帰宅
この三人組で帰るのは久しぶりだ。実夢とはいつも帰っているが、燐華は部活で忙しく帰る時間が違うし僕たちの部活よりも長い練習時間で行っている。
日光はまだ僕たちを照らしている。
「なぁー実夢」
何かを思い出したかのように燐華が問いかける。
「どうしたの?燐華ちゃん」
「そういえば、音楽コンクールいつだっけ?」
「えぇ!?まだまだ先の話だよー!冬休みの始めだよ。どうして急に?」
「あっれ〜?そんな後だったか…、いや…なんか分かんないけど急に気になってさ。あはは…」
誤魔化すように、ニカッと実夢へと微笑んだ。
そう、実夢は音楽部であり彼女もまた冬のコンクールに向け、練習を重ねている。実夢の歌声はカラオケで聞いたことはあるが、美しい。
「実夢の歌声か…」
そんなことを考えていると、つい言葉に出てしまう。
「戒璃くん!絶対見に来てね!」
「私も絶対行くからな!実夢!応援してるぜ!」
「うん!もちろんだよ、実夢!」
田んぼしかない車が通るのも少ない道を三人並んで家へと帰っていく。夏だが田舎だということもあってか涼しい風が汗を乾かして、疲れを感じさせていない。僕たちは町の案内図で大きな掲示板の前の十字路で別れを告げ別々に歩いていく。
明日で夏休みが三日後に来るということで、僕の学校では恒例の遠足がある。楽しみにしておかなきゃ。
二人と別れ、自分の家へと向かう。と、さっきまで晴れてたのに空は黒雲に包まれていた。
ゴロゴロ…
その音が耳に入ると同時に、脳天に滴が落ちる。雨だ!もう見えていた自宅の玄関へ走り、鍵を開ける。ふと、後ろを見れば大雨の中で何かが立っている。勢いのある雨のせいかハッキリとは見えない。扉を開け家に入ろうとした時、もう一度見るとそこには何も無かった。今日は早めに寝よう。疲れているのだと自分に言い聞かせ、着替えてから温かいココアを淹れる。
両親は、久々の二人旅らしい。いい機会だと僕も楽しんできてほしいから、見送ったのは良いんだけど…一人でいるとなかなか寂しいな。頭の中にずっと引っかかっていた学校で見た物について調べる。




