不調
山田が来なくなった次の週。
練習試合が行われた。
いつもよく試合をする高校で、8割ほどは勝てるといったところか。
「平行!」
成川が自分にトスを呼んでいる。
その成川に早瀬はボールを託した。
そのボールはブロックに捕まり早瀬の目の前に叩き落とされた。
「すまん!次は決める!」
成川はミスをすると必ずこう言うのだ。
しかしいつものように得点が決まらない。
早瀬は「次一本決める!切り替え切り替え」と声をかけるが、誰もその声は聞いていなかった。
チームの雰囲気の悪いときに、盛り上げる為の声など誰の耳にも届かないのである。
2セット試合をやって、2敗してしまった。
時間的に次の試合が最後だった。
「早瀬さん!サーブどこ狙ってます?」
ため息をついて丸山が代わりに答えた。「草津、エースを狙えっていつも早瀬さん言ってるだろ」
「ああ。そうだな。エースを狙って牽制してくれ」
「でも早瀬さん前はエース牽制するほどの実力ないって言ってませんでした?」
「まあ。任せるよ」
早瀬は下を向いた。
そして最後のセット。今までで最も悪い結果で終わった。
「ねえ丸山さん。早瀬さん元気なくないですか?いつも指示とか出してくれるのに」
「そーだなー。山田先輩が休んでるし、一応気にしてるんじゃね?早瀬さんいつも山田先輩に声かけてあげてたし。キャプテンって大変だなー。あんな嫌われてる人にも気を使わなきゃいけねぇんだもんな」
「早瀬さんが特別優しいだけじゃないですか?それにしても暑いですねー」
インターハイ予選まで残り約3週間。