過去の記憶
『さて、キミたちに与える仕事について説明していこうか。最近、怨霊が増えすぎてしまってね。この天界も兄上の冥界も大変なんだ。だからキミたちには人間界に降りてもらう。そして原因を突き止めてほしんだ。場所としては廃墟、墓、トンネルなどの人間の呼び方で言う心霊スポット。さらに学び舎、その他を回って各地に留まる霊の願いを聞いてきてくれ。』
僕は怖くなった。恨みや妬みを持つ怨霊のもとへ自ら行くなど考えられない、僕は心霊スポットが嫌いだった。なんでわざわざ死んだ人のもとへ肝試し行かなければならないんだという嫌な思い出が頭をよぎった。―――昔、僕は仲間に連れられてとある心霊トンネルに行ったとき、死にかけた経験があったんだ。僕と友達二人の三人で肝試しに行った時のことだ、僕の地元では有名なトンネルで肝試しに行くと怨霊に引き込まれるという噂がある。友達はワクワクしてライトを振り回したり、鼻歌を歌ったりしていた。このころ中学生で車などなく徒歩で行き、夏休みだったので親には友達の家に行くと伝えていた。街灯もない人里離れた森の中を歩いていくと大きな口を開けたトンネルが姿を現した。虫や風の音が今までしていたのにピタッとあたりは静寂に包まれた。嫌な空気が僕の肌に触れ。鳥肌が立つ。友達二人は大きなトンネルを目の前に早く入ろう早く入ろうとせかしてきた。僕らはトンネル内に入ってしまった。三人以外誰もいないはずなのに甲高い女の笑い声や後ろからついてくるような足音が聞こえてくる。僕は怖くなって帰ろうと友達に言っても当然聞いてはくれずどんどん奥に突き進んでいく。友達だけ進んでいく、僕は進めない...あれ?動くこともできない、立ったまま金縛りになった感覚だ。足元を見ると白い手が掴んでいた。僕は叫び声を上げようとしたが声が出ず、ただ息が漏れるだけだった。友達は進んでいくのに助けを求められない、彼らも全く気付かない。すると、白い手が少し緩んだ気がした。これはチャンスだと思い思いっきり叫んだら声が出て友達二人は驚きながらも僕の異変に気付き近寄ってきた。僕は気が遠くなり気が飛んでしまった。それからの記憶はなく気付いた時には自分の家で寝かされていたんだ。そういえばと思い出すように白い手に掴まれていた足首を見る。そこには手形のアザがくっきりと残っており、僕は怖くなってタオルケットに包まって寝た。
そんな思い出が大天使の仕事内容を聞いて思い出してしまった。
『怖がることはないよカイリ君。さて、キミたちの仕事は今言ったこと。それと"真実の罪人"を突き止めることだ、頑張ってくれよ。』