光のその先
空間の中はただひたすらに暗闇が四方八方続き、どこを見ても闇だ。風もなく、匂いもないし人の気配すらも感じられない。何も聞こえない、何も見えない…ここは無の空間なのか?考えていると僕は、ふと思い出す。ついさっき電車に跳ねられて死んだんだと。しかし、全身の痛みは全く感じられない。よく映画とかで、『思い出した途端全身に傷みが走る!』という症状が出ることはなかった。最後に見た、実夢と燐華の顔は忘れることは出来ないと思う。
こんな呆気なく死ぬんだなぁなんて思えてきた。まだやり残した事が山ほどあったが、両親の元に帰れるならそれでいいと思う。考え終わると僕は何もない天を見た。
と、凄まじい光が現れた。眩しすぎるその光に眼は耐えきれず眼を瞑る。僕はその光に飲み込まれ、足元の感覚が上へ上へと上がってくる。まるで壁のないエレベーターに乗ってる気分だ。凄まじい光に眼が慣れ始め、瞑っていた眼を開ける…。
『ようこそ、カイリ君…』
凄まじい光の中から現れたのは、僕の何十倍、いや何百倍もあるであろう巨大な人間が見下ろしていた。よく見ると、緩やかな服を身につけ巨大な身体の後ろからは六つの白翼が生えているように見える。さらにさっきまで暗闇だった四方八方は雲の上のようで、僕の体を包むような太陽の光はとても暖かい。天空を縦横無尽に飛び回るいくつもの翼の生えた人間が巨大な人のもとへと行ったり来たりを繰り返している。あまりに壮大な光景を目の当たりにし、ここは天国なのだろうかと思ってしまった。