だよ、どうなってんだよおおおお」


混乱し気持ちが少しづつ追い詰められていく、この状況に少し怖くなって来た俺は叫んだ。


「みなのもの落ち着くのじゃ」


人形達の騒いでいた声が静まる。

するとそこへ、ぴょこぴょこと1匹の人形が俺の前に立った。

背格好は他の人形とおんなじだが、顎のあたりに髭が生えている・・・どうみても付け髭だ。


「ちょうろー!」

「ちょうろー!!」

「皆の者落ち着くのじゃ、神様も混乱しておる、まずは我々の事を神様に説明し我々の願いを叶えてもらうのじゃ」


長老と呼ばれた人形が場を沈め、俺に語りかけようとするが。


ガサ!ガサ!

聞きなれた音が聞こえて来た。


「おい!ちょっと待て、それ俺のポテチだぞ」

「おいしー、これおいしいよ!」


人形達は、俺の買ってきたばかりのポテチを、かってに開けて食べ始めていた。


「かみさまーありがとー」

「ありがとーかみさまー」


「こらお前たち、長老である私を差し置いて何をしている、ワシの分をよこせー!」


人形達による、ポテチの奪い合いが始まる、せいまいポテチの開け口に群がり、ポテチを確保した人形達がその場から離れて、おいしそに食べ始める。

激しい人形達の取り合いは直ぐに終わった。


「かみさまーもうないよー」

「もっとちょうだい」


「・・・おまえたち・・・わし長老なのに」


長老は食べれなかったようだ。





人形達のやりとりを見て、少し緊張がほぐれてきた、どうやら敵意は無いらしい。

俺は自分の部屋の、バルコニーに出るためのサンダルを持って扉を改めてくぐった。




サンダルを履いて、廃墟となった街を見渡す。

2階にある自分の部屋から、海が見える廃墟に移動したのだ、緊張がほぐれたおかげで、この異常事態に少しだけわくわくしてきた。


適当な場所に腰を下ろして、胡坐をかく。

落ち着いた所で、長老と呼ばれる人形だけが少し頭がよさそうなので、話を聞いてみた。

話してみると、この人形みたいな小人達は案外話しやすかった、就活での圧迫面接とは違う久しぶりの楽しい会話に、少し警戒感も薄れていく。


一通り話を聞いた後、頭の混乱を整理するために、もう一度1つづつ確認していく。

「ちょっと待て、もう1回確認するぞ、お待ちたちは魔力が溜まる場所に生まれる小人で、魔力の精霊みたいなもんなんだな」


「そうですじゃ」


魔力!?どういう事だ魔法でもあるのか?こっちも気にはなるが他も気になる。


「それで、ここは何処どこか分からないと」


「知りませんじゃ。ワシらはここで生まれましたが、ここには誰もいないので場所の名前もよく知りませんじゃ」


「そう・・なのか・・・」


誰もいないという言葉に少し心が痛んだ。

俺自身、友達がいない訳では無い、就職が決まらなかった負い目か、くだらないプライドか、合いづらくなってしまい、しばらく誰とも会っていない。

(そっか、誰もいないっていうのはさびしいよな)


「そうですじゃ、誰もいないんですじゃ、ですから我々の暇っ・・・じゃなく、何をすればいいか分からない我々を、導いて下さる神様が欲しかったんですじゃ」


「なるほど、暇を解消してくれる神様が欲しくて、町に唯一まともな形で残っていた扉にお祈りしてたら俺が出てきたと」


「そうですじゃ、我々の暇を解・・ではなく導いてくれる神様として、あなたはこられたのですじゃ。」


「・・・・」

少し心の中で少しがっくりとした、昔みたアニメ、最近やったゲーム、その主人公みたいに自分は神か何かに選ばれた存在で、わくわくドキドキの冒険をする為に、この世界に来たのかもしれないと思っていたが、どうやら違うらしい。


小人達は冒険ではなく暇つぶしを求めているようだ。


「いやー、俺は神様じゃないし、就活しなきゃいけないし、忙しいからなー、ちょっと難しいかな」


小人達と話していたら冷静になって来た、現実逃避していた感情が引き戻されてくる。

たしかにわくわくする、この世界を見て回りたいと思った。

だが俺は今実家で暮らしている、仕事もしていない、この世界で遊んでいる暇は本当は無いのだ。


「それは困りますじゃ、どうかここにいて欲しいですじゃ、また誰もいなくなるのは困りますじゃ」


「そんな事言われてもなあ、毎日は無理だけどたまになら遊びにくるからさ」


神様になってくれなかったからか、長老はうつむいて、肩を落としている様子だった。


「じゃあ帰るよ、またそのうち遊びに来るから」


俺は立上り、扉に向かって歩こうとした。


「・・・・ですじゃ」


「ん?」


「やっと来た暇つぶしを逃がしてたまるかあああ、ですじゃ」


「お前、ついにごまかさなくなったな、嫌だぞ、俺は帰るんだ」


扉へ向かおうとする俺に長老が叫ぶ。


「皆の者、神様が逃げるぞ!捕まえろおおおお」


周りにいた小人達がいっせいに飛びついてきた。


「おおおおお、・・・なんだ・・・重いぞ」


足に群がった小人達を見ると


「かみさまー、いかないでー」

「かみさまー、みすてないでー」


悲しそうな声でねだられた、心が揺らぎそうだ。だが、いつまでもこの世界にいるわけにもいかない。


「お前ら精霊じゃなかったのかああああ、なんで集まるとこんなに重いんだよおお」


「ふぉふぉふぉ、神様、もとの世界の事など忘れて、我々の神となって導くことを約束するのじゃああああ」


長老が急に悪代官みたいな顔でせまって来た。


「いやだああああ、父さん、母さん、働かなくてごめんなさい。神様、謝るから、明日から就活再開するから夢からさましてえええええ」


困った時の神頼み、昔から追いつめられると口にしてしまう。

就活の時には何度もお願いしたが、その願いは最後まで届くことは無かった、そして今回も。


「かみさまー、ぽてちちょうだい」

「かみさまー、あそんでー」


「神様はあなたですじゃ、さあ神様、約束するのじゃああああ、なに怖がることはない、神様の事は我々が守りますじゃ、さあワシらと契約して神様になるのじゃあああ」


だんだん長老の言動が危なくなってきた。

じりじりと扉に近づいていたが、もう少しの所で進めなくなる。


「くそおお体が動かないいい、なんか体全体が重くなってきたあああああ」


「言い忘れておったが、ワシらは魔法が得意なのじゃ、それぞれ得意分野が違うがの。いま重さを操るのが得意な者が、神様のカラダ全体を重くしているのじゃ」


「なにいいい!!」


ついには立っていられなくなり、地面に手を付く。

ここぞとばかりに小人たちが背中に登ってきた、人の背中で楽しそうに跳ね回る。


「くそおおお動けねええ、扉まですぐそこなのにいいい」


「かみさまー」

「かみさまー」


背中から聞こえる楽しそうな声。


「さあどうするのじゃ」


体がどんどん重くなる。

地面にうずくまるようになった俺に、長老が近づいてきた。


心の中で色々な感情が駆け巡る。

(どうする、神様になればとりあえずこの状況からは抜け出せるぞ・・・だが、神様になったらずっとここに居なきゃいけないのか?帰りたいと言えば帰らせてくれるのか?・・・就活はどうする、いつまでもニートのままじゃいられない、神様になっても収入が有るわけじゃないし・・・でもこの状況を少し望んでいる俺がいるんじゃないのか?就活をしない理由を求めている自分がいないか?・・・)


様々な感情が渦巻くなかで、俺は一つの結論を出した。


「・・・わっ・・分かった、神様になるから、魔法を解除してくれ。あと、必ずここに戻って来るから一度帰らせてくれえ」


「その言葉を待っていたのじゃ」


俺が長老に神に成ることを承諾すると、長老と俺の体が少し光った気がした。


「ワシとの約束は特別じゃ。皆の者、神様をはなしてやるのじゃ」


「うおお!?体が急に楽になった、」


ぜーはーぜーはーと息を整える。


(神様になると口にしてしまった・・・)

まだ就活を再開する決意を固められない自分、就活から逃げる理由を探す自分を感じた。

(父さん、母さん、ごめん・・・もう少しだけ・・・もう少しだけ時間が欲しいんだ)


呼吸が落ち着いた所で、長老の言葉が気になったので聞いてみる。


「ちなみに、約束をやぶるとどうなるんだ」


「・・・・秘密じゃ」


「ちゃんと約束は守るよ、破る気はないんだけど、参考までに破るとどうなるか教えてくれない」


「・・・・また戻って来たら教えてやるのじゃ」


「くそっ、こいつなかなかやるな」


なんやかんやあったが、とりあえず今日は部屋に戻ることにした、少し頭の中を整理して心を落ち着けたい。

小人達に戻っていいのか確認したら、あっさりOKをくれた。




「かみさまー、またねー」

「かみさまー、またあそぼー」


沢山いる小人たちが手を振ってくる。


「神様、ポテチをワシの分のポテチを持って来てくだされー」


ポテチを食べられなかった付け髭の小人が、なんか言っている・・・気にしないでおこう。


「明日また来るから、じゃあな!」


抵抗むなしく神様になることを承諾してしまったが、気持ちの整理が付いたのか、なぜか少しすっきりした。

笑顔で小人達に手を振り、もとの世界に帰るために扉をくぐった。





「は~」


自分の部屋に戻った俺は大きなため息をついた。


「疲れた・・」


戻ってこられた安心感からか、どっと疲れが出てきた。

ここは確かに自分の部屋だ、自分のベッド、自分の机、毎日過ごしてきた自分の部屋だ。

しかし、今部屋の真ん中に不思議な扉がある。


「とりあえず寝よう」


朝になれば全てが無かった事になるかもしれない、そう考えて今は深い眠りに落ちていく。


自分が句読点を打つのが苦手だと、改めて認識しました。

読み辛い所もあるとは思います、申し訳ねぇ。

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